「純粋魔法を崇拝し危険な魔道書を多数有した魔術師ギルドは
ついに国連から違法なテロ組織として認定
多くの魔術師たちがテロリストとして逮捕・処刑された
また魔術師ギルドと戦うため科学技術の粋を集めて騎士団が作られた
こうして魔術師ギルドは徐々に勢力を弱らせついに解散を宣言
残された魔術師たちも指名手配犯として逃亡生活を強いられることとなった…」
増田と id:type-100 さんが褒めていたので、これは鉄板だろうと。
身体をゴースト化し物質をすり抜ける能力を持つ最強の魔術師スペクトラルウィザードは、騎士団のエージェントにも半ば無害認定を受け馴れ合いつつ、たまに古の魔導書や魔術師の生き残りが起こす騒動に巻き込まれその都度世界を救いながらも、平穏な生活を送っていた。
ポップでスタイリッシュで可愛らしい絵、子供向け作品のようなキャラクターと事件、それに似つかわしくないロンリーでアンニュイな空気。
まるで「最終回の後の世界」に図らずも生き残ってしまった悪役ヒロインのように、騎士団に復讐する気力もなく、魔術師ギルドの昔を追憶しながらの、平穏で孤独で退屈で憂鬱な暮らし。
孤独が寂しいわけじゃない、昔に帰りたいわけじゃない、生き甲斐がないことが退屈なわけじゃない、青春が終わった後も死を待つように続いていく長い人生の、生への倦怠、自己陶酔でも自己憐憫でもない純粋な憂鬱と世界への無関心、日常の中のささやかな喜び、その侘び寂び。
可愛い絵の女の子たちのファンタジーなお話だけど、なんだかとてもハードボイルド的な読み味。
このヒロインの心象風景が自分を含めて支持を集めるというのは、世の中って世捨て人というか「自分の番は終わった」みたいな心持ちで暮らす人が、思ってる以上に多いのかもしれない。
誰もいない石の塔の上で、世界を滅ぼす事もできずに追憶と後悔を抱えて石を彫り続けるガーゴイルウィザードの姿は、まるでマンションの部屋で独り、読まれる宛てのないブログを書き続ける我々の姿を暗示しているかのよう。
明日は続編を読みます。
(選書参考)
anond.hatelabo.jp
この増田のような批評を、自分も書けたらいいのに。
b.hatena.ne.jp