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#よふかしのうた 10巻 評論(ネタバレ注意)

少年・夜守コウ(14)はふとしたきっかけで「上手くやれていた中学生活」が嫌になり不登校に。ある夜、夜の散歩で街を放浪していると「夜と不眠」に一家言持つ謎の美少女・ナズナに声をかけられ、血を吸われる。彼女は吸血鬼だった。

夜に生きる眷属になりたいと願っても吸血鬼化しないコウ。彼女が照れながら語る「吸血鬼になれる条件」は「吸血鬼に恋して血を吸われること」だった。

「だがしかし」作者の吸血鬼ファンタジーな青春ラブコメ。作品全体を通じてアンニュイとそのアンニュイからの解放が夜を舞台に描かれる。

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「よふかしのうた」10巻より(コトヤマ/小学館)

前巻、急展開で非日常日常ラブコメがシリアスサスペンスに変貌しましたが、今巻で更に急展開して1周回って非日常日常ラブコメに。

前巻に続き「探偵さん」が影の主役として出番が非常に多いことは共通しています。

ヒロインがたくさんいる漫画の男主人公が昼行灯の名ばかり主人公であることは珍しくなく、ヒロインたちが影の主役の実質的な主人公である作品はたくさんあり、表面的にはこの巻のコウくんもそうした存在であるように見えます。

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「よふかしのうた」10巻より(コトヤマ/小学館)

実際、吸血鬼たちと彼女に対抗できる探偵さんなどの特殊能力に満ち溢れたヒロインズに囲まれたコウくんは、ただの人間の一介の不登校の少年に過ぎません。

一方、このように一見「無能力」に見える少年主人公が実は物語のドミネーターである作品も近年はとても増えました。彼らは何の超常能力も戦闘能力も権力も持たない代わりに、優しさ・誠実さ・頭の回転・モテフェロモン・カリスマ・強力な欲求などを併せ持ち、強力なキャラクターたちを従えて物語を牽引します。

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「よふかしのうた」10巻より(コトヤマ/小学館)

「ワンピース」のルフィが例えゴムゴムの実に基づく戦闘能力がなく「軍師リーダー」の役割だけであっても、あの性格だったら形を変えて物語を引っ張っていただろう、という。

コウくんは一見、狂言回しの昼行灯の名ばかり主人公みたいな無能力ですけど、日常を過ごしているだけの吸血鬼の中にあって一人だけ非日常を生きる、この作品の「影の主人公」ならぬ「表の主人公」だと強く示した10巻だったな、と思います。

予告によると急展開の急展開で1周回って非日常日常ラブコメになったこの作品は、再び急展開を迎えるみたいです。

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「よふかしのうた」10巻より(コトヤマ/小学館)

読者からはまだ何も見えていないキク、そんで何を為すでもなく今巻で無意味に退場したように見えたリラの存在、そんでだいぶ出番がご無沙汰の幼なじみで同級生の女の子も、今後の展開にどう効いてくるのか、楽しみですね。

 

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