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#ワールドトリガー 25巻 評論(ネタバレ注意)

三門市に突然開いた異世界からの門。現れた異形の怪獣「近界民」が付近を蹂躙するも、界境防衛機関「ボーダー」を名乗る組織の少年少女たちがこれを撃退。街は近界民の脅威にさらされつつ、ボーダーの能力と信頼によって平和が保たれる奇妙な環境となった。

C級ボーダー(研修生)であることを隠して中学に通う三雲修、彼と出会う奇妙な倫理観の転校生の少年。転校生は出現した近界民を超人的な能力で撃滅し、異世界の人間「近界民」を名乗る。

で始まるジャンプ得意の能力バトルもの。大量の個性的な登場人物に付与された能力を、チームで組み合わせたタクティカルなバトル展開が売り。

長かったB級ランク戦が終わって、作品の縦軸たる近界への遠征、その選抜試験。

『ワールドトリガー』 25巻より(葦原大介/集英社)

普段のチームからメンバーをシャッフルして行われる試験のまずは一次試験、閉鎖環境試験。それはB級からの遠征メンバー選抜にとどまらない、審査する側も含めてあらゆる角度から資質が試されるものだった…

閉鎖環境試験自体は今のところ「宇宙兄弟」の序盤でやったアレにSPI試験とグループディスカッションとグループワークが付いてる、というものです。あれを同時に十数チーム、60人前後が同時にやってるだけ…だけ?

大量のキャラクター1人1人に細かい人格設定付けされた本作ならでは、という感じはします。

宿題やってゲームして、一見は子どもの夏休みみたいw


一連の「選抜試験」編シリーズ、バトルものの本道を外れつつも大変面白く読んでいますが、同時にイケ好かなさもずっと感じています。

主に運営側とA級組に対して。

やってることは一見は子どもの夏休みみたいですが、企業の新卒採用試験や昇格試験の「グループ演習」ですよねコレ。

運営側が自分が嫌いな人事部に見えてしまってw

この手の試験に付き物なのは、「審査する側が必ずしも審査される側より優秀とは限らない」「審査する側が必ずしも試験合格する能力があるとは限らない」にも関わらず、個人の人格とは関係なくシステム上、審査する側が「上から目線」というより「神の目線」になってしまう不均衡が生じていて、どうも好きになれません。

(高みの見物の審査員のA級の隊員たちも、過去にこの選抜試験に合格したわけではありません)

『ワールドトリガー』 25巻より(葦原大介/集英社)

かといって代替する試験・審査方法が思い浮かばないですけど。

幻影旅団は「現メンバーを殺して入団」でシンプルでわかりやすくて良いんですけど、「A級隊員を殺したら合格」ってわけにもいかないですしね。

ということで、自分の就職活動や昇格試験を思い出して、どうしても「審査される側」に過剰に感情移入して、運営や審査員の「上から目線」「選ぶ側の傲慢」を懐疑的に観てしまうところがあります。

『ワールドトリガー』 25巻より(葦原大介/集英社)

そうは言っても、A級隊員たちは若いのに審査ぶりが謙虚で、そもそも業務命令でやらされてるだけなのに「偉そう」とか言われてもいい迷惑ですねw

 

「神は細部に宿る」という格言?がありますが、細部や局所を魅力的に描く作家、という印象。

物語の大目標としては、複数のキャラがいろいろ因縁やらあって「近界」に用があり、ここ数年間のエピソードは全てその遠征メンバーに選ばれるための試練であり過程なんですが、描写の解像度が精緻すぎ魅力的すぎて、読んでるこっちも近視眼的に「B級2位以内」「選抜試験合格」を目標に定めて、大目標を忘れがちにはなります。

誰と誰が何の目的で近界に行きたいんだったけな…

描写が精緻すぎた引き換えに物語の縦軸が遅々として進まず、完結前に読者が亡くなったり未完に終わってしまったり作品もありますが、じゃあ「もっとダイジェストに描いてとっとと話を進めよう」ではこの作品の魅力は8割減で本末転倒なので、作者も読者も健康に気を遣ってこの先の数十年を長生きしましょう、という感じ。

 

今のエピソードのメタ的な意義としては、この作品の元来の持ち味の「多くのキャラの人格・能力・関係性が事細かに描かれる、その過程を楽しむ」に加えて、「バトルものとして強キャラと思われていない(比較的地味な)キャラの救済」かなと思います。

特に主人公の三雲修。

このシリーズ、修を始め一部のキャラの加点にこそなれ、減点になるキャラいねえんじゃねえかな。

各チームのエース級・ポイントゲッター、バトル上の強キャラが軒並み、役に立ってないとは言いませんが、生駒のコメディ以外は基本的に見せ場がありません。

『ワールドトリガー』 25巻より(葦原大介/集英社)

ので、正直この試験で成績悪かったからといってあんまり意味ないんじゃねえかなコレ。

『ワールドトリガー』を以ってすら、少年漫画のバトル展開で目立ちにくい「指揮能力(リーダーシップやマネジメント)に優れた隊員」「戦略・戦術立案に優れた隊員」にスポットを当ててボーダー運営が拾い上げることと、活躍と能力を読者に印象付けること。

『ワールドトリガー』 25巻より(葦原大介/集英社)

「グループ演習」は業腹なやり方ですが、ストレスを与えて人格や性向の本質を短期間にシャープに表出させるには優れた手段で、それらのキャラの強みを描く上でアクションシーンやバトルシーンよりも適してます。

なんで一見おとなしめ目なキャラ、特にストレス環境下でも匙を投げずに粘り強く常に思考し続けコツコツ努力する、性向が閃きよりも分析・改善体質タイプの主人公、三雲修のテコ入れが主眼かなと思います。

『ワールドトリガー』 25巻より(葦原大介/集英社)

あと性格にエキセントリックな癖があって評価が分かれるヒロイン・香取のテコ入れね。

配置上、このシリーズで出番が多いのはもちろん、なんか子どもっぽい可愛らしい描かれ方がされてますよねw

あそうだ、あと若村がんばって欲しいというか、自分の美点・長所に早く気づいて欲しい。(上から目線)

 

 

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