#AQM

あ、今日読んだ漫画

この漫画賞がすごい2023 (※not新人賞)

能書き

面白い漫画をたくさん読みたいわけなんですが、なにしろ作品数が多く、面白くない漫画もたくさんあります。頂上の高さは裾野の広さに比例する(だろうと思う)ので、面白くない漫画も含めて作品数が多いこと自体はとても良いことなんですが、個人が対峙するには、なにしろ数が多い。

 

自力で面白い漫画に出会う方法は、作者買い、単行本購入前の連載読みやお試し読みなどで作品に直接ふれること、アニメ版・実写版などの視聴体験、作品概要(あらすじ)情報、タイトル・表紙から受けるインスピレーション、レーベル(編集部)買い、編集者買い、などでしょうか。

割りと一人でできることには量的な限度というか、主にお財布と時間に限りがあるので、たぶんこの世のすべての漫画を読んでる人は「商業出版されたもの」に限ってもいないと思います。

ちなみに漫画の単行本、2022年1月〜11月の間に12,838冊出てるそう(※書籍扱いと雑誌扱いの合計)なので、新刊を1日40冊ずつ読めば理論上は可能そうです。

出版月報2022年12月号

出版月報2022年12月号

  • 出版科学研究所
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自分は2022年のkindle購入冊数が約500冊、うち新刊漫画が約400冊くらいかなと思うので、たった3%弱ぐらいですかね、読んだの。

できれば面白い漫画だけを選んで2〜3%以内ぐらいに数を絞りつつ、かつ逃すことなく読みたいところですが、タチの悪いことに漫画は読んでみるまで面白いかどうかわからず、また「面白い」が読者ごとの主観によって微妙に、あるいは全然違ったりするので、他人のオススメはアテになったりならなかったり不安定。

定量的・客観的な社会の評価という意味では、信頼できる団体が発表する「漫画の売上ランキング」に載るタイトルを上から順番に読んでいくのが比較的安全ではありますが、売上ランキングには自分にとって面白くない漫画も往々にして載っていること、また自分にとって面白い漫画が往々にして載っていないことも、我々は経験則で知っています。

 

じゃあ、ということで。

定性的で主観的で不安定な「他人のオススメ」との距離を、「他人」ごとに測って安定させれば良いのではないか。

要するに「ここのオススメは鉄板」を見つければ、もっと言えば「ここのオススメは無視でいい」とか「ここは貶してる作品がむしろ面白い」とかでもよくて、自分が感じる面白さに対する目安・尺度として安定してくれさえすれば良いわけです。

ということで、「ここのオススメ」の極の一つである、主要な漫画賞が自分の目から見てどういうものなのか、公式ページとかWikipediaとかを見ていきたいなと思います。

ベースはWikipediaの「日本の漫画賞」のリストです。

ja.wikipedia.org

注意事項として

・創設が古い順

・新人の投稿作を募集・選考するいわゆる「新人賞」は含まない

・国内で現在も継続して定期的に開催されている漫画賞に限る

・現在ネットで最も話題を集めセールスへの影響力も強いとされる「このマンガがすごい!」は、賞ではなく「出版されるムック」扱いらしく、Wikipediaの「日本の漫画賞」に含まれてないけど、まあ、この記事では入れる

・情報の参照・引用元は全て、各トピック下部に貼ってるリンク先の公式ページ・Wikipediaページ・コミックナタリーの記事

・各漫画賞の「精神」とか「意義」とか「成り立ち」とかってものは、厳密には関わっていないとわからないもんだと思うんで、あくまで外形やセレクトから見えてくるもので

・ベンチマークとして一律『ゴールデンカムイ』(集英社)、『3月のライオン』(白泉社)の受賞歴の有無を記載 理由はこの2作が読者の性別を問わず支持されていて、かつ近年の漫画賞コレクターだから

13,000字ぐらいあるので忙しい人はあとで読んでください。

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漫画賞スケジュール

ここだけ発表時期順にソート。

※「直近回の発表日付」は、公式サイト・Wikipediaともに記載がないことが多いので、コミックナタリーの初報日付を参照

ここから下は創設順に。

 

