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あ、今日読んだ漫画

#Papa told me Cocohana ver.10 ~となりの妖精~ 評論(ネタバレ注意)

日比谷の高層マンションに、作家でイケメンなお父さんと二人暮らしの小学生・知世ちゃんのちょっと詩的でたまにメルヘンな単話の日常もの。1987年連載開始なので「ガラスの仮面」とまではいかなくても結構な長寿シリーズ。

『Papa told me Cocohana ver.10 ~となりの妖精~ Papa told me Cocohana version』より(榛野なな恵/集英社)

若くに亡くした奥さんを今なお愛しながら、忘れ形見の知世を大切に育てるお父さんがとてもイケメン。こういう大人になりたかった。

当初は父子家庭、独身、離婚、働く女性、子どもの居ない夫婦などのテーマで、 理不尽な世間に知世ちゃんが喧嘩を買う、という怒りを原動力にした、はてなのホッテントリみたいなちょっと尖った話が多かったけど、前のシリーズの終盤あたりでメンタル系のインナースペースの話が多くなった後、 特に雑誌移籍後は話も知世ちゃんの性格も顔も丸くなったなあ、という印象。

今回はそこ少し掘ってみましょう。

「社会の在り方」と「個人の生きづらさ」の軋轢、みたいなところに課題意識を持ったテーマの話が当初から多くて、実はそれは今でも変わらないんですけど、昔はその葛藤を登場人物が知恵や勇気や思いやりで解決するところまで描かれることが多かったものが、最近では特に解決のカタルシスに至るでもなく、そのまま詩的に締めて流れていくエピソードが多いです。

前述で「丸くなった」と表現しましたが、思うに「そもそもそれが"課題"かどうかは本人が決めることだ」という作者の意識の変革がどこかであったんじゃないかと思います。

『Papa told me Cocohana ver.10 ~となりの妖精~ Papa told me Cocohana version』より(榛野なな恵/集英社)

悪意がなくても、攻撃しているつもりはなくても、何かが欠如すると他人を傷つけるラインを超えてしまう。

知世ちゃんは昔はこんなこと言われて流す子じゃなかったし、流す作品じゃありませんでした。

怒るか、凹むか、悩むか、マインドセットについてパパとディスカッションするか。

『Papa told me Cocohana ver.10 ~となりの妖精~ Papa told me Cocohana version』より(榛野なな恵/集英社)

美しい思い出の延長で恋も結婚もない人生を歩むこと。知世ちゃんがまだサンタクロースを信じていること。同性の友達から告白されたかもしれないこと。知世ちゃんのお母さんが亡くなっていること。そんな知世ちゃんに「お母さんがいてよかった」と言い放つ同級生。結婚観の合わないカップル。押しかけてきて話の長いお隣さん。オーディションに急ぐ女優の卵。イントネーションを同級生に揶揄われた地方出身の女子大生。恋愛未満の仲に落ち着きそうな若い男女。

 

みんな「何か」を抱えてはいて、他人から「解決するべき課題・問題」と見做されることは多々ありますが、それは本当に解決されるべき問題であり課題であり、作者が神の視点で作中で解決させなければならないことなのか。

『Papa told me Cocohana ver.10 ~となりの妖精~ Papa told me Cocohana version』より(榛野なな恵/集英社)

自分は中年独身オタクですが、たとえ相手が神様であっても「あなたは欠けたところのある孤独で不幸な人間だ」「可哀想だからなんとかしてあげなければ」なんて言われたら、「私の幸も不幸も私が決めます、大きなお世話」とグーパンしてやりたくなります。

この作品も昔のように「生きてるといろいろある」を描きはしても、昔のように「いろいろ」をなんとかしようとせず、「それでもそれを抱えて生きていく」という、まるでキャラが作者に「ほっといてくれ」と言っているかのような、個人主義的な緩いオチがとても増えたんですが、

『Papa told me Cocohana ver.10 ~となりの妖精~ Papa told me Cocohana version』より(榛野なな恵/集英社)

自分はそれをとても心地よく感じています。

「在るべき考え方・在るべき体験というものがあって、同じ考え方を他人もするべきだし、同じ体験を他人も経験しておくべきだ」と、人間どうしてもなりがちなんですけど、別にサンタクロースを信じたまま老境で死ぬ奴がいたって、わざわざ「サンタなんかいない」と告げなくても、それはそれでいいと思うんですよね。

そもそもお前に関係ねーだろっていう。

『Papa told me Cocohana ver.10 ~となりの妖精~ Papa told me Cocohana version』より(榛野なな恵/集英社)

デリカシーと想像力。相変わらず端的で的確な表現。

とまあ、小難しいことをいろいろ思ったりしたんですけど、この作品の基調は詩的な日常エンタメであって、今巻も良エピソードが多く大変たのしみました。

前は前で好きでしたけど、今の少し緩いエピソード運びもとても好きな作品です。

ということで、ではまた次巻。

 

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