#AQM

I oppose and protest the Russian invasion of Ukraine.

#地球から来たエイリアン 1巻 評論(ネタバレ注意)

お仕事ものジャンルのフィクションで、

・主人公は若い女 天然だがタフで情熱的でバイタリティ有 天才というほどの才能はないが状況を打破する鍵を作者から渡されている

・上司・師匠は経験豊かなおっさん 挫折 or 引退を経験したエリート(元 含む)

・「医者なのに生命を見殺しにする」レベルの、新人に業界のシビアさを思い知らせる、罪悪感・非倫理感すら伴うエピソード

という設定で、夢と希望と情熱に燃える新人が効率と打算と経済性でシビアに回ってる現場にショック(イニシエーション)を受けつつ成長していく作品。


既視感というか割りと定番だよな、と、この作品を読んで思ったんですが、定番だと思う割りには具体的な作品が思い浮かばない。

「らーめん才遊記」や「波よ聞いてくれ」はヒロインがやや天才すぎ、また業界のシビアさが持つ罪悪感もやや薄い気がします。確かにラーメンハゲはアレですけど。

「おいしい関係」も罪悪感とかないですよね。


アレ…別に定番じゃないのかな…

と思って増田で訊いてみました。

anond.hatelabo.jp

トラバやブコメでレスくださったみなさん、ありがとうございました。

参考になりましたし、未読の面白そうな作品をいくつか知ることができました。

自分の未読作品だと「アンサングシンデレラ」と「フラジャイル」が面白そう。読も読も。

既読の作品も「確かにそういう側面あるなあ」と、解釈や切り口の幅を広げる参考になります。

 

別に正解があるクイズじゃなくて幅広く作品を知りたい趣旨なのでいただいたレスに優劣はありませんが、お一人、私が質問したキッカケそのものズバリのこの作品をご回答された方がいて

こんな漫画を探してます

これは間違いなく「地球から来たエイリアン」ですね。主人公の性質、上司や同僚の様子、地球外惑星とその生物を題材にすることでの人間性や倫理観への問題提起など、3つの条件に完全一致と言って良いレベルかと

2022/01/19 17:27

b.hatena.ne.jp

ちょっとニヤリとしてしまいました。

 

みなさんのレスをざっと眺めて、こうした設定や展開を定番と見做すか、そうでもないと見做すかは、まあ人によるかなと思います。

「ツインテールがツンデレ」ほどの定番ではない気がしてきた。

いずれにしても定番であることが良作であることや凡作であることを保証するものではありません。

私は単に自分の既視感のモヤモヤをどうにかしたかっただけです。すいません。

さて。


西暦2220年。

人類は超高速(宇宙)航法技術を手に入れ、各国は大航海時代の欧州列強のように宇宙に進出し入植可能な惑星を探査・開発していて、日本もその例外ではなかった。

惑星開発省 生物管理局の新人職員・朝野みどりは、日本が管理する惑星「瑞穂」に配属され、未知の生き物との出会いに目を輝かせていた。

しかし、彼女が最初に携わった仕事は、

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「地球から来たエイリアン」1巻より(有馬慎太郎/講談社)

ぬいぐるみのようにキュートな見た目を持ちながら人類に害を為す性質を持つ原生生物・プクルを、防疫上の観点から絶滅させることだった…

 

という、未来で宇宙なSFもの。

作品タイトル「地球から来たエイリアン」は地球人類の日本人を指します。

借りものではなく、作者が世界観設定を創るタイプの作品。

「ヘテロゲニア リンギスティコ」が「文化人類学・言語学・民俗学ファンタジー」だとしたら、この作品は「生物学・疫学・環境倫理学SF」と呼ぶのに相応しい作品。

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「地球から来たエイリアン」1巻より(有馬慎太郎/講談社)

昨年中にアキバBlogで取り上げられていて「いつか読むリスト」に入れていたんですが、先日 id:Monomane さんもブログ記事で紹介されていてその紹介文がまた良かったので、「いつか」を前倒しにして読んでみることにしました。

blog.livedoor.jp

proxia.hateblo.jp

1巻を読み終わった現時点では、冒頭で述べたような「新人女とベテラン上司のお仕事もの」展開、上司・深谷の「〜なんだ」というセリフがキーになる展開が続きます。

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「地球から来たエイリアン」1巻より(有馬慎太郎/講談社)

雑に言うと、それを「レベルE」の世界でやっている、と思ってください。

 

面白いのは、今のところ「人類が宇宙進出し植民星を開拓する必然性」がまったく描かれていないことです。

彼女たちは「宇宙戦艦ヤマト」のように切実に人類の存亡の危機を回避する為ではなく、人類、もっと言うと日本の利益・国益の為、他国に遅れを取らない為に、「そこにフロンティアがあるから」「仕事だから仕方がない」というノリで、惑星「瑞穂」の生態系を破壊し種を絶滅させることも辞さない仕事に携わっているように見える点です。

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「地球から来たエイリアン」1巻より(有馬慎太郎/講談社)

未来宇宙SFですが、人類の過去の歴史をもモチーフにした、多くのテーマを含有し得る作品です。

例えば「害虫」「益虫」という言葉はあくまで人間の主観で分類するための言葉ですが、プクルがぬいぐるみのようなルックスの代わりに、例えばヒアリのような見た目をしていたら、果たして彼女はこんなに葛藤したでしょうか。

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「地球から来たエイリアン」1巻より(有馬慎太郎/講談社)

シリアスな縦軸をコミカルに進めていく作風ですが、自分は初めて読む作家さんなので、1巻にして既に「この作品にどうオチをつけるんだろう」と、少し楽しみです。

自然に対する「人類の存在」という違和感に端を発した(この辺は前述の「ヘテロゲニア リンギスティコ」の近刊にも共通します)、テーマだけで言えば大袈裟に言えば「ナウシカ」のようになっても不思議ではないテーマ。

作品のスケールを作者がどの辺りに規定するのかも含めて続きが楽しみ。

ということで発売済の2巻読みまーす。

 

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