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#対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~ 4巻 評論(ネタバレ注意)

全寮制のお嬢様学園の高等部に入学してしまった、お嬢様の皮を被った2人の格闘ゲームオタクが出会ってしまったガール・ミーツ・ガール。

「お嬢様×格ゲー」ということで、「ゲーミングお嬢様」との類似やパクりパクられ疑惑などもありつつも、作者同士が仲良く対談なんかしたりしてまして、そもそも「ハイスコアガール」が先じゃねえか、って話もあり、仲良きことは美しき哉。

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「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」4巻より(江島絵理/KADOKAWA)

前作「柚子森さん」でおねロリ百合を描いていたいたりして、少女をフェティッシュに百合チックに描写するのが特色で、似たテーマを描きつつも「ゲーミングお嬢様」とはまた違っていて、棲み分けというか、どちらも楽しく読めます。

前巻までで厳格な寮内で格ゲー仲間を増やし、校内テストもクリアし、今巻からいざ大会! 全寮制のお嬢様学校で人目を偲んで日夜腕を磨く4人の女子高生ゲーマーが、福岡で開催されるオープン大会に見参。

一次予選プールを突破した4人のうちのダブルヒロインを待ち構えていたのは、「特攻の拓」世界観のルックスを持つ修羅のようなリーゼントのプロゲーマーたちだった…

ということで、vsプロゲーマー、キャラ紹介の伏線具合から見て早くも今大会の天王山かな、という。

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「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」4巻より(江島絵理/KADOKAWA)

格ゲーの技術や駆け引きの描写が細かく丁寧で、それが展開と密接に絡んでいるので、なんというか格ゲーうんちくが読んでいてとても楽しいです。

ゲーマーの闘争本能の描写に寄せた「ゲーミングお嬢様」と比べても、キャラ性能・技性能の見せ方のきめ細やかさは出色で、作者が格ゲーやってて「気持ちいい瞬間・ポイント」の細かすぎるけど伝わる抉り出し方が巧みに感じます。

また試合シーン以外でもいろんなキャラの因縁が入り乱れる巻ですが、特に黒髪ヒロインの綾がプロゲーマー・gekidoに挑むに当たってのマインドセットの描写が良い。

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「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」4巻より(江島絵理/KADOKAWA)

あのアレ、「スラムダンク」で湘北高校が王者・山王工業に挑むに当たって、自らの原点を顧みることで自力で理想の精神状態に辿り着いた、ゴリのマインドセットを彷彿とさせますね。

にしても絵ヅラが同じ漫画のキャラとは思えない対戦カードだな、と思ってたら

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「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」4巻より(江島絵理/KADOKAWA)

作中キャラも同じこと考えててワロタ。

あと、この漫画に直接関係あることではないですが、最近eスポーツ・プロゲーマー界隈で騒動があって、界隈の用語や言葉遣いを浄化したほうが良いという気運が高まっています。

もちろん差別はNGですし、ファンやスポンサーとの兼ね合い、規範を示す立場などもありますし、サッカーなども競技メジャー化に当たって通った道(自殺点→オウンゴール、サドンデス→ゴールデンゴール方式 など)なんで、やむを得ないところは大いにあると自分も思うんですけど、でも汚いスラングなどが象徴するゲーマーの闘争本能の中にはわずかながら「本当のこと」も含まれているように、自分は感じられます。

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「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」4巻より(江島絵理/KADOKAWA)

このシーンでの「バカ」という言葉にはやっぱり替えが効かないと思うんですよね。

健全化・浄化・ウォッシュ・言葉狩り、看板はなんでもいいですが、十把一絡げに「バカはよくない」みたいな雑なやり方で魅力まで殺してしまうことのないよう解像度高く注意深く「本当のこと」は残しつつ、界隈の発展に真に資する議論が為されると良いなあ、と思います。

ああいうことがあると少し描きにくくなっちゃうであろう、漫画の表現も含めて。

 

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