元ヤンキーな青春を送り、SNSで漫画クラスタに入り浸る漫画好きの真白悠(♀)は中小企業の虹原印刷(株)に就職。
企画デザイン課に配属され、印刷物のデザイン、データ作成・出力、校正を担当。担当する仕事は選挙のチラシからエロ同人誌までなんでもあり。
という印刷会社のお仕事日常漫画。
取材もしてんでしょうけど、1巻巻末の「Special Thanks」に「元勤め先の皆さま」とあり、作者が経験者なんですね。「NEW GAME!」と同じパターン。
人の生き死にに関わらない、世界も救わない、地味で実直ですけど、ウェルメイドなお仕事もの。
「宮仕えの経験が有れば偉い」というものでもありませんし、サラリーマン漫画だからといって
「この書類やっておいてくれたまえ」
を描くことが悪いとも思いません。
サラリーマン漫画にもラブコメ主軸のもの、家族メインのもの、副業メインのもの等いろいろありますから、「仕事」そのものがメインディッシュでない限り、業務のディティールはオマケでいいと思います。
ただし「仕事」そのものがメインディッシュの作品で「この書類やっておいてくれたまえ」をされると今日が削がれるのも確かです。
サラリーマンも長くやっていると、ミスに対する後悔、プライドを傷つけられた怒り、個人の力では抗えなかった敗北、同僚が失われた寂しさなどのネガティブな思い出も当時のディティールを伴って蓄積されてます。
特に自分の若い頃を振り返ると、自惚が強くて仕事のやり方が「個人商店」で、デカい仕事・難しい仕事に人を集めて仲間を集めて有スキル者を集めてチームを組んで臨むこと、そのために普段から他人から信頼される仕事をして味方を増やしておくこと、などが疎かだったなあ、と。
しばしば「タイムリープもの」のように
「現在の自分の能力で、仕事でつらかったあの頃に戻れたら」
と妄想してしまうことはあります。
この作品も、おそらくそうした動機で描かれているんだろう、と思います。
失敗しかけている仕事シチュエーション、携わっている人間の悔しい気持ち、その解決の仕方、すべてにおいて真に迫ったディティールの具体性と、「製品・サービスを提供する」仕事の内と外で起こることの普遍性を備えています。
「特殊なお仕事の表面」をなぞって見せるだけではなく、
「何が嬉しいのか」
「何に怒るのか」
「何に悩むのか」
そこで働く人間の心の動きや成長を描いた、非常に優れた「お仕事漫画」。
そういう意味では作品の「メインディッシュ」ではないんでしょうけど、真白と黒瀬の付かず離れずの淡い未満恋愛の展開・描写もチャーミング。
元ヤン・姉御肌・武闘派の不器用女子の恋、とても可愛らしいw
aqm.hatenablog.jp