漫画賞

小学館漫画賞

※赤字が他社作品

「コロコロコミック」系、「サンデー」系、「ちゃお」系、「ビッグコミック」系を抱える漫画出版界の雄・小学館(一ツ橋グループ)による、日本の現役最古(?)の漫画賞。

歴史が古い分、受賞作家に手塚治虫、藤子不二雄、赤塚不二夫、石森(後に石ノ森)章太郎など、錚々たるレジェンドたちも名を連ねる。

過去の受賞作一覧をみると自社・小学館の作品が「中心」で、全部門の受賞作がすべて小学館作品で占められたのは2000年以降の23回中、2006年、2008年、2011年、2012年、2014年、2016年、の6回。多いか少ないか。

それ以外の年は4部門6作品程度の枠に、1〜3作品ぐらい他社作品が受賞している。

近年の主な他社受賞作に『チェンソーマン』、『かぐや様は告らせたい』(集英社)、『メダリスト』、『ハコヅメ』(講談社)、など。

ちなみに『ゴールデンカムイ』、『3月のライオン』は共に受賞したことがない。

歴代の受賞作品の作者を見ると同じ作者が複数回受賞している例も複数有り、また既にヒットしている作品が選ばれるなど、「小学館作品中心」であることを除けば「功労賞」や「発掘」や「文学性」よりも「エンタメとしてその年にガチで面白かった漫画」の中から選んでいる印象。

最終選考は選考委員によるため、「最大公約数」よりも選考委員個人の好みに左右される面はあるものの、出版社の垣根を超えてこの賞を受賞した「小学館以外」の作品はとりあえず割りと鉄板かな、と思う。

直近回でも『よふかしのうた』と『メダリスト』が入っていて、個人的に好みが近いなと思う。

(引用・参照元)

shogakukan-comic.jp

ja.wikipedia.org

natalie.mu

 

日本漫画家協会賞

名前の通り、漫画家の協会が主催する賞。

賞金を含めて会員の会費によって運営されており、企業(出版社など)の影響を排しているが、大賞以外の特別賞がぐにゃぐにゃ形態を変えつつ新設・廃止されてきており、現在は文部科学大臣や地方自治体による特別賞が追加された形になっている。

過去の受賞作を見ると、まず「大賞:該当作なし」が7回もあるのが目を惹くぐらい、商売っけが薄い。

歴代の大賞受賞作も、大半が自分がタイトルを聞いたことがない作品である反面、既読の作品では新しい方から『ゴールデンカムイ』、『鬼滅の刃』、『あれよ星屑』、『あさりちゃん』、『静かなるドン』、『ONE PIECE』、『深夜食堂』、『ゴルゴ13』、『こち亀』、『風の谷のナウシカ』、『アンパンマン』などが受賞していて、結果だけ見ると脈絡がよくわからないw

おそらくコンセプトを「発掘」、「功労」、「ガチ」のどれでいくのか、選者の間であえて擦り合わせせず、カオスに任せているんだろうなと思われ、長年の連載が完結した年に贈られている「功労」と思われるケースも数件ある。

読者の感動や満足度よりも、漫画に対する同業者の貢献・労力・発想・技巧へのリスペクトの発露、という感じで、自分のようなライトな漫画読者にはやや難解な、ガチプロ向けのセレクション。

前述のとおり『ゴールデンカムイ』は2022年に受賞、『3月のライオン』は未受賞。

最終選考の風景が、円満なんだか喧々諤々の激論なんだか、想像が全然つかない。

受賞歴のある宮崎駿は、日本漫画家協会に入会してんのかしらん。

(引用・参照元)

nihonmangakakyokai.or.jp

ja.wikipedia.org

natalie.mu

 

講談社漫画賞

「マガジン」系、「モーニング」「アフタヌーン」系、「なかよし」などを抱える漫画出版界の雄・講談社(音羽グループ)による漫画賞。最近は「ボンボン」、「イブニング」の休刊の報が聞こえるなど、漫画誌の整理が進んでいる。

賞の開始は小学館に遅れること22年、1977年の第1回の受賞作は『ブラック・ジャック』、『三つ目がとおる』(手塚治虫)、『はいからさんが通る』(大和和紀)、『キャンディ・キャンディ』(いがらしゆみこ)というこちらも錚々たる面子。

