#AQM

I oppose and protest the Russian invasion of Ukraine.

2022年に読んで面白かった漫画 53選

我ながらコンサバなのにミーハーな並びだな。

 ★★★    面白かった

 ★★★★   すごい好き

 ★★★★★  愛してる

 ★★★★★★ 人生のお供

この記事では★5以上を並べます。

同じ数同士の順番は、単純に読んで記事にした日付の順なので他意はないです。

読んで面白くなかった漫画は、わざわざDISるのもなんなので記事にしてないです。

その他、世の中には自分が読んでない漫画の方が圧倒的に多いです。

前回はこちら。

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前は半年ごとにやってたんですけど前回から1年分まとめて、寸評も巻ごとじゃなくて作品ごとに。

諸々コミでこんぐらい。長くてすいません。

あとで読んでください。

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じゃあ、そういう感じで。

 

1本目

★★★★★

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aqm.hatenablog.jp漫画のお約束の逆手をとって読者の予想の斜め上の新たなお約束を作り、その自分で作ったお約束をまた逆手にとって…という漫画。WEB無料連載という媒体も活かして、作者と読者がメタなキャッチボールをしているような。「今週はそうきたか」と読者を唸らせる上手さ。

下手でも面白い漫画がたくさんあるように、上手くて面白くない漫画もまたたくさんありますが、上手さが漫画の面白さのために機能する、上手くて面白い漫画だなと思います。

出オチだったはずが延々面白いまま10巻に乗りました。『ガラスの仮面』23巻でマヤがオーディションの課題で延々と即興劇を演じ続けたシーンを思い出します。ロビンソン、おそろしい子!!

『姫様“拷問”の時間です』9巻より(春原ロビンソン/ひらけい/集英社)

こんなん、ずっるいw

「逆にどうなったら終わるんだ」というか、エピソードを重ねれば重ねるほど最終回の形が想像がつかなくなりますね。

作画も良いですよね。神様から好きな漫画家3人の画風を自由に描けるチート能力をもらえるとしたら、1人はひらけい先生の画風がいいな。

 

 

★★★★★

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aqm.hatenablog.jp毎度お馴染み、陰キャ男子と陽キャ美少女の中学生同士の未満恋愛ラブコメ。

ヒットしてる商業ラブコメ的には引っ張ることに意義があるので、もう結婚しちゃえばいいような「愛のサイン」が7〜8回ぐらい乱発されてますが、付き合い始める前にTVアニメ化の方が決まってしまいました。焦れて飽きて離れた人もいることでしょう。

この作品もWEB連載ですが、『姫様拷問』と違ってこちらのネットの反応は、『星の瞳のシルエット』の香澄ちゃんと久住くんの両片想いの行方に毎号一喜一憂していた250万乙女のようだよ。もう毎号クライマックスかよ。「愛のサイン」ってなんだよ書いてて恥ずかしくねえのかよYes・No枕かよ。

話は変わりますがこんにちは、わたし魔女のキキです! こっちは読者全プレでもらった僕ヤバのスカジャン!

AQMの部屋より

嘘です公式WEB通販で23,980円でした。

リバーシブルなのでYesの時は表を、Noの時はこの裏側を着ようと思いますが、まだ一度も着てません。

 

 

★★★★★

aqm.hatenablog.jp近年の流行の要素をいろいろ取り入れたファンタジー世界の冒険もの。

「あの水上悟志先生が●●要素を!」って、だいぶ前からヒット作を生み続けてたりお弟子さん達が活躍していることもあって、妙に昔からいるベテランの大家のように勘違いしてしまいがちなんですけど、Wikipediaによるとプロのキャリアは2002年以降で、まだ42歳の若さのはずです。

年末に自伝漫画が出てるので、近いうち読んでみようと思います。

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『最果てのソルテ』2巻より(水上悟志/マッグガーデン)

要素を詰め込みつつもシンプルに「世界の謎を!俺も知りたい!」と続きがとても楽しみな、『ハンター』や『ワンピース』といろんな意味で同じ土俵にいる作品ですが、もともと季刊連載でゆっくりしたペースの作品が、今年は更に先生なにかとお忙しくて連載更新は11ヶ月ぶりの11月下旬の1回のみでした。なので来年は新刊たぶん出ません。

もともと3〜4年で完結する作品とも思ってないし、『ハンター』や『ワンピース』のように20年でも30年でもかけてじっくり描いていただきたい。なんたって20年たってもまだ62歳、年金システムのせいで働き盛りでいらっしゃいますから。

自分も野菜摂って長生きしまーす。

 

 

★★★★★

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温泉回が

温泉でも行こうなんていつも話してる 落ち着いたら仲間で行こうなんてでも

「WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント〜」より(作詞:小室哲哉)

って完全に「WOW WAR TONIGHT」なんですけど。

『ハクメイとミコチ』10巻より(樫木祐人/ KADOKAWA)

有言実行で仲間で温泉に行けるぐらい、「時代が追いかけて」来ずにゆっくり時間が流れてくれているのが、実はこの漫画の一番羨ましい点かもしれないなと思います。

「なに見て描いてんの?」的な意味で、技巧や書き込み密度について故・三浦建太郎と並べて比較したくなる作家。イマジネーションの豊かさと具体性については「あの世界に行ってスケッチして帰ってきたの?」的な意味で宮崎駿と共通するものも感じます。そういう意味でも三浦も大概でしたけど。

正月休みヒマだし、休みの間にレンタカー借りて湯布院あたりに温泉行こかな。宿が空いてねえか。

 

 

★★★★★

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・主人公は若い女 天然だがタフで情熱的でバイタリティ有 天才というほどの才能はないが状況を打破する鍵を作者から渡されている

・上司・師匠は経験豊かなおっさん 挫折 or 引退を経験したエリート(元 含む)

・「医者なのに生命を見殺しにする」レベルの、新人に業界のシビアさを思い知らせる、罪悪感・非倫理感すら伴うエピソード

というお仕事もの。

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『地球から来たエイリアン』1巻より(有馬慎太郎/講談社)

身も蓋もなく要約すると、宇宙進出し発見した惑星の原生生物を防疫の観点から必要に応じて人類が殺して回り、ヒロインが良心の呵責で葛藤する未来宇宙SFです。

奇想天外な新惑星の生態系を説得力を伴って描いていて、「SFって面白れー」ってなるやつ。

1巻は昨年の刊で、どなたかのオススメ記事をきっかけに読みました。同じ年に2巻も出ました。「そういえば続巻はいつかな」と思ってググったら先月連載が完結してて今ちょうどちょっとショックを受けてます。でも3巻もとても楽しみな作品です。

そういえば似て非なるテーマの『ヘテロゲニア リンギスティコ』も新刊そろそろなんかな。

 

 

★★★★★

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オノ・ナツメの現作、煙草が超高級品な「ACCA」世界観、首都・バードンが作品タイトルで舞台。

リコ、ラズ、ハート、エルモの4人の男は、それぞれ犯した罪でヤッカラの刑務所に収容されていたが、国王代替わりの恩赦・減刑で刑期が明け、4人で煙草店を営むべく揃ってバードンへ。前科持ちのハンデを抱えつつ煙草店を開業。

「武器よさらば」ならぬ「罪よさらば」、「罪と赦し」「やり直し」がテーマの、ハードボイルド風味のおっさんたちの日常もの。

『BADON』6巻より(オノ・ナツメ/スクウェア・エニックス)

ダンディズム?に対するオノ・ナツメの妥協のない要求の高さが相変わらず炸裂しています。

昔なにわ小吉の漫画で

「僕ってワイルドですか」

「その質問してる時点で貴方はワイルドではないわ」

ってネタがありましたが、他人の目を気にした時点で男はワイルドでもダンディでもなくなってしまうものなのかもしれません。それらはあくまで自己の生き様に対する美学の結果に過ぎず、オノ・ナツメはそれを外から描いて愛でるだけ。

読モに憧れる少女のように彼らを見習いたいところではありますが、「俺もがんばってオノ・ナツメに描かれるようなかっこいいおっさんになるぞー!」と思ってるような奴は、たぶん描いてもらえない気がします。

 

 

★★★★★

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「少女終末旅行」のつくみず先生の現作で、女子高生2人の少し不思議なんかファンタジーなダルくてユルくてアンニュイな不条理日常4コマ。半分ギャグコメディ、半分は詩という感じ。

作中キャラが語るとおり、

『シメジ シミュレーション』3巻より(つくみず/KADOKAWA)

意味を拒絶した「深い沈黙」のような作品を志向しており、平たく言うとあんま意味がわかりません。

ユルかった『少女終末旅行』があれでもドラマティックだったんだな、と思う程度には更にユルい作品で、「風が涼しくて気持ちいい」とか「甘いいい匂いがする」とか「夜の星がきれい」とか、言語化される前の五感的・原初的な心地よさを漫画で表現しようとしている(ように見える)作品。

