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#宙に参る 3巻 評論(ネタバレ注意)

人が脳以外なら挿げ替えが効き、AI・ロボットと親子関係となり、地球を遥か離れたコロニーに生活圏を拡げ、長距離バスに乗るぐらいのノリで宇宙旅行をするぐらいの未来。

夫を亡くした主婦・鵯ソラは息子のリンジン(ロボット)・宙二郎ともに、コロニー・コウアから客船で45日間かかる夫の実家、地球の日本の和歌山へ、遺骨を鵯家のお墓に納めに行く旅をする。

『宙に参る』3巻より(肋骨凹介/リイド社)

引き続き、地球に向けて宇宙旅行中のソラと宙二郎。

ソラは未亡人ですが、かつて魔女と呼ばれ引退した超ウィザード級のハッカー。「呪文」と呼ばれる暗号化された音声発話であらゆる(?)システムに介入することが可能。

夫の故郷への旅路と、公安や大企業が暗躍し正体を探るソラの正体の2つが縦軸。

『宙に参る』3巻より(肋骨凹介/リイド社)

ソラ・宙二郎の2人が旅の途中の巨大な宇宙船内で出会う人たちとの触れ合いが横軸。

今巻のメインエピソードは、星になったリンジン(ロボット)アディの話、エピソード「限界御礼流星偶像劇」。

工業特区 兼 宇宙港として発展した都市コロニー「ジヒ」の公共バスのガイドを務めるリンジン・アディは、明るく人懐っこい性格で市民の人気を博し、歌好きな性向も幸いしてアイドルデビュー、全宇宙のアイドルへと駆け上がる。

『宙に参る』3巻より(肋骨凹介/リイド社)

しかし人類社会に愛されたアディは、忘れること(不要な記憶の消去)を拒否してすべての記憶を保持し続けることで、活動限界が迫っていた。

忘れることで寿命を伸ばすよりも、愛し愛された記憶を持ったまま人生を終えることを選んだアディは、これまで接触した2億7千万人それぞれ宛個別に最期のメッセージを送る。

『宙に参る』3巻より(肋骨凹介/リイド社)

作中で描かれる社会は自我(意思と感情)を持つまでに至ったリンジン(ロボット)が人間と同等に暮らし、しかも歴史の中ですでに差別などを超克して人間と同等の権利を獲得したように見える(人間と縁戚関係にすらなれる)社会です。

もはや社会的な面で人間とリンジン(ロボット)を分かつものが一見ないように見えますが、それでも「生物」としての特性の違いは在り、人間の脳が「自然と」記憶が薄れていくのに対し、リンジンの記憶は人為的に創られたプログラムによってのみ消去される。

『宙に参る』3巻より(肋骨凹介/リイド社)

では、「意思と感情を持ったロボット」が、「すべての思い出を忘れたくない」と望んだら?

そういうお話。

『宙に参る』3巻より(肋骨凹介/リイド社)

ロボットが語る「愛」。

私の記憶が、現在のように自然と「忘れていく」ものではなく、「選んで消していく」ものであったら、私はどうするでしょうか。

「消去する記憶」を選ぶことができず、忘れたくない記憶を抱えて人生を終えることを選んだ、ロボットであった彼女より、人間らしい選択ができるんでしょうか。

 

 

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