第1回の『ブラック・ジャック』からして秋田書店作品、2018年にも『BEASTARS』(秋田書店)が受賞している他、それより以前にも数年に一作の稀なペースで『俺物語!!』、『潔く柔く』、『君に届け』、『ハチミツとクローバー』、『ちびまる子ちゃん』、『有閑倶楽部』などの一ツ橋グループ・集英社の少女漫画を中心に他社作品が受賞している。

が、2019年以降はすべての受賞作が完全に講談社作品で占められており、近年は「講談社作品専用」のイメージが強い。

『ゴールデンカムイ』(集英社)は受賞したことがないが、『3月のライオン』(白泉社)が2011年に受賞している。

直近回は、『ハコヅメ』第一部の最終年とカチあったこともあり講談社漫画賞には選ばれなかった『メダリスト』(講談社)が、先に「小学館漫画賞」に選ばれてしまうという珍事が発生した。まあ、『メダリスト』には来年も再来年もあるしね。

過去受賞作品を見ると講談社作品のその時のエース級が順当に受賞している印象で名作・ヒット作揃いで安定感があるものの、「身内の賞」という印象も強い。

下読み体制もぱっと見、ちょっとよくわからなかった。

(引用・参照元)

www.kodansha.co.jp

ja.wikipedia.org

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星雲賞コミック部門

1962年開始の日本SF大会において、世界SF大会のヒューゴー賞に倣って1970年に創設されたSF賞。コミック部門は1978年、第9回の日本SF大会に合わせて創設された。

ここまで列挙した漫画賞の中で初めてのファン投票形式によるものだが、日本SF大会の参加者を「不特定多数の一般人」と捉えるのはおそらく語弊があるだろうと思う。

開始年1978年の『地球(テラ)へ…』(竹宮惠子)以来、『アップルシード』、『うる星やつら』、『究極超人あ〜る』、『風の谷のナウシカ』、『寄生獣』、『ブレーメンII』、『それでも町は廻っている』と、タイトルを並べるだけでワクワクが蘇ってくるSFの名作・傑作が並ぶ。

漫画賞としてはSF縛りだが「SFとは」のハードルは割りと低い(?)のか、2017年には『こちら葛飾区亀有公園前派出所』が受賞している。

全体的に「功労」というよりは「完結してから評価し賞を贈る」ポリシーが貫かれていて、目的やコンセプトのビジョンが明確な「SF縛り」と併せて好感・共感が持てる。

白眉は2019年の『少女終末旅行』への授与で、この傑作SF漫画に贈られた数少ない貴重な賞で、自分はこの賞をとてもリスペクトしている。大好きな『少女終末旅行』に報いてくれて本当にありがとう。

aqm.hatenablog.jp

なお、SF作品ではないので、当然『ゴールデンカムイ』、『3月のライオン』は受賞していない。大事なことなので2回言うと『こち亀』は受賞している。

(引用・参照元)

www.sf-fan.gr.jp

ja.wikipedia.org

natalie.mu

 

文化庁メディア芸術祭マンガ部門

文化庁が主催する年に一度の芸術祭の漫画部門として、1997年に創設。

企業ではなくお役所の主催であるため商業的な意味では中立性が高い(はずだ)が、役所のやることなので国の予算で運営されており、2022年をもって芸術祭自体が終了する旨が文化庁から昨年発表された。

www.itmedia.co.jp

過去の大賞受賞作を見ると、自分にとっては知ってる作品半分・知らない作品半分、という感じ。知ってる作品は、新しい方から並べると『3月のライオン』、『BLUE GIANT』、『ジョジョリオン』、『ヒストリエ』、『ヴィンランド・サガ』、『夕凪の街 桜の国』。『バガボンド』など。

アート・歴史・SFなどの分野が選ばれる傾向にあるように見えるのは、「芸術祭」というタイトルによるバイアスかもしれない。2002年に黒田硫黄の『セクシーボイスアンドロボ』が大賞を受賞しており、なんか星雲賞っぽさも感じる。

