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I oppose and protest the Russian invasion of Ukraine.

#紛争でしたら八田まで 6巻 評論(ネタバレ注意)

表紙のメガネ美女、「地政学リスクコンサルタント」の八田百合がクライアントの依頼を受けて世界を股にかけて紛争を渡り歩き、地政学の知識と思考と調査能力と護身術で解決していく、美女!メガネ!インテリ!ハードボイルド!ワールドワイド!なかっけーお仕事もの。

ぼっちでメガネで日系で手ぶらのココ・へクマティアル、という感じ。

下品な方の出羽守っぽいというか、ちょっと「ブラック・ラグーン」みたいな洋画吹き替えワールドな感じ。

 

前巻以来の「アメリカ編」の続き。

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「紛争でしたら八田まで」6巻より(田素弘/講談社)

中華系企業? 大統領選がらみ? の伏線が引かれていたのでまだまだエピソードが長引く感じかと思ってましたけど、そうでもなくエピソード完結。

かといって「拍子抜け」という感じでもなく、「なるほどね」という着地点。

ポジティブなこととネガティブなことが同時にやってくるエンディングで、

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「紛争でしたら八田まで」6巻より(田素弘/講談社)

なんというか「世の中を変えられたわけじゃなかった でも良いこともあった」というほんのり甘くて少しビターな落とし所が、妙な生々しさを伴って印象に残る畳み方。

 

舞台はイングランドに戻って、「箸休め的」と言ったら彼らに失礼かな、弱小少年サッカーチームの監督を引き受ける話。

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「紛争でしたら八田まで」6巻より(田素弘/講談社)

良きコンサルタントは良きサッカー監督の夢を見るか?

短いエピソードですけど、こういうスペシャリストの「余技」を見せるエピソードはジャンルを問わず楽しいですね。

このエピソードも、ロジックの面白さと、「でもロジックどうりに子どもがサッカーで勝てたら苦労はねんだよ」というツッコミに対するアンサーを両方内包したオチで、でも「将来に向けて、前を、上を、向いていける」っていう希望に満ちたエンディングで、良いです。

 

続いてナウル編。

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「紛争でしたら八田まで」6巻より(田素弘/講談社)

この国のこと、自分は単純に全然知らなかったんですけど、題材として面白いねこの国。

温暖で豊かな自然環境に加えて産油国に並ぶような希少資源にも恵まれ、かつてベーシックインカムを実現した太平洋の小さな島国の、その後。

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「紛争でしたら八田まで」6巻より(田素弘/講談社)

知らなかったことを知る楽しみ、面白いなこの漫画!

懸念があるとしたら、自分の知らない世界を描いてくれて有難い反面、嘘を描かれた場合にコロッと信じてしまうであろう、ものを知らない私自身です。

読み終わった後、関連ワードを軽くググって、この作品で読んで知ったことの裏を取るぐらいはしようかな、と。「コンサル」相手は気をつけないとな。

完全な中立を求めるなど不可能なことですが、願わくば、思想の党派性などに偏ることなく、エンタメと両立しながらいろんなことを自分に教えてくれる作品で在り続けて欲しいなと思います。

 

 

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