風も匂いも星も、別に人間を心地よくするために存在してるわけではなく、意味を与えるのは常に受容する人間の側です。

自分は3巻ラストで「完結したのかな?」と思ったんですが、完結を示すメタ情報はなく、ならばと見てみたAmazonのレビュー欄も、混乱しながらも完結したと思ってる人と続きが出ると思ってる人が論争するでもなく混在していて、実にこの作品らしいユルいカオスなのが可っ笑しくてしょうがないw

 

 

★★★★★

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昨年の「この漫画がすごい」で1位だったところに今年の2月に2巻が出て、いい機会なので読みました。

65歳にして連れ添った夫を亡くした うみ子 が美大の映像科を受験して入学。かくして齢65のうみ子の、映画監督人生が始まった…という漫画。オールド・ウーマン・ミーツ・ボーイ。

のボーイ枠の海くんがヒロイン枠というか、おっさんの俺から見ても可愛いんだけどなんなんこれキャラも読者も作者も全員が海くんに萌えたくっとるやないかい。

『海が走るエンドロール』3巻より(たらちねジョン/秋田書店)

意外と周囲との歳の差を感じさせない展開・描写ながら、うみ子自身は65歳で美大に入学し卒業する頃には69歳であることを気にしています。

『王家の紋章』の細川智栄子先生は今年も新刊68巻を出されましたが87歳です。

ちなみに細川智栄子先生の誕生日は1月1日なので明日88歳になられます。

話が逸れましたが、つまりはそういうことです。と他人を引き合いに出して無責任なことを。

 

 

★★★★★

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不登校の中学生の少年が夜の町で美しい吸血鬼と出会いその眷属にならんと志す、ボーイ・ミーツ・ヴァンパイアガールな…ファンタジー青春ラブコメ? 日常ものではなくストーリー動きます。

フランクな吸血鬼美女がワラワラと登場する割りにハーレム展開にはならない匙加減。少年漫画絵でとてもチャーミングな女の子を描き分ける作家で、『だがしかし』以上に作風にハマってる作品。

「探偵編」がついこないだのようですが、その後のエピソードで気づけば今年5冊も出たんだ。多いなw ありがてえありがてえ。

『よふかしのうた』13巻より(コトヤマ/小学館)

吸血鬼の夜、人間の闇。

吸血鬼もの漫画は数が多いんですが、吸血鬼の能力や生き死に、眷属の増え方に関するルールが作品ごとに微妙に異なります。聞いたこともないようなオリジナルの用語を創って用いる作品も少なくありません。

シリアス展開とコメディ描写がとても楽しい漫画ですが、この作品のオリジナルルールも、吸血鬼に血を吸われるだけでは眷属になることができない、とてもロマンティックなものです。

あまりにロマンティックすぎて、主人公の少年の願いが叶う気がしません。悲しい。

 

 

★★★★★

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「面白さの割りに知名度が低い」とファンに嘆かれ続けてきた作品ですが、TVアニメ化と実写ドラマ化もされた人気作。

発行部数を『ワンピ』や『鬼滅』と比べるのはあんまり意味ないので、やめましょう。サッカー選手を「メッシより上手いかどうか」だけで評価するようなもので、そのうち漫画描く人もサッカーする人もいなくなっちゃう思想です。

実家の母も『ハコヅメ』ドラマが面白い面白い言ってました。

『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』21巻より(泰三子/講談社)

連載は「第一部 完」で連載終了済で、単行本もあと1〜2冊というところ。

「キャラ萌え」よりも「関係萌え」で引っ張る作品ですが、『僕ヤバ』と似た理由で主要キャラ同士の関係を進展させづらいジレンマもあって、少々煮詰まり気味ではありました。

『スラムダンク』、『ファブル』『チェンソーマン』など、過去の名作を見ても「第一部 完」は読者の「不完全燃焼」感を慰撫しつつ作品の将来に希望と幅を持たせる、上手い勝ち逃げ方です。

時制がいきなり数年後に飛んだり主要キャラが死んでたりする新展開も可能ですし、「もう二度と描かない」ことも可能です。

 

11本目

★★★★★

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高校の漫研をベースに、女子高生コスプレイヤーたちのコスプレにかける青春もの。

2次元にしか興味がない朴念仁の主人公?の少年が徐々に3次元にも心を開き、気がつけばほんのりハーレムラブコメ風味。

冬コミ編のクライマックスの続きの巻と、新一年生の新キャラ・翼貴登場の巻。

いろんなタイプの美少女を各種取り揃え「どこに新キャラ捩じ込む隙間があんだよ」と思ってましたが、「オタク志望でオタク初心者なハイスペですわ口調お嬢様」というド王道キャラで正面突破。持ち前のオタクネタ・マシンガントークとも好相性で、作中でも読者の心象でも思ってた10倍早く馴染みました。

『2.5次元の誘惑』15巻より(橋本悠/集英社)

めんどくさいオタク論と思春期らしい自分探しの禅問答の機微を、華やかな画面と丁寧な心理描写で退屈させずに読ませる、優れた青春ものに仕上がってますが、作者はどすけべの変態です。

TVアニメ化を控えているそうで、もちろんアレとかアレとかはアレするんでしょうけど、ファンとしての感想のファースト・インプレッションは「正気か」です。

 

 

★★★★★

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『攻殻』はたくさんある作品の世界観がパラレルな関係ですが、この作品は士郎政宗の原作の『1.5』の続編、という世界観。霊能局が出てきます。

1〜3巻で当コミカライズの最初のエピソードが完結しました。

難解な士郎政宗原作の設定を引き継いではいますが、読む難易度は『SAC』ぐらいの塩梅、不在の草薙素子に代わってのヒロイン枠・霊能局から9課に引き抜かれたツナギも良い存在感。

『攻殻機動隊 THE HUMAN ALGORITHM』3巻より(士郎政宗/吉本祐樹/藤咲淳一/講談社)

別作家のスピンオフ作品も多いシリーズで、本作は絵も似ても似つきませんが、今のところ「ジェネリック士郎政宗ランキング」第1位かなと思います。

新鮮だからそう思うだけかな。ジェネリックだけど、これ以上は望めないぐらいの出来のジェネリックに見えます。

脚本と作画のどちらの都合かわかりませんが、なぜかあのヒゲ面をよっぽど描きたくないのか、イシカワがバ美肉してる女子高生義体がツナギと作品のビジュアル的なヒロイン枠を争っててジワる。

 

 

★★★★★

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80年前に魔王を打ち倒し平和をもたらした伝説のパーティの、寿命的な生き残りの長寿エルフ種の魔法使い・フリーレンを中心としたファンタジー。パーティ解散、旧メンバーの寿命死の後にもフリーレンに続く生と旅、出会いと別れを淡々と。

ハンター試験みたいな一級魔法使い試験編が終わって再び旅は北へ、短編エピソードと中編エピソードを交えながら。

バトルシーンやギャグシーンになるほどより淡々と作品のテンションが下がります。なんだこの漫画。

出オチというか、読み切り向けの作品を無理やり連載にしたように見えましたが、祈りのように静かに進むシリアス展開、膝から崩れ落ちるようなくだらないギャグコメ展開と、いずれにしても作品自体が跪いているような姿勢でorz、粛々と。

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『葬送のフリーレン』7巻より(山田鐘人/アベツカサ)

くだらない日常エピソードを積み重ねる効用をよく知っている、リアルタイムでアルバム作りながら旅をしているような、遺言を書きながら歩いてるような漫画です。

哀愁ェ…

 

 

★★★★★

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化け物退治が「魔法少女業」として国営から民営化された日本で、ベンチャー魔法少女企業に就職した女の子を主人公にした、極楽に行かせてあげるために今日も一日がんばるゾイ!

人気モチーフ「魔法少女」を法人化・会社員化した作品はおそらくこの作品が初めてではないと思うというか、正直誰でも思いつきそうなアイデアではありますが、大事なのは設定のディティール、キャラのディティール、展開のディティール、描写のディティールをどれだけ積み重ねられるか、「魔法少女」という嘘にどれだけリアリティを与えられるか、じゃないかなと思います。

『株式会社マジルミエ』1巻より(岩田雪花/青木裕/集英社)

あとはまあ、「友情・努力・勝利」印のジャンプの「●●退治系バトルもの」の王道フォーマットと、モダンなコメディ描写と、可愛い女の子が描ければ、漫画は勝手に面白くなります。たぶん。

なお、勝手に面白くなるまでの前提条件が多すぎる上に一個一個が「それができれば苦労しねえよ」クラスに難易度が高く、ほとんどの人間には実行不可能だと思うので、どうしても描きたいときは事前にジャンプ+の編集さんとよく相談しましょう。

あと葵さんの出番を、おまけ漫画でもいいので増やしてください。

 

 

★★★★★

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異世界転生の代表的な作品の一つで、日本のサラリーマンがWWⅠ〜WWⅡ期のドイツ的な帝国、ただし魔導士が存在し軍事活用された世界のドイツ的な帝国に女児として転生し軍人として活躍する架空戦記。

ドイツ的な軍に敗戦したフランス的な軍の残党がアフリカ的な大陸に戦略的逃亡を図り、これを主人公ヒロインのアーニャじゃなかったターニャが追う、「南方大陸編」の完結巻。

「砂漠の狐・ロンメル」的な将軍との共闘もこの巻で終了。おもろいおっさんだった。

『幼女戦記』24巻より(東條チカ/カルロ・ゼン/KADOKAWA)

戦争をエンタメモチーフとして面白おかしくかっこよく活用しまくってる漫画ですが、気まずいことに次巻からソビエト的な連邦と戦争する展開が控えている上に、更に気まずいことにこの記事で次に紹介する作品が日付の順番的に『戦争は女の顔をしていない』です。

それはそれ!これはこれ!よそはよそ!うちはうち!

