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#ぷにるはかわいいスライム 3巻 評論(ネタバレ注意)

Amazonの商品紹介文(出版社のコメントでしょう)によると、「コロコロ史上初のラブコメ、ここに誕生!!」とのことです。

コタローが小学生時代に作ったスライムが生命を宿して7年、「ぷにる」と名付けられたスライムは中学生になったコタローと相変わらず暮らしていた…

という、美少女オバQもの。

『ぷにるはかわいいスライム』3巻より(まえだくん/小学館)

主人公が中学生というのはコロコロコミック的にはやや年長気味ですが、本誌ではなくWEB連載、「女の子に興味が出たら卒業」のコロコロコミック本誌より、もう少し想定読者層を上に拡げた日常ラブコメ作品。

『ドラえもん』『オバケのQ太郎』などの藤子不二雄フォーマットは小学館の外も含めて多くのフォロワーを生み、一部作品は闖入した居候を美少女化・作品をラブコメ化したいわゆる「美少女オバQ」になりまして、他誌で珍しくもなくなった「美少女オバQ」フォーマットを、コロコロコミックが逆輸入、という構図。

『ぷにるはかわいいスライム』3巻より(まえだくん/小学館)

経緯が経緯なので、連想して思い浮かぶ作品はたくさんあって、物質に美少女が顕現と言う意味では『かんなぎ』とか、無性別の人外との恋愛・性愛という意味では手塚治虫作品とか、ほのぼの牧歌的なジュブナイルのギャグコメディノリは『イカ娘』とかを彷彿とさせる作風。

いかにも低年齢向けの人畜無害系のほのぼのギャグっぽい体裁ですけど、やってること『ちょびっツ』っぽいというかジュブナイルながら「美少女オバQ」に対する男の願望はきっちり込められていたり、ギャグコメやキャラ付けにも『ドラえもん』にも共通する狂気が潜んでいたりと、大人が読んでもなかなか楽しい作品。

本来、大人向けに描かれているものではないので、(大人の)読者を選ぶところはありオチもユルいですが、『イカ娘』お好きであれば楽しめると思います。

『ぷにるはかわいいスライム』3巻より(まえだくん/小学館)

「少年漫画」というのは、極端なことを言うと、

「『強い』ってなんだ?」

「『かっこいい』ってなんだ?」

の二つを追い求める、それが描けてれば成立するジャンルかな、と思います。

『ぷにるはかわいいスライム』3巻より(まえだくん/小学館)

『はじめの一歩』の作者・森川ジョージは10代・高校生でプロデビューした天才少年でしたが、2作連続で連載打ち切りが続いて3回目の連載、21歳にして早くも漫画家として最後のチャンスに、同じ「マガジン」のボクシング漫画の金字塔で大先輩の『あしたのジョー』の大家・ちばてつやに会って

「『漫画が上手い』ってなんですか?」

と訊いてみたい自分の本心を、

『はじめの一歩』1巻より(森川ジョージ/講談社)

という主人公・一歩にダブらせて、最後のチャンスで『はじめの一歩』の成功に繋がったんだそうです。

伝聞ではなくて本人が動画で語ってます。

youtu.be

該当部分から再生するようセットしてはいますが、全編にわたってトークが面白いので、時間がある時に観てね!

本作の主人公・コタローは、1〜2巻にわたって「美少女オバQ」日常コメディの主人公らしく特に取り柄のない少年でしたが、今巻で片想い相手のきらら先輩に好かれるに相応しい「かっこいい男」になるべく決意したようです。

『ぷにるはかわいいスライム』3巻より(まえだくん/小学館)

「『強い』ってなんだ?」

「『かっこいい』ってなんだ?」

「『漫画が上手い』ってなんだ?」

というのは、100字ぐらいでわかったようなことを書くことも一応可能ではあるんですけど、一歩が未だ戦っているように、森川ジョージが未だ『はじめの一歩』を描いているように、それぞれの人生においてそれぞれの主人公が自分の答えを見つけるべきものだろうし、それが物語というものだろう、と自分は思います。

『ぷにるはかわいいスライム』3巻より(まえだくん/小学館)

「コロコロコミック」ブランドの、少年向けというより児童向け、ジュブナイルと言って良いポジションの日常コメディ作品ですけど、3巻のコタローの「かっこいい男になりたい」という自分を変える決意によって作品としてのテーマ・芯・筋が通って、大袈裟に言えばなにか「少年漫画」の王道、ビルドゥングスロマンの道を歩き出したような。

動機なんて不純でもなんでもよくて、コタローが

「『かっこいい』ってなんだ?」

の自分の答えを見つけた時に、ぷにるとの関係がどう変わるのか、今から少し、楽しみな。

おそらく『ドラえもん』や『ケロロ軍曹』のように長く愛されたい作品でしょうから、「その時」には自分はもう、この漫画を読めなくなってるかもしれないですけどw

 

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