#AQM

I oppose and protest the Russian invasion of Ukraine.

#戦争は女の顔をしていない 4巻 評論(ネタバレ注意)

漫画作品の感想を読みに来た人に私事を語ってしまって恐縮なんですが、世の中ゴールデンウィークということで、おかげ様で自分も明けて4/29(土)から9連休です。

この漫画感想ブログは一応「毎日更新のフリ」というテイでやってるんですが、年明けからたった4ヶ月の間にずいぶんブログの更新をさぼってしまっていて、このGW期間に少しでもサボった分をリカバリしたいな、と思って数えたところ、

GWが終わるまでに41冊(+2冊)の漫画を読んで感想記事を書けば、「ブログ毎日更新」をサボった借金を返済できる算段。

1日4〜5冊、4〜5記事ペース。なかなかハードやね。

その一発目がよりによってこの重たい作品です。

1冊目を読む前からもう、心が挫けそう。

『戦争は女の顔をしていない』4巻より(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/小梅けいと/速水螺旋人/KADOKAWA)

第二次世界大戦・独ソ戦における「戦争と女」をテーマにした作品で、原作はベラルーシ(旧ソ連)の女性ジャーナリスト、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチのノンフィクション。独ソ戦で赤軍に従軍した女性500人を1978年から1984年にかけて取材、ペレストロイカ後の1986年に出版(日本語訳は2008年)、作者は2015年にノーベル文学賞を受賞。

本作「戦争は女の顔をしていない」のコミカライズは「狼と香辛料」を担当した小梅けいと、監修は漫画「大砲とスタンプ」などミリタリーへの造詣のほかソ連ガチ勢として知られる速水螺旋人、という布陣。 

『戦争は女の顔をしていない』4巻より(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/小梅けいと/速水螺旋人/KADOKAWA)

1巻末の速水螺旋人の解説によると、独ソ戦における敗戦国ドイツの死者800万人に対し、戦勝国ソ連の死者はドイツの3倍以上の2,700万人。全人口1.9億人の約15%を4年間で喪ったとのことです。

ノンフィクションで、物語みたいな救いなんかないです。

ご存知の通り、ここで語られる悲惨な戦争を潜り抜けた旧ソ連の国々は、ソ連の崩壊を経てそれぞれに独立。

2022年2月、ロシアがソ連時代の同胞だったウクライナに侵攻、2023年4月末現在も未だその侵略戦争が継続しています。

私はロシアのウクライナ侵攻に強く反対し抗議し、ロシアの即時撤兵を求めます。

さて。

『戦争は女の顔をしていない』4巻より(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/小梅けいと/速水螺旋人/KADOKAWA)

本作のインタビューに登場する女性たちには、「ソ連赤軍に従軍した」の他にもう一つ共通点があって、それは「独ソ戦を生き残った」ということです。

戦争で死んじまったら戦後にアレクシエーヴィチがインタビューすることは不可能なので、とても当たり前のことなんですが、当たり前と理解っていても読後に「それでも、生き残ったんだな」と思ったエピソード群。

今巻は趣向を少し変えて、と言うと宴会の余興の前フリみたいでなんなんですが、今巻の特に前半は、なんと恋バナ編。

前巻までで、従軍した彼女たちを戦後に迎えたのは、従軍しなかった女たちの「戦場で男漁りをしていたんだろう」という、偏見と侮蔑の視線だったことが語られましたが、

『戦争は女の顔をしていない』4巻より(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/小梅けいと/速水螺旋人/KADOKAWA)

その偏見を補強してしまうような、あまりにも普通の女たちによる戦場の恋のエピソード群。

血気盛んに従軍を志願したうら若い彼女たちを待っていたのは、ドイツの侵攻以来、何年も女の実物を目にしていない前線の男たちによる、「オタサーの姫」状態、モテ期。

戦場の非日常で出会った、いつ死ぬかもわからない若い男女たち全員が軍紀に従順に「終戦まで恋愛は封印」など、できるわけもなく。

戦死した兵士を「貴重なイケメンが…」と惜しむ女、妻子持ちの将校と戦場で不倫して子を身籠った女、戦場で結ばれた男に戦後「戦場臭い」と捨てられた女。

「戦争が、終わって欲しくなかった私の青春だった」。

どこか哀しいけどどこか生臭く、銃弾が当たったらあっさり死ぬぐらいひ弱な生き物のくせに、逞しくもあり。

『戦争は女の顔をしていない』4巻より(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/小梅けいと/速水螺旋人/KADOKAWA)

およそ、彼女たちに

「純粋で無垢で高潔で可哀想な、戦争の聖なる被害者」

であって欲しい人々が目を逸らして無視しそうな、私と同じく、あまりに「普通」で人間くさい女たちのエピソード。

彼女たちに共感し同情しリスペクトしつつも、同時に憐憫にも英雄視にも聖女視にも陥ることのない、アレクシェーヴィチの「同じ人間」に対する墓荒らしのような冷徹なジャーナリズムには頭が下がりますし、「ジャーナリストがいない国」の人間としては羨ましくも思います。

『戦争は女の顔をしていない』4巻より(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/小梅けいと/速水螺旋人/KADOKAWA)

ところで。

今巻のkindle版の発売、配信開始は4/27(木)の深夜0時で、自分はその数分後にダウンロードして読み始め、数十分後に読み終えたんですが、少し奇妙な体験をしました。

普通で人間くさい彼女たちのエピソード群を

「なにかの歌の歌詞で聴き覚えがあるような…」

と思いながら、それがどの曲のどの歌詞だったか思い出せすにモヤモヤしている最中に、漫画『3月のライオン』の作者・羽海野チカ先生のツイートが流れてきました。

羽海野先生ー、そ、それー!!

サビ前の、1番でいう

「はるか未来 目指すための 羽があること」

のとこ相当の2番?3番?の歌詞です。

 ※音楽動画を直接埋め込むと怒られが発生するのでtwitterリンクで

 ※リンクが中森明菜やゴマキなのは自分の趣味です

戦場で明菜やゴマキが配属されてきたら、俺だって戦争しながら命懸けで口説くってばよ。

 

「女神なんて なれないまま 私は生きる」

『戦争は女の顔をしていない』4巻より(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/小梅けいと/速水螺旋人/KADOKAWA)

ここだけは、なんだか本当に、まるで本作今巻のために書かれたような歌詞だな、と。

同じ時間帯に、配信が始まったばかりの本作今巻を、羽海野先生もたまたま読んでたりしたのかしらん。

 

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