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#サイコアゲンスト 5巻 【完】 評論(ネタバレ注意)

少し未来、千人に一人の割合でアメコミのヒーローのように先天的に超人的な身体能力を持った人間・通称「セカンド」が生まれてくる日本。

娘を強姦され絞殺されたドイツ出身の医師・黒崎レオンは、復讐のために容疑者を移送中の警察車両を首都高で襲撃。警官から奪った銃で反撃してくる容疑者への怒りのあまり、人類初にして唯一の後天的能力者・通称「サード」に目覚める。

死ねない体になったレオンは暇つぶしのように凶悪犯罪者を私的に処刑・惨殺し、現場に奇妙な絵を遺す「犯罪者殺し」となっていく。レオンを追う警察、そしてセカンド監視局。

今巻で完結。

あとがき等で明言はされていませんが、詰め込んだ構成や端折った展開から、漫画を読み慣れた読者には打ち切りに見える終わり方。

序盤で妻や娘が犠牲になった主人公が復讐に立ち上がるストーリーというのは、ハードボイルド小説でオーソドックスに親しまれる展開で、主人公に陰を背負わせ強力な動機と過激で無慈悲な振る舞いのライセンスを与える設定ですが、話が重く暗く陰惨になりがちで、本誌ではないとはいえ少年漫画ブランドである少年ジャンプコミックスでどこまでやれるのか、当初から危ぶまれるものでした。

表紙のとおり主人公は暗く怖い顔をしたおっさんで、ポップさ・キャッチーさに欠け、およそ少年漫画の主人公としてふさわしいと言える存在ではありません。

本来、青年誌、もっと言えばおっさん向けの媒体でやるべきテーマで、そしたらもっと違った展開が見られたかもしれません。その代わり自分はたぶん読んでなかったかもしれないですけど。

この漫画は始まる前からそういう漫画でした。

実験場であるジャンプ+に掲載するにあたり、アメコミヒーロー的な能力バトル要素を入れたり、レギュラー化した美少女キャラをマスコットにコメディ要素を入れたり、少年〜青年漫画的なライバル〜仲間を増やしたりしてきましたが、5巻の冒頭でラスボスの黒幕が登場するなど、この辺で打ち切りが決まったっぽく見えます。

で、どうだったのよって話なんですけど、打ち切りと思われる漫画にこういうのも変ですけど、大往生だったんじゃないかなーと。

詰め込んで端折ってご都合で、たくさん登場したキャラたちも消化不良で、ページ数の制限の中だいぶ駆け足だった感は否めませんが、「俺たちの戦いはこれからだエンド」になってもおかしくなかったところ、ギアを上げて走り抜けて描きたかったラスト・見せたかったラストによくぞ辿り着いてくれました、という感じ。

作者のTwitterによると200ページ強のうち150ページで加筆・描き直しを行ったとのことで、クライマックスとラストシーンは入魂の見開きカラー。

クライマックスは「マトリックス」無印のネオの覚醒を彷彿とさせてかっこよかったですね。

暗く救いのないスタートで始まった作品でしたが、少々甘すぎるくらいのハッピーエンド。青年誌でフリーハンドで描かれていたらと思わなくもないですが、最後まで投げずに作者陣のキャラ愛・作品愛が貫かれたことも含めて「大往生だなー」と思いました。

ハッピーエンド、やっぱ好きなんですよね。読んでよかった、いい最終回だった。

 

サイコアゲンスト 5 (ジャンプコミックスDIGITAL)

サイコアゲンスト 5 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

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