 

 

★★★★★

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第二次世界大戦・独ソ戦における「戦争と女」をテーマにした作品で、原作はベラルーシ(旧ソ連)の女性ジャーナリスト、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチのノンフィクション。独ソ戦で赤軍に従軍した女性500人を1978年から1984年にかけて取材、ペレストロイカ後の1986年に出版(日本語訳は2008年)、作者は2015年にノーベル文学賞を受賞。本作はそのコミカライズ。

前巻2巻から、この3巻が出るまでの間に、この作品の持つ意味はまた変わってしまいました。独ソ戦でドイツがポーランド経由で西からモスクワを目指した侵攻の玄関口の一つとして戦場となったウクライナは、このコミカライズ2巻の発刊と3巻の発刊の間に今度は東からロシアによって侵攻されました。

後世に戦争の悲惨さを書き残しても新たな戦争を止められなかった、この作品の存在には意味がなかったでしょうか?

いいえ、と私は答えます。

『戦争は女の顔をしていない』3巻より(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/小梅けいと/速水螺旋人/KADOKAWA)

うちのブログのPVの99%以上は日本国内からですが、残りの1%未満は海外からのアクセスで、ドイツからも、ポーランドからも、ロシアからも、そしてウクライナからも、ごくごく稀にほんの僅かなアクセスがあります。

私は空想します。もしかしたら、極東の島国の漫画感想ブログをgoogle翻訳を駆使して読み漁りにきたMANGAファンの誰かが、地球の反対側のMANGAオタクでさえもがウクライナ情勢を気にかけ注目し戦争に反対していることに気がついて、少し何かを思うかもしれない。それにはきっと何か意味があるはずだと私は思います。

『戦争は女の顔をしていない』を読んだどこかの誰かが、少し何かを思ったはずだと信じることを、「意味がなかった」と否定することは、そんな私の些細な空想を「実現していたとしても意味がない」と否定することと同義です。

なので、いいえ、と私は答えます。

 

 

★★★★★

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フィギュアスケートに出会ってしまった小学生の女の子が、オリンピックの金メダルを目指してライバルたちとしのぎを削る熱血スポーツもの。

5巻にして初の本格的な大会参戦。5〜6巻で中部地区大会編、その後7巻までかけて全日本大会までの特訓編。

競技ものなので、この作品が本領を発揮するのは本格的な大会が描かれるようになってからだろう、と前から思っていましたが、順番的にまだ主人公ヒロインが滑走しない、作品メタ的にはやられ役のMOBの子たちが滑る5巻が、ガツンと圧巻でした。今年出たこの作品の3冊の中でも、5巻が一番好きです。

頂点を争うスポーツでは1人(1チーム)を除いて全員負けて終わるため、スポーツの歴史上、ドラマの数で言えば敗者の物語が圧倒的に多い、はずです。

漫画では主人公が負けちゃうとその先の試合が描けないので、どうしても勝つ側にページが割かれがちになるんですけど、埋もれがちな負けた側の美しい物語を短いページで刺してくる漫画。

まだ幼い人生の、それでもその大半を注ぎ込んで、僅かな椅子を賭けた勝負に臨む小さなアスリートたち。

『メダリスト』5巻(つるまいかだ/講談社)

いやもう、こんなん泣くやんけ。無理無理。

 

 

★★★★★

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WEB掲載時と単行本化の際の2回も記事にしたので、この漫画について書きたいことがあんまり残ってないです。『チェンソーマン』二部も面白いね。

うちのブログの記事をブクマが多い順に並べると、上位がウマ娘の攻略記事で埋まってしまうのが「漫画感想ブログなのになんだかな」と一時期思っていたんですが、ふと気がついたらいつのまにか漫画感想ブログらしく…

サムネの並びだけ見たらなんだか藤本タツキのファンブログみたいになってしまいました。

大漁旗みたいでゲンが良いみたいなので、今回の記事のサムネも『さよなら絵梨』にしよう。

 

 

★★★★★

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4コマの匠・OYSTER先生の、再会した幼馴染同士が恋人すっ飛ばして結婚した可愛らしい新婚さん4コマ漫画。奥さんが一歳お姉さんで天然系のボケ役、旦那は漫画家で温和なツッコミ役。

一冊ごとに春・夏・秋・冬と季節が巡り、6巻は2年目の夏のお話。

ジュブナイル系というのか、少年漫画らしい絵でチャーミングな女性を描く強みを活かした可愛らしい新婚日常ものですが、

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『新婚のいろはさん』6巻より(OYSTER/双葉社)

作者本来の尖った強みだったネタ系ストロングスタイルの発露を、上手い具合に抑制して読みやすくわかりやすい面白さ。群像劇化せずメイン2人を中心にし続けていますが、作者元来の発想の豊かさ、また季節の移り変わりを3つ目の主役に据えたことで、ネタ切れ感もマンネリ感も感じさせることなく、俳句のように無限に詠み続けられるかのような印象があります。

この人の集中線の使い方がなんかツボなんですよね自分。

 

 

★★★★★

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高校の「映画を語る若人の部」に入部したプレゼン下手の映子が、毎回好きな邦画を1本トンデモ説明でプレゼンして部長がツッコむ話。題材は実在の映画。

ネットで話題になった、愛されウザキャラの池ちゃんが登場するのが7巻。池ちゃん、あんま今年な感じがしませんが、WEB連載初登場が昨年の11月で、単行本になったのが5月でした。

池ちゃんの他にも、ヤンヤン、マリア、江波、特撮部、女児アニメ部など、映画に対する嗜好がそれぞれに偏った個性的なレビュアーが増え多士済々といったテイで、映画語りにもだいぶ幅が出てきました。

ペルソナというか、すべて作者・服部昇大の脳みそが考えてんだよなコレ、と思うとそれはそれでちょっと怖いですね。まあ漫画って全部そうなんですけど。

『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん Season7』より(服部昇大/集英社)

「映画作品×レビュアー」のバリエーションで無限に描ける建て付けですが、逆に言えばいつでも終われる建て付けでもあります。せっかくの「シーズン制」ですし、強いて終わらせる必要もないとも言えますが、ラブコメ要素次第なんですかね。

 

21本目

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1巻は一昨年、2巻は昨年で、3巻が今年の発刊のものを今年になって初めて、まとめて読みました。1巻の表紙が耽美な池ちゃん、2巻の表紙が寄生獣みたいで、「なんか気持ち悪そうな漫画だな」と思ってちょっと敬遠していました。

女子高の国語教師を務める30代の星先生(♂)の日常もの。

読んだイメージを雑に喩えると、『動物のお医者さん』の高校教師版です。1巻表紙の星先生がハムテルで、思春期で言動の予想がつかない女学生さんたちが動物たちの代わり、みたいな。抱腹絶倒というよりジワジワくる系の日常ギャグコメディ。

舞台喜劇っぽいというか、どこか大正浪漫みたいに浮世離れした優雅で耽美な、「女子高生」ではなく「女学生さん」と呼びたくなるレトロな雰囲気がありますが、令和の現代劇です。萌え漫画ではないですが、自分は古森さん好き。

『女の園の星』2巻より(和山やま/祥伝社)

作者がおんどれの描いたキャラについて自ら「寄生獣っぽくて怖い」と思っててジワジワくる。

 

 

★★★★★

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「本屋大賞」受賞作小説のコミカライズ。

いじめで登校拒否になり部屋で引き篭もっていた女子中学生が、鏡の中の世界に引きずり込まれた先の西洋風の城に7人の登校拒否の中学生を集められてて、主催者はデスゲーム的に宝探し競争をさせたい意向だったけど中学生たちはマイペースにゲームをしたり談笑して過ごす…というファンタジー空間の話。

映画『シン・ウルトラマン』を観に行って作品と主題歌にいたく感銘を受けて帰宅して読んだのがこの漫画の最終巻だったので、3者の印象が切り分け難く、ごっちゃになったのでまとめてレビューしました。未だに自分でも何に対して★5をつけたんだかよくわかりません。