公式ページは受賞を逃したノミネート作一覧も残してくれていてありがたい。

同じ2021年に『3月のライオン』が大賞を、『ゴールデンカムイ』が「ソーシャル・インパクト賞」を受賞している。

繰り返すが、2022年をもって芸術祭自体が終了する旨、文化庁から発表されており、今後の参考には使えない。

2022年大賞受賞作の『ゴールデンラズベリー』がなんだか面白そうなので、そのうち読んでみよう。

(引用・参照元)

j-mediaarts.jp

ja.wikipedia.org

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手塚治虫文化賞

手塚治虫の名を冠して、朝日新聞社が主催する漫画賞。「優れた漫画に授与する」として1997年に創立。

賞の公式ページが、朝日新聞社の会社案内の一部になってる構成がちょっと面白い。

賞の名前は本当は「芥川賞(正式には『芥川龍之介賞』)」「直木賞」に倣って「手塚賞」「手塚治虫賞」としたかったかもしれないが「手塚賞」の名前がジャンプの新人賞で先に使われちゃってたためこういう名前になっちゃったのかな、とか、明記されている選考委員が「社外選考委員」となっており「メインは朝日新聞社員が選んでるんだろうか?」とかいろいろ想像してしまう。

第1回の1997年の受賞作は『ドラえもん』で、96年に亡くなった藤子・F・不二雄に対する没後の功労的な意味合いが強かったっぽい。

その後の過去の大賞受賞作を見ると自分は読んだのが半分ぐらい。

自分が読んだものを新しい順に並べると、『ゴールデンカムイ』、『よつばと!』、『3月のライオン』、『キングダム』、『ヒストリエ』、『へうげもの』、『もやしもん』、『ヘルタースケルター』、『バガボンド』、『MONSTER』など。

出版社不偏不党で王道の名作を選定している印象だが、基本的に完結前・連載中の時点で賞を授与するみたい。なんか完結した作品にあげる賞、というイメージがあったんですけど、特にそんなことはなかった。

特別賞に短編部門があるのも特徴。

上述のとおり、『3月のライオン』が2014年、『ゴールデンカムイ』は2018年に、それぞれ大賞を受賞。

未読の大賞受賞作について作品概要を少し漁ってみると、どれも面白そうで、自分にとっては未知の名作に出会うアンテナとして丁度いいかもしれない。

まあなんというか、手塚治虫の名を冠した賞が、ないというもネェ、みたいな。

(引用・参照元) 

www.asahi.com

ja.wikipedia.org

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このマンガがすごい!

宝島社のムック「この映画がすごい!」「このミステリーがすごい!」「このライトノベルがすごい!」シリーズの第4弾(?)として2005年に創刊。厳密には漫画賞ではなく、アンケートの集計によるランキングを発表する宝島社のムック。

「『VOW』の宝島社がまた地味で儲からなそうなこと始めたわ」と思っていたら、コツコツ毎年続けて、継続は力なりでいつの間にか漫画ランキングの権威、書店や電子ストアのセールスを左右する大きな存在に成長した感。

ネットメディアでの露出が最も大きい漫画賞(的なもの)なので、ランキングの妥当性についてネットで最もごちゃごちゃ言われやすい、漫画賞界の被害担当艦・タンク役みたいなポジションにも。

漫画って映画や小説と比べて、始まってから完結するまで時間がかかるので、いつが一番「すごい」のかわかりづらいのよね。

2022年12月に発表された最新のランキングでは、オトコ編・オンナ編に分散した票を合算された『光が死んだ夏』が『さよなら絵梨』を僅か2ポイント差で上回り藤本タツキの3連覇を土壇場で阻むなど、スポーツ競技みたいなドラマが発生している。

女性漫画誌作品の救済のために「オトコ編」「オンナ編」の区分けを批判されながら頑なに続けていること、「特定少数」ながら議論を経ない「人気投票」の「ランキング」に過ぎないこと、そのことを自覚している選者たちが各自でレギュレーションを超えてメタにバランスを取ろうとする結果コンセプトが複雑化・カオス化していること、時期が9月末締めの12月発表であることのタイムラグなど、構造的なツッコまれどころは多い。

