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あ、今日読んだ漫画

#ダンジョン飯 12巻 評論(ネタバレ注意)

迷宮の主"狂乱の魔術師"によって竜にされた妹・ファリンを追って、冒険者ライオス一行が途中で倒したモンスターを美味しく調理して食べながら下層を目指してダンジョンを進んでいく、RPG世界観の空想グルメ・ファンタジー。

変わり種ファンタジーの中興の祖?「モンスターを料理して食う」というインパクトが強く、またそれが話題になって1巻出オチみたいなブレイクの仕方をした作品ですけど、もともとこの作者の持ち味はストーリーテラーなとこだったよな、といつの間にかストーリーも佳境に。

『ダンジョン飯』12巻より(九井諒子/KADOKAWA)

こういう爺ちゃん達、『BASTARD!!』でおったな。「エウロペアの七賢者」でしたっけ?

激闘の果てに迷宮の主"狂乱の魔術師"を倒したライオスたち。しかしそれはカタストロフの始まりだった。

流れで新たな迷宮の主となってしまったマルシルの夢・野望・欲望は、"狂乱の魔術師"を遥かに凌ぐスケールだった。

「マルシルの夢」+「有翼の獅子の習性」が、エヴァを手に入れた碇ゲンドウもかくやという、ザ・セカイ系。

『ダンジョン飯』12巻より(九井諒子/KADOKAWA)

最近、PCゲーをたくさんやってるんですけど、「オフゲーなんで他人に迷惑かけないしいいか」といくつかのゲームでグリッチ(裏技)やMOD(改造)にも手を染めてみたんですが、便利で快適な反面、まあモチベーションは下がるというか、ゲームの賞味期限というか開発者が設計意図した「楽しむ寿命」は縮まりますわね。

グリッチやMODって「神の手」もしくは「悪魔の手」であって、四苦八苦して工夫して腕を磨いて不便を克服して自分なりのゴールに辿り着くところにゲームの面白さというのはあって、それは人生に通じるところがあるなあ、と「なんでも"人生"って言っとけば深い気がする病」が発症してしまいます。

『ダンジョン飯』12巻より(九井諒子/KADOKAWA)

マルシルの動機は、漫画的にはありきたりではあるんですけどそれだけに普遍性があるというか、昨今「寿命ギャップ」をテーマにした作品が再興していること、また本作中でも度々語られてきたこともあって、少なくとも碇ゲンドウの人類補完計画と比べるととてもスムーズに理解も共感もできるもので、自分が同じ立場でも誘惑に勝てないだろうと思わされるものでした。誰しも、できることなら幸福を永遠に留めておきたい。

普通に過ごしたら100年後には他のみんなは死んでて、マルシルもフリーレンみたいに独りになってますもんね。

こうしたザ・セカイ系の野望を語るラスボスは、大抵の物語で主人公に打倒されるか説得されるかの二択で、この作品もその例に漏れないんですけど、ちょっと面白かったのは今巻でマルシルがチラッと語る「そもそも現状が不自然なんじゃないか」という疑問。

『ダンジョン飯』12巻より(九井諒子/KADOKAWA)

メタに言えば、エルフもドワーフも実在しない(たぶん)ので『ダンジョン飯』及びそのルーツになったファンタジー作品群における「寿命ギャップの不自然さ」は、「創作故」と簡単に切って捨てることはできるんですけど、

「今のこの世界はいつかのザ・セカイ系ラスボスによって改変された後の世界かもしれない」

という疑問は、我々が目にする多くの物語の裏で「主人公がラスボスを止められなかった物語」が無数にあったのかもしれない、という考えを起こさせて、ちょっと面白いですね。

『ダンジョン飯』12巻より(九井諒子/KADOKAWA)

辻褄の合わないルールや理不尽、実際生きてて多いし、寿命の話でいえば長命をこそ望まなくても「一緒に生きて、死ぬ時はオートマティックに同時に死ぬ(片方が死ぬともう片方も死ぬ)」MODがあったら実装したい関係ってありますよね。

という、セカイ系禅問答は置いておいて、そんなザ・セカイ系展開に対してライオス達があくまで食事で喩えて考え、食事を作り食べ、食事を絡めて戦う、どこまで行っても『ダンジョン飯』なのがまた良いですね。

「セカイ系カタストロフにメシで対抗」って普通に考えたら創作における縛り以外のナニモノでもないんですけど、縛りがバネになっているのか、二郎系ラーメン作りが「作戦」「回想のきっかけ」「動機の解明」「みんなでご飯」に一石四鳥で繋がっちゃう流れのスムーズなことときたらw

『ダンジョン飯』12巻より(九井諒子/KADOKAWA)

「どんな時でもお腹が空いたら美味しいものを作ってみんなで食べよう」のシンプルで暴力的な説得力。

「どんな食物も食べればなくなってしまうように 人生の幸福の頂点は一瞬だ」

って、そしたらまた買うなり作るなりして、また食うんだよ。

コレ書いてるいま深夜なんですけど、あー、二郎系のラーメン食いてえ。

 

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