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#【推しの子】 5巻 評論(ネタバレ注意)

地方の病院に務めるアイドルオタな産婦人科医師・ゴローのもとに双子を妊娠したお腹を抱えて訪れた少女は、彼が熱狂するアイドル・アイ(16)だった。驚きショックを受けたゴローだったが、身近に接するアイの人柄に魅了され、彼女の出産を全力でサポートしようと決意する。

だが出産予定日の当日、ゴローはアイのストーカーに殺害される。驚くべきことに、ゴローはアイが出産した男女の双子のうち一人として転生する…

「かぐや様」の赤坂アカの作話を「クズの本懐」等の横槍メンゴが作画、という期待作。

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「【推しの子】」5巻より(赤坂アカ/横槍メンゴ/集英社)

要約すると二周目人生は伝説のアイドルの双子の子どもだった転生チートな芸能界サクセスストーリー、ミステリー付き。

情報量が多い割りにはコンパクトに進行し、情報密度が濃さの割りに詰め込みには見えず、スムーズなのにこなし仕事に見えず、楽しく面白く読める作劇はさすが。

縦軸はありつつも、横軸は主人公の2人が芸能界の様々な仕事を渡り歩いて、作者が見知った芸能仕事の機微を描写していく建て付けに。アイドル編、リアリティショー編ときて、今巻から新章「2.5次元舞台編」。

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「【推しの子】」5巻より(赤坂アカ/横槍メンゴ/集英社)

「かぐや様」のアニメ化や映画化で自分が見知った経験を肥やしにして作品に活かす、創作者の鑑やねw

超人気少年漫画を原作に若手の人気の役者を集めて2.5次元化する舞台に出演することになったアクア。しかし、舞台の稽古は気難しい原作者(漫画家)を前に多事多難だった…

かつて一度、仕事で降ろされた経験のある社会人だったら、ちょっと泣けてくるようなお話。

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「【推しの子】」5巻より(赤坂アカ/横槍メンゴ/集英社)

この漫画の横軸は、基本的に仕事のトラブルがあって、それを設定上の転生者で、かつ作劇上の調停者であるアクアの一手によって、問題が解決される、というファンタジーです。

ファンタジーである所以は、「リアリティショー編」でもそうであったように、現実と対比して「そんな上手くいったら苦労しねんだよ」っていうぐらい優しい着地を迎えることです。

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「【推しの子】」5巻より(赤坂アカ/横槍メンゴ/集英社)

現実も自分の作品も、メタに斜に構えた視点で見下ろす体質の作家で、エピソード中盤のつらい描写も実にシビアな描き方がされますが、アクアの使い方という「嘘」、結末の「嘘」のつき方は、「(漫画の中でぐらい)誠実に一生懸命頑張ってる人にハッピーエンドが訪れてほしい」という、基本的に嘘の使い方が甘くて優しい人だな、と思います。

今巻でアクアの調停の結果、全体の問題自体は解決するものの、その結果の皺寄せがアクア自身に返ってくるちょっと面白い展開。

今のところまだ影が薄い、この人

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「【推しの子】」5巻より(赤坂アカ/横槍メンゴ/集英社)

が活躍するフェーズでしょうか。

 

 

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