個性が強い優れた個人商店の集合体というか、「発掘」なのか、「ガチ」なのか、「功労」なのか、運営が統制をとるでもなく各選者が各自のポリシーでバラバラにバランスをとる結果、「一流の八百屋の両隣が一流の英会話スクールと一流の葬儀店なショッピングモール」みたいに、集計すると賞全体の意義やポリシーがランキングの結果から読み取りにくいカオスなものになってしまう、というのはプロの漫画家が選ぶ「日本漫画家協会賞」とも少し通じる。

『少女終末旅行』が一度もランキング圏に入らなかったこと、まだ1巻しか出てない時点の『天国大魔境』を1位にしたこと、基本的に終わる(終わった)漫画に冷たいことなど、ここのランキングは自分も疑問に思うところがないでもないが、知らない作品を知るアンテナとしては大変よく機能しており、年末商戦を前に漫画業界を毎年盛り上げる功績もとても大きい。

同一漫画家の受賞という意味では『ハチミツとクローバー』(羽海野チカ/集英社)が「このマン」黎明期の2006年と2007年に連続して1位を獲ってしまったり、『チェンソーマン』『ルックバック』(集英社)の藤本タツキが2連覇、あわや3連覇という例が起こっており、必ずしもアーリーアダプター的なマイナー作品発掘・新人発掘だけがメインなわけでも、過去の1位を除外する調整が入っているわけでも、「功労」もたまにしないわけでもなく、という感じ。

ちなみに『ゴールデンカムイ』は2016年のオトコ編で2位、『3月のライオン』は2009年のオトコ編で5位になっている。

「オトコ編」の1位になる漫画は自分も既読であることも多い反面、『海が走るエンドロール』、『女の園の星』など、このランキングのおかげで出会えた作品も多く、基本的にはお世話になっているので「オンナ編」がなくなると自分は割りと困るな、と思う。

この項目がながい!

(引用・参照元)

このマンガがすごい!2023

ja.wikipedia.org

natalie.mu

なぜか「このマンガがすごい!」の公式サイトは、はてなブログで埋め込みリンクできない謎。

 

全国書店員が選んだおすすめコミック

おそらく書店業界の盛り上げを目的に、大手取次が書店員にアンケートをとる形で2006年に開始した漫画賞。

書店員が選ぶこと、既刊5巻以内の作品であることが特色。「次にくるマンガ大賞」と「既刊5巻以内」の条件がカブッているが、こっちが先。

「このマン」と同じく、特定少数または特定多数によるアンケート投票。全国に書店員さんって何人ぐらいいるんだろうかとか、アルバイトの人もアンケートに参加してるんだろうかとか、考えてしまうが、WIkipediaによると、2010年〜2019年までの投票人数が公開されており、約600人〜約2,400人の間で人が増えたり減ったりしていて、途中で何があったんだろうかとちょっと心配になる。

ランキングの内容は人気投票なので、知名度が高く売れ筋の5巻以内の漫画が順当に並んでいるように見える。

選ぶ基準が「人にすすめたい」「もっと売れてほしい」という、流通・小売ならではのビジネスライクな動機が設定されているが、書店員さんたちはただ普通に好きな漫画に投票してるだけにも見える。

ランクインした作品は、店頭のフェアで陳列される副賞があるとのこと。

『3月のライオン』が2009年に入賞(ランキング形式移行前)、2011年に2位。『ゴールデンカムイ』は2016年に7位にランクイン。

ちなみに発表は例年1月下旬なので、今年分がもうすぐ発表。

(引用・参照元) 

zenkokushotenin-manga.jp

ja.wikipedia.org

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マンガ大賞

ニッポン放送アナウンサー・吉田尚記を発起人に有志8人(現在9人?)で発足した実行委員会によって2008年に創設された漫画賞。特に発起人が実行委員長なわけではないらしい。

実行委員が知り合いの有志(書店員など)に声をかけて選考員に招聘、構成は非公開。公式サイトもボランティアで運営されるなど、活動に企業が関わっておらず、商業上の都合・影響を排した作り。