『かがみの孤城』5巻より(辻村深月/武富智/集英社)

米津玄師の『M八七』、映画のテーマにジャストフィットして素晴らしかったですが、歌詞が「米津、『かがみの孤城』読んで『M八七』の歌詞書いた?」って思うくらいシンクロしてました。

この3作品の後、しばらくの間「痛みを知ること、強くなること、誰かに与え助ける側になること」についてずっと考えていました。

 

 

★★★★★

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評判を聞いて今年になって全巻まとめて読みました。

現代日本を舞台に、幼馴染の魔女の少女と鬼の末裔の少年が再会し、仲間を増やしながら悪の脅威と戦う、異能ファンタジーバトル学園ギャグコメディ日常モラトリアム同居ラブコメ。

およそ少年漫画雑誌に載ってる漫画ジャンルを一作品で全部やってしまおうという欲張りセットですが、なんでか破綻なく面白く成立しちゃってる怪作。

迫り来る黒魔女の脅威はいったん置いといて、とりあえず日常ギャグコメやラブコメをやっていきます。という。

『ウィッチウォッチ』6巻より(篠原健太/集英社)

バトル漫画やスポーツ漫画の「人気キャラの日常や関係性の深掘りをもっと見たい!」という需要は昔からあって、それを充足するための二次創作がたくさん生まれてきたわけですが、「需要があるなら最初から自分で本編で描けばよくね?」ってそりゃ理屈はそうなんですけど、YAWARAちゃんじゃあるまいに「バトル描いても一流、ギャグ描いても一流、日常コメディ描いても一流、可愛い女の子とラブコメ描いても一流」みたいな便利な漫画家がいたら苦労しねえんですよ!

あ、いたわ。

一芸突破の天才型というより歴戦生き残り型というか、引き出し多すぎてビビる。

Wikipediaによると「美大出身で『銀魂』作者が師匠」とされてて「銀魂か、なるほどなー」と思いますが、師匠が5歳も歳下なのちょっと面白いね。

 

 

★★★★★

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駄オタクの日常あるある系エッセイ漫画で『ハンバーガーちゃん』と同じセグメントの作品ですが、作者変われば着眼も切り口も変わって、読み味は全然違います。

でも勤め人をメンタルの不調で退職した後にTwitter経由でKADOKAWAから商業作家になった経歴は共通してます。

Twitter発らしいキャッチーな1ページエッセイ漫画集ですが、悲しくて共感される話の方がバズるけど、敢えて楽しい話に絞って描きたい意向なんだそうです。自分がしんどかったときに、ネットの「笑い」に救われてきた、その恩返しなんだとか。

『楽しいことしか起きない!福田ナオのわくわくインターネット生活』より(福田ナオ/KADOKAWA)

こんな美しい漫画家志望理由、あります?

本編の楽しさ面白さもさることながら、前述の自分の中の「痛みを知ること、強くなること、誰かに与え助ける側になること」ブームもあって大変感銘を受けました。

米津、『福田ナオのわくわくインターネット生活』読んで『M八七』の歌詞書いた?

 

 

★★★★★

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5編の連作短編を収録した玉置勉強の短編集。

家庭不和、難病、ペットの死、中毒、死、いじめ、貧困、レイプ、メンタルヘルス、毒親、セックス、事故と障害、逃避、別れ、追憶、雪、などが彩る彼らの散文的な人生の断片。

暗くて重くて無常、いかにもセールスも伸びなさそうな漫画ですけど、自分は割りと好きみたいです。

漫画のようには愛し合えなかった彼らの愛の話。の漫画。

『玉置勉強短編集 ザ・ドラッグス・ドント・ワーク』より(玉置勉強/ MeDu COMICS)

嬉しかったことも悲しかったことも、最後には降る雪がすべてを真っ白に覆い隠してしまう。

中原中也の『生い立ちの歌』や『汚れつちまつた悲しみに』の、玉置勉強なりのコミカライズだったのかもしれないな、と思います。

 

 

★★★★★

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ボーイ・ミーツ・ディスティニー、まるで1本の映画のような1巻から始まった超正統派・超本格派ファンタジー。書物を守るために魔法と技術を駆使して戦う司書たち。

2〜3巻の司書試験編が終わって、現在は司書見習い編。

戦争の災禍から立ち上がりつつある世界を舞台に「知識と経験の蓄積が生む知恵が、いつか争いを無くせるはずだ」という理想が隠れたテーマになっている作品で、現実世界で起こる戦争・紛争のショックに直撃されやすいテーマ。

自分たち自身の持つ、怒り・憎悪・差別感情に振り回され戸惑う若者たち。

こんな時こそ、知の番人たる大人の司書の出番です。

『図書館の大魔術師』6巻より(泉光/講談社)

「漫画の師匠キャラ100選」とか、やってみたいですけどクッソめんどくさそうなので、誰かやってないかなと思ってググったらランキングがありました。

ranking.goo.ne.jpちょっと思ってたのと違うというか、「アニメ史上」とは言え月影先生が入ってないのはさすがに…とは思いますが、他人の作ったランキング、しかも投票形式のものが「ちょっと思ってたのと違う」のは当たり前です。

文句をいうくらいなら自分でやりま…クッソめんどくさそう…

 

 

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離島の女子高生が漫画を愛し、漫画に憧れ、漫画を描き始め、仲間を集めて漫研を立ち上げる、「漫画家もの」で「女子高生部活もの」。

『げんしけん』と流れは似てますが、あっちがオタクの青春とモラトリアムに振っていたの対し、こっちは漫画愛と情熱で寄り切っていくスタイル。

顧問と仲間を集めて部を設立し活動を立ち上げる「部活もの」の王道展開、『まんが道』もかくやという漫画への憧れを、シンプルな展開とシンプルな絵と軽妙なコメティ展開に、力強い感情表現とおどろおどろしい情念を込めて。

恥も摩擦もまったく怖れない力強くストレートなセリフと感情表現。

『これ描いて死ね』1巻より(とよ田みのる/小学館)

1巻早々に作中で主人公の師匠が

「『これ描いて死ね』などと漫画に命を懸けないこと」

とか言ってて、ちょっとしたタイトル詐欺というか、

もう恋なんてしないなんて 言わないよ絶対

「もう恋なんてしない」より(作詞:槇原敬之)

を思い出してしまってちょっと可笑しい。でもそのうち言っちゃうんだろうな。

 

 

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8年間314話に渡ってヤンジャンの看板作品として連載、現時点で四期に渡ってTVアニメ化、アイヌの隠し財宝を巡って明治40年前後の北海道を舞台に、本当にたくさんのキャラが人生を背負って争い死んでいった冒険大活劇の最終巻。

『ゴールデンカムイ』31巻より(野田サトル/集英社)

本来、文芸や映画のお作法に従えば作品の評価は完結してから下されるべきなのかもしれませんが、完結まで数年かかる連載漫画はそうもいきません。

連載途中の早い段階から様々な漫画賞を総ナメにしてきたせいで「同じ作品に2回も賞をあげるのもねぇ…」という事情からか、見事に完結した今年のこの作品に対して、各漫画賞の反応がむしろ冷淡にすら見えてしまうパラドックスが起こっています。

勿論「次にくる〜」はともかくとして。今年は日本漫画家協会賞大賞を受賞。

おそらく作者も「自分が受賞する番はとっくに終わってる」と納得しているだろうし、漫画は作品であると同時に持続性を持つ商品でもあるので、「これから」の作品を発掘して応援し、イベントとして盛り上げる意義はとても大きいです。

高名な文学賞でも、ノミネートされるのはトップ・オブ・トップの作品ではなく「まだこの賞を獲ってない人」の中から選ばれることは珍しくなく、サッカーのバロンドールを同じ人が7回も受賞するのとは仕組みが違います。

まあ、胸を張って「ゴールデンカムイは面白くなかった!」「こっちの方がゴールデンカムイより面白かった!」と言うのも、勿論それも一つの見識ですし、そもそも他人が作ったランキング、他人が語る感想なんて、納得いく方が希少ですから。

なお見事な完結を見せた『ゴールデンカムイ』には、2022AQM漫画賞(完結部門)を贈呈します。

おめでとう。長い間、面白い漫画を読ませてくれてありがとう。お疲れ様でした。

 

 

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4~6コマの変則ページ、フルカラーで絵本みたい。人間に化けて暮らすのたぬき一家、主人公はたぬき妹"ふみ"になろうかと思います。ふみの友達のキツネ女子、ネコ女子、コウモリ女子との学園生活など。

日常コメディ漫画ですがネタのジャンルは幅広く、家庭・家族あるあるネタから学園あるあるネタ、ネットやSNSを舞台にした時事風刺ネタ、果ては宇宙人が登場したりタイムスリップしたり並行世界が出てきたりするSF要素から絵の中の世界に閉じ込められてしまうファンタジーまで、ある意味ドラえもん以上に面白ければなんでもアリな感じ。

