AQM

あ、今日読んだ漫画

#売国機関 5巻 評論(ネタバレ注意)

東西の大国に挟まれ緩衝国として強制的に戦火の舞台にされた小さな共和国に、両大国の都合で今度は強制的に平和が訪れて一年。

強制された屈辱的な平和、両大国と唯々諾々と安保条約を結ぶ政権を、不満を募らせる左右の過激派は「売国奴」と罵り、暴徒・テロリストと化す。

前線で血を流し友を亡くしながら平和を勝ち取った「塹壕貴族」たちは、平和をすべての脅威から死守するべく、特務機関・軍務省法務局公衆衛生課独立大隊「オペラ座」、蔑称「売国機関」を設立。「平和の敵」と化した市民たちへ銃を向けた。

「幼女戦記」原作者による情報・防諜・公安もの。

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「売国機関」5巻より(カルロ・ゼン/品佳直/新潮社)

冷戦状態の二大国に国境を接して挟まれてるシチュエーションで、両大国の都合と国内の不満との板挟みになりながらのお話で、今巻の後半は連邦が仕掛けてくる経済政策による攻撃に対する対処のお話。

自分は無学で経済音痴ですけど、連邦の仕掛ける経済攻撃が非常にわかりやすく面白く描かれている反面、「よくわからないはずのものを、非常にわかりやすく説明するものは警戒しろ」というセンサーが、まるで今回の作中の共和国の軍人たちのように働いてしまいますねw

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「売国機関」5巻より(カルロ・ゼン/品佳直/新潮社)

もう一つ無学なりに、軍人による独裁政権ならさもありなんという感じですけど、そういうわけでもない共和国を舞台にした今回の経済戦争の主役に本作品の主人公たち軍人を置いたのは、「だいぶ無茶したな」という感じはします。

作者も自覚的で、これまで鉄血・無敵に見えた少佐がいかにも素人くさく頼りなくw

ただ、自国通貨の復権に執心・固執して罠にハマりかける役どころ、ふだん無謬に見える軍人の主人公を置いたのは実は意外とベストな配置かもしんないな、とも思ったり。

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「売国機関」5巻より(カルロ・ゼン/品佳直/新潮社)

経済戦争の話とは別に、一冊全編通じて、珍しく戦時中の回想シーンがたびたび挟み込まれます。

口清く未来を語る者たちと、戦場での屈辱と怒りを忘れない者たち。

戦争させた側と戦争した側の戦後の意識の断絶・コントラストの描写がいつにも増して鮮やかだな、と思います。

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「売国機関」5巻より(カルロ・ゼン/品佳直/新潮社)

「戦争させた側」が、必ずしも権力者だけとは限らない、ということも含めて。

 

 

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