「誰かに薦めたい漫画」というコンセプトの他に「既刊8巻以内」との縛りがある。

過去の大賞受賞作を見ると著名な名作が並び特に尖ったところはなく普通だが、「普通」と思うということは自分と好みが合うということで、ノミネート作品を含めて奇を衒わずに名作・良作が普通に並んでいるように見え、「読んだことない漫画があったら手を出してみる」のにちょうどいい。

ランキング形式ではなく大賞を選定するが、二次選考の得票ポイントが公開されており、擬似ランキング的にみることもできる。

『3月のライオン』は2009年にノミネート3位、2011年に大賞を受賞。『ゴールデンカムイ』は2016年に大賞を受賞。

(引用・参照元)

www.mangataisho.com

ja.wikipedia.org

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次にくるマンガ大賞

KADOKAWA子会社ドワンゴの「ニコニコ動画」と、KADOKAWAの雑誌「ダ・ヴィンチ」が主催する漫画賞で2014年に創立、資本的には「KADOKAWA漫画賞」と言ってもいいかもしれない。

「次にくる」の名のとおり、基本的に単行本5巻以内の作品に限り、WEB部門は単行本が出てなくてもエントリーできるっぽい。

選考方法は、下読みはニコニコユーザからの自薦・他薦、選考はノミネート作品に対するニコニコユーザの直接投票。

ニコニコ動画が抱える会員ユーザとインフラをフル活用し、直近の2022年8月に発表された回では4,787作品ノミネートに対し、WEB投票約46万票が投じられると言う、正気の沙汰とは思えない大きな規模で開催されている。オープン型で参加者数で言えば日本有数の漫画賞。(※実はこれでも「日本最大」ではないっぽい)

まさに「不特定多数の人気投票」だが「既刊5巻以内」の縛りが良いのか、「発掘」+「ガチ」の、現在世間で愛されて勢いのある作品がストレートに選出されている。

「最近流行ってる未読の漫画」を探すなら普通に有用。

「もうきてる」と毎年揶揄される向きもあるが、まあ、5巻以内でアニメ化も決まってないなら、「次にくる」でいんでねえでしょうか。「次にくる"誰も知らない"マンガ」は、そもそも人気投票では浮かんでこない。

『ゴールデンカムイ』が2016年に5位。『3月のライオン』は賞創設の2014年時点で巻数が5巻を超えており対象外。

WEB部門は単行本になってなくてもOKっぽく、『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』が1巻の発売日の数日後にこの賞を受賞して「早っ!」ってなった。

選考結果にあんまりKADOKAWA色もなく、参加者がたくさんいるのが目視で見えて、なんかお祭り感あっていいですよね。今年は自分も投票しようかな。

(引用・参照元)

tsugimanga.jp

ja.wikipedia.org

natalie.mu

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みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞

TSUTAYA(CCC)による主催で、次にヒットするであろう作品を読者投票のみによって決めるマンガ賞として2017年に創設。

当初は「ネクストブレイク部門」以外に「オールタイムベスト部門」、「アニメ化希望部門」、「実写化希望部門」、「グルメ漫画部門」、「スポーツ漫画部門」など、わけのわからない分類の部門が乱立し『キングダム』が2年連続で「オールタイム部門」を受賞、「そりゃ同じ人たちが選んだら毎年同じ結果になるのでは…」と思ったのか整理統合されて現在は「ネクストブレイク」のみ、プラス特別賞という構成になっている。

「5巻以内」「次にくる」「投票」という条件・コンセプトは「全国書店員が選んだおすすめコミック」「次にくるマンガ大賞」とカブっており、しかもその2つより歴史も浅いので、存在意義というか、なんで後からわざわざカブせたのか、ちょっとよくわからない賞。

ただ、2022年の上位10作品を見ると5作品が自分の知らない作品で、同じ条件でもユーザ層が違うというか、「ところ変われば」というやつで、結果がこの賞を他の賞と差別化している。スマホ向けというかスマホアプリ連載作品が中心なのかな。

1位の『山田くんとLv999の恋をする』がネトゲ恋愛ラブコメで面白そうなので、読んでみよ。

『ゴールデンカムイ』、『3月のライオン』ともに2017年の賞創設の時点で巻数が5巻を超えていたが、『ゴールデンカムイ』が2017年初回の「アニメ化希望部門」2位。『3月のライオン』はこの賞創設の前年、2016年にNHKでアニメ化済だった。