『ぶんぶくティーポット+』6巻より (森長あやみ/まんだらけ)

「職人肌」なのか「天才肌」なのか未だによくわからない、「その発想はなかった」というネタの飛び方も良いんですけど、いわゆる「萌え絵」の文脈とは異なりながらもキャラがみんな可愛いです。りさちゃん大好き。

女子高生たちが主人公の日常コメディ、というのもド定番なんですけど、むしろその親世代や学校の先生たちもチャーミングなキャラばかり。

来年も再来年も、出れば出ただけ新刊買います。

 

 

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ゲームセンター、特に格闘ゲームに小〜高の青春を捧げた少年少女のボーイミーツガールを描いた「ハイスコアガール」の、内容以外に作品のメタにもトラブルに見舞われ紆余曲折ありつつ大団円にたどり着いた名作の、まったく予想もしてなかった続編。

舞台はあれから10年以上の後、前作でサブヒロインながら健気に一生懸命、報われない恋をしていた日高小春も28歳に。母校である中学校の教師を務め、そして鬱屈していた。

『ハイスコアガール DASH』3巻より(押切蓮介/スクウェア・エニックス)

理想通りにいかない教師生活の鬱屈と、それを格ゲーで吹き飛ばすカタルシス、という作り。

ブログのサーチコンソールを見ると、検索ワード「ハイスコアガール DASH つまらない」で検索してうちのブログにたどりつく人も割りといるようです。

自分は「ラブコメで失恋するサブヒロイン」が好きなので、10年後の日高小春が何を見つけるのか、とても興味深いです。

この作者をして今年は『ジーニアース』が打ち切りの憂き目に遭ったので油断はできませんが、俺がずっと戦闘体勢でいればどうにかなるもんでもねーしな。

 

31本目

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いくえみ綾の現作。表紙のルックスはマーガレットコミックスですが連載は「ココハナ」とのことで、アラフォーな主人公2人の少女漫画とも恋愛漫画ともつかぬ作品。

園田れみ(39♀)は夫と死別して実家の一軒家で母と中学生の娘と3人暮らし。仲の良いお隣の、同い年の幼馴染・松宮季(とき)(39♂)が離婚で婿養子先から出戻ってくる。

不本意な離婚で傷心の季。そんな彼を、再開したご近所づきあいと昔からの腐れ縁で見守るれみ。回想される幼少期から青春期の思い出。

バツイチと未亡人の幼馴染の組み合わせですが、恋愛・ラブコメ作品というよりも時勢にキャッチアップして「中年独身」にフォーカスしたテーマが設定されているように見え、『僕ヤバ』の未満恋愛とはちょっと事情が異なるように見えます。

『1日2回』3巻より(いくえみ綾/集英社)

北方謙三の歴史小説は、描きたい人物について何冊にも渡って延々描く反面、描きたいことを描ききったり、描きたい人物が全員死んだりすると、ぶつ切りで作品が終わったりします。諸葛亮が死んだら次のページでエピローグ行って終わりです。

え、蜀は?魏は?司馬懿は?その後どうなったの?晋ってなあに?

いくえみ綾もちょっと似たようなところがあって、キャラの心象の機微を丁寧に描写していく反面、キャラが和解したり成長したりする僅かなサインが実はクライマックスだったりして、そのサインを見逃してるうちに翌月いきなり(に見える)完結したりして、油断ができません。

ビジュアルからも作劇からも綺麗で繊細なイメージを受けますが、

「描く方が丁寧に描いてんだから、読む方も丁寧に読め」

と言わんばかりのオレ様作家ぶりがなんか北方謙三みてえだな、と思うことあります。

3巻で季の心の問題、れみがその理解者であることが割りとはっきり描かれました。

もうちょっと何冊か読みたいんですけど、試しにググってみたら既に連載完結してました、とかだったらヤダなあw

 

 

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黒髪おさげで八重歯で面倒くさがりで何でも麺つゆで食う女・面堂 露(めんどう つゆ・26歳独身)、略して"めんつゆ"がヒロインのお料理・グルメ4コマ。

可愛い、見やすい、わかりやすい、美味しそう、参考になる、とても楽しい、とお料理4コマ漫画の要件を完璧に満たしてる作品。王道ネタも面白いのと、最近めっきり女子高生に占拠された4コマ界において、チャーミングな社会人女性たちを描き続ける漫画家さん。

『めんつゆひとり飯』5巻より(瀬戸口みづき/竹書房)

王道4コマとして楽しみつつ、(いわゆる「きらら系」ではないんですが)キャラ萌えも楽しめるという、一粒で二度美味しいタイプの作風。

掲載誌だった4コマ誌「まんがライフ」は今年休刊してしまい、本作もWEB連載に移行しましたが、そんな騒動をよそに、当代有数の4コマ漫画の名人が静かに円熟期を迎えつつある、そんな印象。

なんだか大仰で偉そうな文章ですね。何様のつもりなのか。

 

 

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「ラーメン発見伝」の続編の「らーめん才遊記」の更に続編の現作。

シリーズ未読の方にものすごく雑に説明すると「ラーメン版『美味しんぼ』」みたいな作品群。ベタな人情噺にうんちくを絡めてラーメンハゲがズバリ言うわよ!

ライバル役・師匠役だったラーメンハゲがドヤ顔でシビアな名言を吐く姿が作品人気を超えてネットミームとして広く知られていますが、そのラーメンハゲがとうとう主人公になった、その5巻。

相変わらずラーメン食って毒を吐く、『ナウシカ』の腐海の樹々みたいな生き物で、これはあの、ラーメン界の毒を結晶化することで空気をきれいにし生き物が住めるようにしてくれたりしてんですかね。

『らーめん再遊記』5巻より(久部緑郎/河合単/石神秀幸/小学館)

建て付け自体はオーソドックスなコンサルもので、創り方も解決策から逆算して課題(=エピソード)を捻り出してる感じですが、扱うテーマがみんな大好きラーメンの時点で得してるのと、ラーメン文化への造詣が深くうんちくに読み応えあります。

「ちょっとしたラーメン文化批評になっている」とまで褒めるとその筋の誰かに「素人がわかったようなことを言うな」と海原雄山のように怒られそうなのでやめときます。

 

 

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高校入学でのガール&ガール・ミーツ・ガールで立ち上げた映像研を舞台にしたクリエイター青春グラフィティ。

女子高生の部活ものと言えばゆるふわ日常コメディが大勢を占めていた中で、ハードボイルド風味のガチ系クリエイターものとして異彩を放ち、中興の祖としてジャンルを活性化させました。

『映像研には手を出すな!』7巻より(大童澄瞳/小学館)

ガチ系クリエイターもの漫画は『まんが道』の昔からたくさんありますが、キャラの葛藤や苦悩、成長をドラマとして描くことに重点を置いて、「キャラが創っているモノ」の中身には描写が割かれないことがよくあります。

『ヒカルの碁』方式、と呼ぶとちょっと『ヒカルの碁』に悪い気がしますが、囲碁のルールがわかんなくても『ヒカルの碁』を楽しめるように、なに創ってるかよくわかんなくても「クリエイターもの」漫画を楽しませることは可能です。

だけど『映像研』は、なに創っててどこで悩んでるのか、人間ドラマの作劇上はたぶんあんま要らない、作中作もその設定資料とかもびっしり描き込んじゃう、始祖(?)『まんが道』方式。

人間関係のドラマ以外にも(むしろそっちの描写は希薄で)、モノ創りのメソッドや壁や打開方法を具体的に語ることそのものが面白いのと、なんだか自分も仲間の一人として彼女たちと一緒に成長しているかのような錯覚を読者に起こさせる、面白い効果が生まれています。

作中作の作り込みはマトリョーシカのようなもので、労力は二作品分なのかもしれませんが、生活のためより好きでモノ創るような奴にとってはあんま苦にもならなそうですね。

 

 

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資産家の御曹司で大学生の「ご主人」の一人暮らしマンションには、契約派遣メイドの「メイドさん」が住み込んでいて実質二人暮らしだった。若く美しく仕事もできるメイドさんだったが、ローテンションでクール無愛想無表情でヘビースモーカーで、勤務時間を過ぎると一切仕事をしないビジネスライクでドライな性格だった。

が、ローテンションなご主人とは波長が合っていた。という日常コメディ。

『◯◯なメイドさん』1巻より(鮭乃らるかん/芳文社)

この記事で並べた他の作品と比べると知名度とスケール感で及ばなく見えるかもしれませんが、自分はこの漫画大好きなので。

具体的にいうと、美人でクールで有能でローテンションなメイドさんが、勤務時間が明けるとパーカーに咥えタバコでその辺うろうろしてたり、たまに無言でキレてご主人様をジト目で睨みつけてきたりするのが性癖に刺さります。

キリッとした有能クールな女がオフはジャージでだらしないとか、オンオフの切り替えギャップとかベタだけどみんなも好きだよな。真冬先生とかよ。

 

 

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迷宮の主"狂乱の魔術師"によって竜にされた妹・ファリンを追って、冒険者ライオス一行が途中で倒したモンスターを美味しく調理して食べながら下層を目指してダンジョンを進んでいく、RPG世界観の空想グルメ・ファンタジー。

変わり種ファンタジーの中興の祖?「モンスターを料理して食う」というインパクトが強く、またそれが話題になって1巻出オチみたいなブレイクの仕方をした作品ですけど、もともとこの作者の持ち味はストーリーテラーなとこだったよな、といつの間にかストーリーも佳境に。

『ダンジョン飯』12巻より(九井諒子/KADOKAWA)

作品も大詰め、エヴァみたいなベッタベタのセカイ系展開ですが、ライオス達があくまで食事で喩えて考え、食事を作り食べ、食事を絡めて戦う、どこまで行っても『ダンジョン飯』なのがまた良いですね。

あのヒアリングを経てなんでソレができるんだよwww

逆になにがどうなったらこの作品のバッドエンドなのかを考えると、ライオスたち全員が誰かに美味しくたべらr

 

 

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陽キャでギャルノリで楽しく学校生活を送る女子高生・鈴木は、その実、空気読みで周りの目を繊細に気にしていた。

隣の席の、黒髪クールメガネで無口で塩対応な谷くんのことが好きだったが、素直に好意を表せるわけもなく、陽キャノリの無茶振りイジりでしか谷くんに接することができずにいた。

そんなある日、学校の帰り道が偶然一緒になったことをきっかけに、鈴木と谷をめぐる景色は一変する。

という、青春恋愛もの〜青春ラブコメの間のどこかに位置する作品。

『正反対な君と僕』1巻より(阿賀沢紅茶/集英社)

「作者的にはともかく、集英社的にこれを載せるのが『りぼん』じゃなくて『ジャンプ+』でいいのかな」

とちょっと思いましたが、よく考えたら俺が心配することでもない、余計なお世話だなと思いました。

人間関係をより日常レベルで小まめにメンテし続けること、

「いつか相手にふさわしい自分になる」ではなく「相手にふさわしい自分で居続ける」こと、

そのために自分をバージョンアップし続けること、

「これでヨシ終わり」ではなく「相手のことをリアルタイムで考え続ける」こと、

最近の恋愛漫画は昔と比べてキャラの頭が良くなってて小気味良いなと思います。

細かい日常コメディ描写にも「異カースト間コミュニケーション」というより「カーストなんか実はないんだよ」みたいな勢いと、恋愛感情のポジティブで等身大のキラキラ感の表現に華があって、良いですよね。

 

 

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大学生の男2、女3の男女5人が部屋にタムロして就職活動から目をそらしつつ酒飲んでバカ話しながらゲームしてだらしないカッコで雑魚寝したりする、全体的に暇すぎるモラトリアム日常漫画。完結しました。

実は美大ものだったんですが、クリエイター成長物語要素は『ブルーピリオド』あたりに全部あげちゃった、みたいな美大もの漫画。

青春クリエイター要素を誰かにあげちゃった残りでこの漫画が何をしてたかというと、7割方セックスの話してんですけど登場人物が誰もセックスしないという、登場人物も読者も含めて誰も得してないようなモラトリアム作品のまま、なんの事件も起こらず、卒業すら描かれず、「再来月ぐらいに10巻が出るんじゃねえかな」ぐらいのユルさで終わりました。

最終話は「おっぱいみたいなキノコの写真をスマホで見せたつもりが自分のおっぱいの写真を見せていた」という本当にくだらない話でした。

『惰性67パーセント』9巻より(紙魚丸/集英社)

くだらなくてしょーもなくて、とても居心地の良い漫画でした。

でも残り33%は結局なんだったんだよw せめてそれぐらいは描けよwww

 

 

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aqm.hatenablog.jpスーパーの2番レジ係の清楚で明るい笑顔で接客してくれる店員・山田さんと、スーパー裏の喫煙所でタバコ吸いながら雑談してくれるワイルド系お姉さん・田山さんが、同一人物であることに気づかないままスーパーに通うサラリーマンのおっさんの話。

『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』1巻より(地主/スクウェア・エニックス)

この作品をブログ記事で評するにあたって「マスカレード」なる造語をこしらえて、ブコメでも「良い命名だ」と割りと賛同していただいた割りに「マスカレード」まったく普及しなかったなというか、そんな造語を作ったことを今の今まで自分でも忘れてました。マスカットっぽいのでたぶん葡萄になにか関係がある。

最近は「関係性の描写の機微」の解像度が上がって、安易に「百合」とか「未満恋愛ラブコメ」とかレッテリング(そんな日本語あるんですか)すると、お叱りを受けることがあって、気を使います。

この作品も「未満恋愛ラブコメ」と呼んだものかどうか。特に男が歳上の歳の差ものは、男の側に性愛の気持ちがあるかないかで、作品のニュアンスそのものが変わってしまうので、作品の「未満恋愛」判定の陽性・陰性はセンシティブなポイントです。

あと、前述のとおり自分は女のオンオフ切り替えのギャップ萌えと咥えタバコの女萌えで性癖ドストライクなので。なので何?

ちな年明け1月に2巻が出ます。

 

 

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1213年、ペルシア(現イラン)で奴隷として売られていた少女・シタラは、温厚な学者一家に引き取られ、学問を学びながら穏やかに暮らしたものの、その8年後、モンゴル帝国の西征により虜囚として遥か東方の帝都に連れ去られる。シタラは復讐心を胸に秘めつつ、虜囚の身から「知」を武器にモンゴル帝国宮での立身出世を図るのだった。

という、史実ベース、史実の人物の伝記フィクション。

『天幕のジャードゥーガル』1巻より(トマトスープ/秋田書店)

主人公の「数奇な運命」をエピソード取捨選択してテンポ良くグイグイ読ませる展開や、シンプルで見やすい画風も相まって、60年代の劇画ブーム前の「古き良き少年漫画」の香り、ぶっちゃけテーマも相まって手塚治虫の『火の鳥』が現代ナイズされたような印象を持つ作風。

お話は始まったばかりでまだまだこれからですが、そもそも伝記というのは志が高いというか作家の意欲が強いことが多い印象で、本作は更に時代や地域、主人公の選定がパイオニア精神に満ちて野心的です。

検索ワード「ジャードゥーガル 意味」で検索してなぜかうちのブログに迷い込んでくる方が少なくない人数いらっしゃいましたが、なんの役にも立たなくてすみません。私は知りません。

 

41本目

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長かったB級ランク戦が終わって、作品の縦軸たる近界への遠征、その選抜試験。

閉鎖環境試験自体は今のところ『宇宙兄弟』の序盤でやったアレにSPI試験とグループディスカッションとグループワークが付いてる、というものです。あれを同時に十数チーム、60人前後が同時にやってるだけ…だけ?

大量のキャラクター1人1人に細かい人格設定付けされた本作ならでは、という感じはします。

宿題やってゲームして、一見は子どもの夏休みみたいw

『ワールドトリガー』 25巻より(葦原大介/集英社)

『宇宙兄弟』にしろ『ワートリ』にしろ、SPI試験とグループディスカッションとグループワークやってるだけで面白いなら、別に『ワートリ』じゃなくて普通の企業の採用試験サバイバルを漫画にするだけで面白いんじゃない?という気もします。

たぶん葦原大介と同じ能力を持っている漫画家が描けば「普通の企業の採用試験サバイバル漫画」でも十分面白いだろうとは思いますが、本人以外にそんな漫画家はいません。

描写が精緻すぎた引き換えに物語の縦軸が遅々として進まず、完結前に読者が亡くなったり未完に終わってしまったりした作品もありますが、じゃあ「もっとダイジェストに描いてとっとと話を進めよう」ではこの作品の魅力は8割減で本末転倒なので、作者も読者も健康に気を遣ってこの先の数十年を長生きしましょう、という感じ。野菜。

 

 

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ブラック企業を退職した社 珠子(やしろ たまこ)が人づての紹介で次の職場として採用面接を受けたのは、猫と虎の店員たちが営む「ラーメン赤猫」だった。

飲食店を舞台にした人情噺中心の日常ものは漫画に限らずTVドラマでもある意味定番ジャンルですが、本作は猫が人語を解し話しラーメンを作りラーメン屋を経営するお店日常もの。狂言回しヒロインが人間ということもあり、日常ものが自然、異種間コミュニケーションのお話に。

『ラーメン赤猫』1巻より(アンギャマン/集英社)

この1巻の発売日は10/4だったんですが、個人的には豊作の月で、この日はジャンプコミックスを11冊買いました。うち8冊がジャンプ+連載作品でした。

原稿料が支払われず広告収入頼み、単行本も出ない、というジャンプ+のインディーズ枠から、あまりの人気に正式連載枠への昇格を勝ち取った異色作。

(追記)

