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#タイムパラドクスゴーストライター 1巻 評論(ネタバレ注意)

漫画家志望ながら読切掲載の壁を越えられない青年・佐々木は、芽が出ないまま節目の25歳を迎えようとしていた。

編集から立て続けに辛辣なネームのダメ出しを食らって失意のどん底の佐々木の一軒家に落雷。小火を消火した跡に残された電子レンジが鳴り、そこには10年後、2030年の週刊少年ジャンプが残されていた。

未来のジャンプに掲載されていた新連載「ホワイトナイト」を、疲労で夢うつつの状態で盗作した佐々木は、とんとん拍子で連載デビュー、2030年の「原作者」アイノイツキへの罪悪感を抱きつつ、漫画家としてスターダムにのし上がっていく…

という、SF+漫画家漫画。

第一話の時点でネットであまりにも評判が悪く話題沸騰、発売当日にAmazonレビューの評点も散々ながら、レビュー件数だけはチェンソーマンに匹敵すると言う話題作。

あまりにも評判が悪いので「いくらなんでもジャンプに載ってる漫画がそこまでつまらないことがあるだろうか」と思って読んでみましたが、逆張りで目立とうってわけでもないですけど、けっこう面白かったです。

ジャンプに載ったことが不幸の元のように見えて、ジャンプ以外には載せようがなかった作品のようにも。

つまんなかったらここまで炎上っぽいことにならなかったんでしょうけど、幸か不幸かアンチに回ってしまった読者の可読にも耐えうる程度に絵も上手く話もそこそこ面白いことが災いした感が。

雑に言うとバクマンとシュタゲのパクリに「なろう」のチート要素を掛け合わせたような漫画です。ジャンプが邪道やるとき特有の開き直ったチャラさとでも言うか。

漫画界と言うか少年ジャンプを偽悪的にハックして人気漫画家にのしあがろうとする様はバクマンを踏襲。本筋じゃないですけど、序盤で編集が主人公に投げかける言葉や態度が非常に辛辣で生々しく、読んでるこっちは他人事なので小気味良い。

電子レンジがタイムマシン化して世界線とか未来を変えるとかはシュタゲそのまま。冷蔵庫とか洗濯機とかにせずにまんま電子レンジでいっそ清々しい。

未来のジャンプから盗作、というのは「なろう」の転生時に受け取る「ギフト(チート能力)」とそんなに違わない気がしますが、盗作やトレースが現実問題として近年特に嫌われるのと、自己正当化と保身に終始して見える主人公の人間性が批判されているようです。

既存作品へのパクリとオマージュのグレーゾーンの作品としては、近年では「ガラスの仮面」を強く意識させる「アクタージュ」が成功して評価されていることもあり、「なろう」の隆盛と併せて「流行りっぽい作品を」とGOサインが出された結果だと思うんですけど、チャラく開き直ってるだけあってSFチックな設定はベタながら魅力的で、展開もミステリーチックでなかなか面白くなりそう。

自分もこの主人公は好きになれず感情移入もし難いですが、デスノートの月のような悪役主人公とまではいかないまでも、成り行きに流されるダメ系主人公だと思えば読めなくはないと思うんですが。ラブコメの主人公とかにも流され系クズたくさんいますし。

新規性とオリジナリティを備えた作品としてリスペクト、はちょっとしづらい作品なのは確かですが、続きを読んでみたくはなる漫画。

ただちょっとあまりにもネットの悪評が目に付くので、本領を発揮する前に打ち切りで終わってしまうかもしれず、責任を持って他人にオススメはちょっとできません。「愛の反対は無関心」とも言いますし、叩かれながらもしぶとく続いて、悪評をひっくり返す展開をみせてくれると良いなと思います。

「文句言いながら読み続けちゃう漫画」ってのも、それはそれでアリだと思うんですよね。

あと作中で「10年後(2030年)のジャンプ、知らない漫画ばっかりだ」とありましたが、ワンピースは多分まだやってんじゃねえかな。運が良ければハンターも載ってるかも。