(引用・参照元)

tsutaya.tsite.jp

ja.wikipedia.org

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電子コミック大賞

NTTのグループ会社がガラケー(iモード)の頃から運営する老舗の電子コミックサービス「コミックシーモア」によって、「次に来るヒット作品はこれだ!」と思う作品に投票してみんなで大賞漫画を選ぶことをコンセプトに、2018年に創設された漫画賞。出版社が推薦するエントリー作品から、会員の投票により大賞+6つの部門賞、計13作品が選ばれる。

出版社の漫画作品の電子コミック販売の他、ソルマーレ編集部によるオリジナルレーベルの漫画作品を擁し、BL・TLなど女性向け作品を中心に独自の文化圏を確立している。

何がびっくりって、2022年に発表された大賞と6部門の計13作品について、自分は1作品もタイトルも知らなかった。過去の受賞作を見ても、2020年の男性部門『その着せ替え人形は恋をする』1作品しか知らなかった。

しかもその自分の知らない作品群に対して、「正気の沙汰ではない」と評した「次にくるマンガ大賞」の46万票の倍以上、100万票が投じられている。

古事記にはそう書かれていないが、コミックナタリーにそう書いてある。

natalie.mu

100万票て。「コミックシーモア党」を結党すれば国会に3〜4人送り込めそう。

創設以来の歴が浅く、Wikipedia「日本の漫画賞」の記載順も末尾だが、参加者数はおそらく国内最大のファン投票型漫画賞。

BL・TLが中心で、この先もこの賞のラインナップが自分の琴線に触れてくることはなさそうというか、そもそも自分がこの賞に相手にされていない、という感じ。

だが、自分と全然違うナワバリでこれだけの人たちが好きな漫画で盛り上がっているというのは、「違う島から同じ夜空の違う星を見ている」というか、自分が見てないところにこれだけの漫画好きたちがいることをとても心強く感じるし、この営みが末長く続いてほしいと思う。

歴が浅いこともあり『ゴールデンカムイ』も『3月のライオン』も受賞歴はない、というより他の漫画賞で挙げられる作品群とはラインナップがほとんど共通していないが、「それでも私たちが選んだこの漫画を私たちは大好きなんだ」という強い矜持と迫力を感じると共に、「DISったら下手したら100万人相手に炎上するのか…」という気持ち。

ただ、今日時点で2020年の情報で更新が止まっており、誰かWikipediaメンテしろよ、とは思う。

(※この記事の1週間後の2023.1.29に確認したら、2023年の分まで更新されてました)

(引用・参照元) 

www.cmoa.jp

ja.wikipedia.org

natalie.mu

 

番外

日本SF大賞

ファン投票型の星雲賞と違い、プロのSF作家がプロのSF作家の作品を評価する賞として、1980年に日本SF作家クラブによって創設されたSF賞。

SF作品であれば小説・映画・漫画とメディア形式を問わず選考対象となっている。なのでいわゆる「漫画賞」ではない。

受賞作品は小説作品が大半を占め、漫画作品が受賞することはむしろ稀だが、たまたま直近の2022年の大賞を『大奥』(よしながふみ/白泉社)が受賞している。

『ゴールデンカムイ』、『3月のライオン』受賞歴なし。

主催者の投げ込み記事だとは思うが、漫画賞じゃないのにきっちりカバーして記事化しているコミックナタリーがちょっと怖い。

(引用・参照元)

sfwj.jp

ja.wikipedia.org

natalie.mu

 

ananマンガ大賞

マガジンハウスの女性向け雑誌「anan」の、2010年創設の漫画賞。

「このマンガがすごい!」と同じく、雑誌を売ってナンボなんで「雑誌で読め」とばかりに公式サイトがあんまり充実しておらず、Wikipediaの扱いも雑誌「anan」のトピックの一部分という扱いで、創設経緯や選考方法がよくわからない。

ということで、困った時のコミックナタリー。

natalie.mu

ananマンガ大賞は、「イケメンが出てくること」「ラブストーリーであること」などを審査基準に、編集部のマンガ好きが選考するマンガ賞。

とのこと。コミックナタリーはなんでも知ってるな。

さっきの100万人投票と打って変わって漫画好きの編集部員数人による選考とのことで、やってることは個人ブログに毛が生えたような手法ながら、有名雑誌「anan」で特集コーナーとして誌面に掲載される。んだと思う。おじさんなので「anan」買ったことない。

特筆すべきは、「イケメンが出てくること」、「ラブストーリーであること」とコンセプトや審査基準がシンプルで明確でわかりやすく、読者層に刺さっている(であろう)こと。他の賞との差別化という意味で、アイデンティティがSF系の賞なみにはっきりと独自色があって良い。選考員が少人数なこともあり「この漫画が好き」で駆動してる感というか、編集者の個人的な趣味丸出しの特集コーナー大好き。

過去の大賞受賞作で自分が既読のものは新しい方から『凪のお暇』、『きょうは会社休みます。』、準大賞では同じく新しい方から『私のジャンルに『神』がいます』、『正反対な君と僕』、『こっち向いてよ向井くん』、『海が走るエンドロール』、『ホリミヤ』、『俺物語!!』、『ストロボ・エッジ』、『町でうわさの天狗の子』、『君に届け』、『聖☆おにいさん』など。

『ゴールデンカムイ』、『3月のライオン』の受賞歴はないが、どちらも女性ファンも多い作品で、受賞しててもおかしくはないな、というラインナップ。

自分は未読の作品だけど、『大奥』は日本SF大賞とananマンガ大賞という一見何の接点もなさそうな漫画賞を両方受賞してて面白いというか、なにげに『大奥』も漫画賞コレクターよね。

ちなみに2022年のananマンガ大賞の『山田くんとLv999の恋をする』は、同年の「みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞」でも大賞を獲ってて2冠。お試しでちょっと読んでみたけど、スマホアプリ連載で1ページ3コマのスマホフレンドリーなルックス、ネトゲ恋愛ラブコメという自分が好きなジャンルなので、買って読んでみよう。

(引用・参照元)

ananweb.jp

ja.wikipedia.org

natalie.mu

 

総評

・コミックナタリーしか勝たん

・他、なんかおもろい漫画賞あったら教えてちょんまげ

・「この〜がすごい!」というタイトルはちょっとした発明

・有志による主催は2つ(マンガ大賞、星雲賞)、非営利法人の主催が2つ(日本漫画家協会賞、日本SF大賞)

・営利企業の事業として営まれ、メセナ的ではなく「雑誌・書籍(もしくは特集)の販売」でのマネタイズが出口になっている賞は、昨今の雑誌廃刊ラッシュの中、10年後には形態が変わっているか、なくなっているかもしれない

・まあ母体の業績に存続や形態が左右されるのは企業のメセナ的な賞も一緒なんですけど

・総合漫画賞や発掘漫画賞は既に複数の漫画賞で役割が重複していて飽和気味なので、途中で出てきた「SF漫画」「イケメンとラブストーリー漫画」みたいにコンセプトやジャンルを絞った個性的な漫画賞が出てきて欲しいところ Numberあたりが年に1回「スポーツ漫画大賞」やったり、バンナムあたりが「ガンダム漫画大賞」やったりしたってバチは当たらないと思う(既に在ったらすいません)

・多くの賞で年を追って大賞枠や部門が増え(たり減ったりし)ていて、「愉快で多様な作品群から一作に絞るジレンマ」、「漫画に優劣・順位をつけるジレンマ」を感じなくもない

・でも「年に一作ぐらいしか漫画を読まない人」に届けたい気持ちもすごいわかる 平気で「53選」とかアホみたい数を挙げられる個人ブログとは違う

・どの漫画賞も一様に4コマ漫画の地位が低いように見えたというか、そもそも視界に入ってるのかしらん

・最後にちゃぶ台ひっくり返すと、所詮は他人が選んだ賞・他人が作ったランキングなんで、多かれ少なかれ納得なんかいかないもんで、世の賞やランキングは薄目で見つつ使える部分は上手に利用しつつ、心の中で「オレ賞」「ワタシ賞」をアレするしかねえ

 

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