すみません、ジャンプ+のシステムについて認識間違いがありました。

ご指摘いただいたブコメの引用で訂正に代えさせていただきます。

2022年に読んで面白かった漫画 53選 - #AQM

ひとの感想を読むのはたのしい/ジャンプラインディーズ連載、原稿料はありますよ→ <a href="https://www.shonenjump.com/p/sp/indies/" target="_blank" rel="noopener nofollow">https://www.shonenjump.com/p/sp/indies/ 広告収入が作者に還元されるのみ、はインディーズ連載への門である投稿サイトのジャンプルーキーですね

2022/12/31 07:16

b.hatena.ne.jp

(追記終わり)

作品のメタ情報もちょっと夢があっていい話だな。

 

 

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あらカワイイ表紙。

女子高生・ルリは、ある朝目覚めると頭から2本のツノが生えていた。

登校したルリは、そのツノを周囲にゆるく驚かれつつ普通に授業を受けていたが、くしゃみのついでに意図せず爆炎を吐いたりした。が、周囲はゆるくなんとなく、そんなルリを受け入れているのだった…

カフカの『変身』では巨大な毒虫に変身してしまったグレゴールが社会にも家族にも受け入れられない様が描かれましたが、本作ではグレゴールに起こらなかった「異物に対する、社会や家族からの受容」が、緩くて優しい日常もの風味で描かれます。

『ルリドラゴン』1巻より(眞藤雅興/集英社)

クラスメイトたちが未知への怖れよりも、子どもらしい好奇心で未知を埋めていく方に概ねフォーカスされる、「優しい世界」中心の話。「人間社会に紛れ込んだドラゴンとのハーフ」の日常がポジティブに。

「多様性」「ダイバーシティ」など硬い言葉は既に存在していますが、それらの言葉のコアの「柔らかいところ」を柔らかいままに描くことが功を奏して、「自分と異なる存在」「未知の存在」を知り交わることの楽しさ・美しさが押し付けがましくもなく、読みやすく。

10月に1巻を読んだ際に記事で無神経に「続巻が楽しみ」と書きましたが、作者は体調不良で夏以降、無期限休載中とのことです。

もし健康の回復と引き換えにできるなら、もう2巻は描かれなくても構わないぐらいですが、1巻はその一冊だけでとても面白かったです。

どうかお大事に、ご自愛ください。

 

 

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19世紀の中央アジアを舞台に、エピソードごとに主人公が移り変わる「夫婦」「嫁入り」をキーワードにした群像劇として続いて12年目の14巻。カメラは再びカルルクとアミルが暮らすエイホン家(町の民)、及びアミルの実家であるハルガル家(草原の民)に。

『乙嫁語り』14巻より(森薫/KADOKAWA)

抗ロシア同盟の命運と、アミルの兄・アゼルの嫁取りを賭けたキャノンボール開催だぜ!ヒャッハー!

「私が欲しければ私を倒して見せろ!」を地でいく、草原の民のおおらかでワイルドでダイナミックで物騒でワッショイな集団お見合い。

勇壮な代わりに雑なようでいて、親の子に対する意外と細やかな愛情や責任感、一目惚れに近い男女の恋情の機微が仄見える上に、大規模なキャノンボールから結婚の祝宴までが壮麗に描かれて見応えのある楽しい巻。

新キャラが複数登場しますが、出てくる奴がどいつもこいつも「力こそパワー!」というか馬のことしか考えてねえというか念の六系統で言ったら全員たぶん強化系。

 

 

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あなたの記憶が、いまのように「自然と薄れて忘れていく」ものではなく、脳がパンクしないように「自分で選んで消していく」必要があるものであったら?

しかもあなたが、愛し愛された記憶のそのどれをも消したくないと望んだら?

幸いあなたは、たまたま人間なのでそんな心配は不要なんですが、もしあなたが実は人間ではなく、人間に限りなく近いロボットだったとしたら?

人間らしい選択、ロボットらしい選択、というよりも「あなたらしい選択」が必要なのかもしれません。しかし、その「あなたらしさ」もまた、記憶によって支えられています。

『宙に参る』3巻より(肋骨凹介/リイド社)

相変わらず淡々としたSFですが、ヒトとロボットの垣根を超えた自我の実存に対する、「SFらしい」というより「SFならでは」のドラマティックな問いかけも、相変わらず通底しています。

消すことを選べない愛された記憶を溢れんばかりに抱えたせいで、笑って生が終わっていくんだとしたら、それは少し哀しい代わりに最も幸福なことなんじゃないか、と考えてしまいます。

 

 

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勤勉ながらデザイナーの仕事に適性を見出せず、東京から地元の静岡にUターン転職した有野りん子(27)。

仕事をバリバリこなしメロンパンも肉まんもバリバリ食って「メロンパンはそんな音しない」と周囲を心配させる学級委員長タイプの女を待っていたのは、東京と地方の価値観のギャップと懐かしい「しぞーかあるある」だった。

なんだか可愛い静岡ご当地社会人4コマ。

『ローカル女子の遠吠え』9巻より(瀬戸口みづき/芳文社)

この漫画目当てに「まんがタイム」の電子書籍定期購読始めてしまった。

主要キャラはおおよそ立派な社会人のアラサーたちで「女の子」「男の子」って歳でもないんですけど、女の子も男の子も読んでてみんな可愛いんですよねw

じゃあここで突然ですが「AQM Award 2022 『ローカル女子』で好きなキャラ部門」、ベスト5を発表します。

 5位:雲春くん いろんな意味で羨ましい 生まれ変わったら雲春くんになりたい

 4位:穂垂主任 かっこいい大人の女だけど年下の部下に片想いしてて可愛い

 3位:江崎さん DV離婚のバツイチだけど明るく育児も仕事も頑張ってて素敵

 2位:ハッチ 他人思いで健気可愛い 幸せになってほしい

 1位:水馬さん コンプレックスと挫折を乗り越えて自分を富士山バカに育てて幸せになってるのが素敵可愛い

なお、りん子さんは殿堂入りのため対象外です。

ではまた来年、「AQM Award 2023」でお会いしましょう。

 

 

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ファンタジーRPG世界観のダンジョンをソロで探索していた女シーフが、ひょんなことからダンジョンマスターからスカウトされ、ダンジョンのスタッフとして働く、変化球ファンタジーもののお仕事漫画。

特異な設定を転がして常識人の主人公がツッコむ、基本的にコメディ進行。

凄腕シーフ・クレイの、その雇い主となった実はダーク・シュナイダー級の魔導士でダンジョンマスターながら、ポンコツ生活力の少女・ベル。

レギュラーで登場する主要キャラも3人と少なく、舞台も一つのダンジョン内に基本的に閉じていて、決して壮大な世界観ではないですが、箱庭的というのか、作者の想像力がよく働いた設定で、うんちく読んでるだけでも楽しい。

『ダンジョンの中のひと』3巻より(双見酔/双葉社)

作者がゴブリンの飼育と繁殖について思索した末の合理性。

可愛らしいヒロインのベルですが、彼女が人間を殺害するシーンが作中では今巻で初めて描かれました。ほのぼのゆるふわ進行ながら無双演出もあって死生観がちょっぴり狂ってる漫画です。

彼女の役割は実質「魔王」ですが、むしろ超越し触る者を裁き褒美や罰を与える「神」に近いイメージ。作品自体、下界を見下ろしていた孤独な神が人間の友を得た話、という作品なのかもしれない。

と、呑気に構えてられるのも、ヒロイン2人を脅かす力を持つ者が今のところ登場しないからなんですが、たぶん今後も登場しないでしょう。

 

 

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今巻は『トニカクカワイイ』の過去回想エピソードのテイを借りた、畑健二郎による『竹取物語』のリメイク・コミカライズ。一応、脇役として司さんも出るよ。

昔からSF解釈(SF妄想)がされやすいおとぎ話で、今作も詳細はボカしたSF展開でそんなに物珍しいものではないですが、さすがラブコメ屋さんというか、かぐや姫の悲恋、恋に落ちる男女の情交の機微の美しさや、それを失う哀しさがとても丁寧に情緒的に描写されます。

ラブコメ漫画家に今更こんな感想も大変失礼な話ですけど、誰でも知ってるラブストーリーをこんなに美しく描ける作家だったんだ、と思いました。

『トニカクカワイイ』22巻より(畑健二郎/小学館)

著名な恋愛漫画家・ラブコメ漫画家に、世界中の有名なお伽話をリメイク・コミカライズしてもらう短編アンソロジーとか読んでみたくなったのでどっかやれよ。

でもこのエピソードを受けて、『トニカクカワイイ』でどこまで回収というか、アレするんだろう。『トニカクカワイイ』が突然『宝石の国』みたいになっても、それはそれで困るw

 

 

