#AQM

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漫画におけるサプレッサー銃の銃声表現サンプル

漫画だとサイレンサー付きの銃の発射音には「ボシュッボシュッ」という擬音が使われることが多い

アニメでも「ボシュッボシュッ」「バスッバスッ」とでも表せるようなSEが付けられる

多分、爆発してガスになった火薬の噴出音なんだろう

しかし、Youtubeで"surpressor"で検索して見られる動画だと

ガスの噴出音よりハンマーだかスライドだかは知らないが金属同士がぶつかる時のような「カキンカキン」「カチンカチン」という音に聞こえる

サイレンサー付きの銃の発砲音の擬音やSEに今のような表現が使われてるのはなぜなんだろう?

マイク・スピーカーを通さないで生身の耳で聞くと金属音より噴出音の方が聞こえるんかな?

anond.hatelabo.jp

自分は実銃を触ったことがないし、映画もそんなに詳しくないので、漫画におけるサプレッサー銃の銃声の表現について。

 

映画にしろ漫画にしろ、エンタメ・コンテンツにおける銃声の第一義は

「撃った(撃たれた)ことが視聴者・読者に伝わること」

「撃った(撃たれた)弾数が視聴者・読者に伝わること」

『リコリス・リコイル』1巻より(備前やすのり/KADOKAWA)

「パン パン パン」

で3発撃たれたことがわかり、絵との組み合わせで2発は後ろの壁にはずれ、最後の1発は千束の髪を掠めてはずれたことがわかる。

 

なんですけど、サプレッサー(サイレンサー)は銃の発射音(と閃光)を消すことが第一義なので、漫画の銃声表現の本来の存在意義と競合する。

 

なので、演出表現としてサプレッサー付き銃の発射音だけ、「マイクの感度」「音圧」を上げて「聞こえにくい音」をわかりやすく表現する必要がある。

『リコリス・リコイル』1巻より(備前やすのり/KADOKAWA)

増田の言う、ガスの噴出音表現。

『ザ・ファブル』でも同様。

『ザ・ファブル The second contact』5巻より(南勝久/講談社)

ノーマルと比べて音は小さいんだけど、「撃った」「撃たれた」を強調する演出意図に沿うために擬音の文字が大きく描かれる。

 

『ファブル』のサプレッサー銃声の表現の別パターンとして、弾丸の風切り音。

『ザ・ファブル The second contact』5巻より(南勝久/講談社)

話逸れるけどこの撃ち方、面白いけど合理的ね。

例に挙げた『リコリス・リコイル』も『ザ・ファブル The second contact』も2022〜2023年の発刊で、増田の実感と符号する。

 

『ガンスリ』初期は「キシュキシュキシュッ」。

『GUNSLINGER GIRL』1巻より(相田裕/KADOKAWA)

 

『平和の国の島崎へ』のこのシーンは「パス パス パス」。

『平和の国の島崎へ』2巻より(濱田轟天/瀬下猛/講談社)

 

高橋慶太郎は「ヴスッ」「ババス」。

『デストロ016』3巻より(高橋慶太郎/小学館)

『デストロ016』3巻より(高橋慶太郎/小学館)

 

井上智徳の『CANDY&CIGARETTE』では「バス」「ドシュ」。

『CANDY&CIGARETTE』1巻より(井上智徳/講談社)

『CANDY&CIGARETTE』1巻より(井上智徳/講談社)

 

大武政夫の最新作『J⇔M』の1シーンでは「ドシュ」。

『J⇔M』第2話より(大竹政夫/KADOKAWA)

comic-walker.com

美少女殺し屋の漫画多いなw

と思ったけど自分の趣味でバイアスかかってるだけだった。

『ブラック・ラグーン』も探そうかなと思ったけど、あいつら基本的にