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#とんがり帽子のアトリエ 12巻 評論(ネタバレ注意)

一部の魔法を「禁止魔法」として制約したファンタジー中世世界の、魔法使い見習い少女たちの修行と冒険、ダークな雰囲気ただよう超正統派ファンタジー。

『とんがり帽子のアトリエ』12巻より(白浜鴎/講談社)

イレギュラーに魔法使い見習いになったヒロインのココ、その素質を狙って暗躍する禁止魔法使いたち、ココの巻き添えでトラブルに巻き込まれつつ彼女を守って戦う師匠と姉弟子たちの修行と成長の日々。

魔法使いの祭典「銀夜祭」編、雰囲気的にはお祭りムード。

ストーリー、というよりキャラ毎のテーマというかToDoですかね。が銀夜祭を舞台に並行して走る展開に。

『とんがり帽子のアトリエ』12巻より(白浜鴎/講談社)

「二正面作戦」ならぬ「五正面展開」とでもいうか。

・ココ&タータ イニニア&クスタスの脅迫に従い銀夜祭の行列に参加したい(不穏)

・クスタス&ココ&タータ ダグダを治療したい(不穏)

・テティア 王子との奇縁(不穏)

・島王&王子 医療にまつわる禁じられた魔法を取り戻したい(不穏)

・アガット 一流魔法使いになって実家の一族(母親)を見返したい(やや不穏)

・魔警団 つばあり帽を捕まえたい(やや不穏)

・リチェ 将来の夢

それぞれの思惑が錯綜しつつも、だいたい不穏です。でした。

「魔法使いたちのコミケ」みたいな銀夜祭のクライマックス、「銀夜行列」の最中、前巻ラストで「ゴジラ上陸」みたいな急展開。

『とんがり帽子のアトリエ』12巻より(白浜鴎/講談社)

一転、惨劇の夜になりかけた銀夜祭の街を救ったのは、魔警団、そして参加者の魔法使いだったが…

という展開。

魔法使いたちが戦争だけでなく、医療からも距離を置くようになった複数の要因が示されるとともに、

『とんがり帽子のアトリエ』12巻より(白浜鴎/講談社)

「魔法使いが制約なしに力を振るう」ことの陰と陽が、ストーリーラインの流れとともに赤裸々に。

「力を持つ者が自らを制約し律する」というのは、漫画でもよくある話で、なんでかというと武道や格闘技の精神がそうだからです。

「プロボクサーは喧嘩しちゃダメ」なアレ。

『とんがり帽子のアトリエ』12巻より(白浜鴎/講談社)

武道や格闘技はまだ「試合(仕合)」という形で能力を発露する機会があるんですが、よく考えたらこの漫画は、現役作品の中で最も「(掟によって)力を持つ者が自らを制約し律する」漫画のような気もしてきますね。

もはや、「なぜ魔法使いは人類を支配せず共存する道を選んだ(選んでいる)のか」問題。

「魔法使いの生存が第一次産業従事者をはじめとする人間社会に依存している」的な、知的生命体同士のエコシステムの話なんですかね?

話は少し逸れますが、最近ちょっと仕事しすぎなせいか、「マクロ視点で労働者を守る労使協定と労働組合が、ミクロ視点では労働者を縛り短期的に不利益を与える局面もある」になんか似てんなー、と、読んでてボケーっと思ったり。

『とんがり帽子のアトリエ』12巻より(白浜鴎/講談社)

作品に込められているであろう暗喩をいろんな形・いろんな立場で解釈できて、そういう点でも面白い漫画だなあ、とw

 

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