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#新九郎、奔る! 13巻 評論(ネタバレ注意)

室町後期(戦国初期)の武将、北条早雲の幼少期からの伝記もの。享年64歳説を採用。

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中世代を舞台にした作品ながら、現代の話し言葉を大胆に採用、横文字もガンガン出てくる。おっさん達の政争劇は作者の本領発揮なイメージ。

『新九郎、奔る!』13巻より(ゆうきまさみ/小学館)

北条早雲の伝記を漫画の上手のゆうきまさみが、の時点で面白いに決まってんだけど、日本史の中でも複雑で難解なことで有名な応仁の乱がらみ。渋すぎるテーマをどう捌くのか。

駿河下向の第一幕と応仁の乱が終息し、名門・伊勢家の分家の当主として、目下の課題は

◎駿河の相続問題(甥の龍王を守護に)

◎お家の借金返済

◯荏原荘園の経営

△嫁取り

△立身出世

というところ。

『新九郎、奔る!』13巻より(ゆうきまさみ/小学館)

ここまでのこの作品での新九郎の描かれ方は「課題解決型」というか、解決してないものも多いので「課題累積型」というかw

実家の経営・荘園の経営、実姉の嫁ぎ先のお家騒動の調停、幕府への士官はなく実家の当主ながら無職、浮いた話の相手は人妻となり未だ独身、気がつけば少年武士だった新九郎もアゴ髭を蓄えるアラサーに、という、上級武士未満・中級官僚未満の悲哀、というところ。

『新九郎、奔る!』13巻より(ゆうきまさみ/小学館)

ただサムラーイの割りにここまでアクションシーン皆無の無職の割りには、やたら場数を踏んで経験値を貯めて、狡猾な寝技を使いこなしつつ、根っこの生真面目さとお人好しは相変わらず、という感じ。

近刊では倹約のため、掃除・修繕・裁縫などの家事仕事にも堪能に。

『新九郎、奔る!』13巻より(ゆうきまさみ/小学館)

今巻では、新九郎が抱えていた課題が、借金は徳政で帳消しになり、将軍・義尚の申次衆(秘書役)として念願だった士官も叶い、次巻ではどうも嫁取りしそう、というバタバタっと片付きました。

このまま行くと普通に京都で幕府で立身出世していきそうな気配もしますが、まあ、足利・室町幕府の命数もそんなに長くは…というメタ事情。

作中、飢饉や紛争や将軍家の親子喧嘩などはあれど、応仁の乱も一応は終息して、幕府がもうすぐぶっ潰れそうな匂いはまだしてきませんね。

『新九郎、奔る!』13巻より(ゆうきまさみ/小学館)

ただ申次衆として新九郎が仕える9代将軍・足利義尚は、史実もさることながら漫画のキャラとしての描かれ方が、早死にするろくでなしのボンボン丸出しでにんともかんともw

あとは、特に関東方面では現時点では新九郎に直接は影響しない出来事が多々描かれます。

物語のために作者が置きに行った出来事ではなく、史実準拠で後々バタフライエフェクトのように新九郎の人生に関わってくる話なので、漫画の作者も読者も我慢のしどころかな、とは思います。

『新九郎、奔る!』13巻より(ゆうきまさみ/小学館)

現時点では主人公が関わらない事件を延々やらざるを得ないのは、描くのも読むのも焦れるところなんですけど、将軍家のシモの揉め事まで拾うあの手この手で面白おかしく描いて凌いで、読者を飽きさせない・離さない技量はさすがの一言。

次巻は嫁取り、で良いのかな?

 

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