「…そして結局は後悔する
どんなに悔いが残らないようにしても
不確かな心の地図からどうにか道を見つけ
自分を奮い立たせ自分を制御し…自分の信じる道を進んでも
見捨てられた私の残りの部分は泣いている…心のどこかで…」
身体をゴースト化し物質をすり抜ける能力を持つヒロイン・スペクトラルウィザードは、危険な魔術師ギルドの生き残りでありながら、騎士団のエージェントにも半ば無害認定を受け馴れ合いつつ、たまに古の魔導書や魔術師の生き残りが起こす騒動に巻き込まれその都度世界を救いながらも、「最終回の後の世界」に図らずも生き残ってしまった悪役ヒロインのように、騎士団に復讐する気力もなく、魔術師ギルドの昔を追憶しながら、平穏に孤独に退屈に憂鬱に暮らしていた。
ポップでスタイリッシュで可愛らしい絵、子供向け作品のようなキャラクターと事件、それに似つかわしくないロンリーでアンニュイな空気。
日常をベースに事件が起こる単話完結だった前巻と変わり、今巻はタイトルの通りドラえもんの大長編のようにほぼ一冊をかけた長編。示唆に富んだ作品で、読み手によって受け取るメッセージは様々かもしれない。
世界を丸ごと破壊する古の最強魔法をめぐる、騎士団の新旧派閥の暗闘、それに巻き込まれる生き残りの魔術師たち、そしてスペクトラ。
童話の「人魚姫」のように理不尽で印象的な結末。漫画をたくさん読んでキャラが泣くところもたくさん見たけど、こんなに悲しい涙は見た記憶がない。
読後に心に穴が開いたような感覚があって、どうか続編でこの心の穴が埋まる機会があって欲しいと思う反面、この心の穴は埋めてはいけないような気もして、読み終えた後も折に触れてこの作品のことを思い出して考えてしまう。
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