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怪作です。今巻で完結。

表面上のストーリーは女子高生がダンスに魅了されダンス部を立ち上げ、仲間を集めつつ、ダンスの高みを目指す作品です。ただ、地方大会・全国大会・世界大会と駆け上がってライバルたちと切磋琢磨したりは全然しませんでした。

ストーリー、というより描かれるダンス描写に付随して語られたのは、ダンスの起源が神事における「神話の再現」であったことを契機に、「神とは何か」「人間とは何か」「個とは、自分とは何か」というテーマです。ダンスの他、宗教・哲学・格闘技・セックスとも絡めて思索されます。

神と人、自分と他人、個の孤独、一つになりたい。

高校の部活のダンス部です…

ジャンル的にもビジュアル的にも『ワンダンス』と比べられるべき作品ですが、向いてる方向が違いすぎて比べる気になりません。内容的にはむしろ『シメジ シミュレーション』かいっそ『火の鳥』と比べて論じたくなる。

『ムラサキ』5巻より(巌男子/LINE Digital Frontier)

自分には理解が及びませんでした。でもなんか、凄かった。なんか、もの凄かった。

あとこれだけは自信を持って言えることとして、とても美しい漫画でした。

 

 

★★★★★

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この作品の信者なので完結したら★6を付けるつもりでずっと楽しみにしていましたが、この巻を含めて終盤に不満があったので★5です。でもAQMごときが★をいくつ付けたからといって、それが一体なんだというんでしょうか。

「第一部 完」で無期限休載した方がおそらくこの作品の評価は上がったように思いますが、負け戦になるとわかっていたはずの「四宮家問題の解決」は、逃げずに描かれました。早くケジメをつけて、どうしても漫画家を引退したかったのか。

そんなに漫画家が嫌になったのか、ウルトラマン。

この作品の縦軸がなんだったかと言えば、父親に愛されない(と思ってる)賢い女の子と、母親に愛されなかった(と思ってる)賢い男の子が、自力で愛を手にいれるお話でした。

そのために「告らせたい」の当初のタイトル・コンセプトはヒロインの「かぐや様」自身の行動によって裏切られ、「〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」のタイトル・コンセプトもまた、圭ちゃんの

『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』28巻より(赤坂アカ/集英社)

この悲痛なセリフで否定の形で最終的に回収され、そのことによって本懐を遂げました。それに比べたら、回収されなかった伏線や終盤の展開の覚悟の上の負け戦なんて、些細なことです。いや、些細ではないんですけど、そういう的なアレです。

ラブコメ漫画というジャンルを王様として長い間引っ張って、本当に楽しませてもらった作品。キャラクターたちが愛おしく、この作品が大好きでした。

どうやら恥ずかしくてもちゃんと表現しないと伝わらない愛が、あるらしいので。

 

51本目

★★★★★

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「お似合いですわ〜」って言う役のMOBからネームドに出世したマスメディア部のエリカ(尊かぐや派)とかれん(白銀×かぐや主義)の二人を主人公にした「かぐや様」スピンオフ4コマ。

本編と同時に完結で、本編のラストシーンを別の角度から描いたスピンオフがあるとしたら、それはもう拡張された本編の一部です。

赤坂アカは『かぐや様』『推しの子』(原作)の二毛作で連載してましたが、この『語りたい』にも深く関与していて、ヤンジャンのロースターのうち3枠を支える生活がここ何年も続いていました。

「もー漫画描きたくない!せめて作画だけでもやめたい!」

って、そら思うわな、という。

『かぐや様を語りたい』8巻(赤坂アカ/G3井田/集英社)

3年に進級してかぐや・白銀と同じくクラスになって、エリカとかれんがかぐやという偶像をクラスメイト、一人の人間として認知して友情と親愛を抱くまでに成長(これ成長か?)する様子が丁寧に。感無量です。

かぐやとアホ2人の直接の絡みの封印が、最終巻にしてようやく解禁。

最終巻が過去イチはっちゃけてて過去イチ面白い巻でした。

すげー良い仕事をしたG3井田先生の次作も、楽しみにしています。

 

 

★★★★★

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幼少期に起きたハイジャック事件でそのまま中東に拉致され、洗脳・訓練を受けてテロリストとして長年活動した日本人・島崎が、テロリストの拠点を脱走、30年ぶりに日本に帰国した。

支援と引き換えに公安警察に監視され、テロ組織からは粛清の手が伸びてくる中、島崎は浦島太郎状態の日本になんとか馴染もうと、喫茶店のバイトや漫画家のアシスタントとして働き、また日本文化の勉強を続ける。

というハードボイルドもの。

「抜け忍もの」というか「足を洗った殺し屋が一般人として生活」と雑に括る限りにおいては建て付け『ザ・ファブル』によく似ていますが、「戦場帰りが平和な日本で何を考え何を語るのか」の方に重点が置かれているように見え、『ペリリュー』寄りと言っていいかもしれません。

組織が「幻の殺し屋組織」から実在のモチーフを想像させる「国際テロ組織」に置き換わったことで、より血生臭く生々しい作品になりました。

「100ワニ」方式で島崎が1年後に戦場に復帰してしまうことが明記されている作品。

島崎が平和な日本で何を語り、何を思って戦場に復帰することになるのか。

『平和の国の島崎へ』1巻より(濱田轟天/瀬下猛/講談社)

そういえば『ペリリュー』の主人公の田丸も終戦後に漫画家を志し、『ファブル』のアキラも一般人として選んだ仕事はイラストを描く仕事だったんですよね。

画業って戦場帰りを惹きつける何かがあるのか、単に漫画家が描きやすいカタギの仕事ってだけなのか、実はやっぱり故・さいとう・たかを先生は元殺し屋だったりするのか。

 

 

★★★★★

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漫画の一大ジャンル「美大もの」の王様として大変評判だったので、未読だった昨年末に当時既刊たった11冊のこの作品を、「2022年中に読破しよう」とやや大仰に目標を立てました。

結局、読み始めたの一昨日ぐらいでした。

美大受験の高校編と、合格後の藝大編で、主人公のモチベや作品の持ち味がやや変わる作品ですが、13冊分イッキ読みすると、摂取できる情緒が高カロリーながら読んでて消費するカロリーも莫大で、読んでて疲弊する漫画。

エリクサーをがぶ飲みしながらずっとイオナズン唱え続ける人みたいになる。

『ブルーピリオド』13巻より(山口つばさ/講談社)

噂に違わぬ面白さでしたが、『スラムダンク』のような初心者青春サクセスストーリーの受験編が終わった後、藝大編に入って以降の、鬱屈した展開と芸術もの特有の自分探しの禅問答。

主人公(と読者)にストレスをかける、先が見えない展開と描写を作者が意図的に描き続け、特に一話ずつ細切れだと読んでる方もストレス溜まる漫画だよな、とは。通してまとめて読むと作者の意図や作品の方向性がなんとなーく見え(る気がし)ましたが。

毎月一話ずつ連載で読んで作品を支持し続けてくれた先輩方に感謝。

 

その他

★★★★

なんかいっぱいあるんでここから勝手に見てください。★5★4もたいして変わらず面白かったです。

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「なんで●●が入ってないんだ」と言われそうな漫画で言えば『ダンダダン』とか『【推しの子】』とか『SPY×FAMILY』とか『ぼざろ』とか『新九郎』とか『あかね噺』とか『チェンソーマン』12巻とか『ハンター』37巻とかが自分は★4でした。

理由はなんとなくです。

 

全体的に「WEB連載作品が元気」「クリエイターものが元気」なのは近年の傾向どおりながら、「毒親」の概念がポピュラーになったせいか「家族」をテーマにしつつも「母親を捨てる(関係を切断する)子ども」の印象的なシーンがいくつかの作品で目についたな、と思います。

 

スクロールしながら目視で何度か数えたんですが、数える度にたまに数が違ったりするので、本当は52選か54選かもしれません。すいません。

あとこの記事マジで推敲する時間がなかったので、スベってたりナルってたり好感度が下がったりする文章をそのまま垂れ流してるかもしれないので、後で部分部分を書き換えるかもしれません。いま深夜に書いたラブレターを間違って送信ボタン押しちゃった時の気持ち。

 

定期記録。

 

日付を遡ってブログ更新できるはてなブログの謎の仕様を利用して「毎日更新のふり」を未だに続けてるんですが、今年もブログ更新いっぱいサボりまして、12/8の時点であと65冊ぐらい漫画読んで記事書かなきゃいけなくなってて、今年はもう無理だと思いました。

信じれば夢は叶う。

来年は未だ未読の『正直不動産』あたりを全巻読みたいなと思います。

あと2〜3日前にブログのタイトルを「AQM」から「#AQM」に、ちょっとだけ変更しました。

 

じゃあ、おわりです。

来年も面白い漫画に恵まれますように。

 

よければ、あなたが読んで面白かった漫画の話も聞かせてください。

 

 

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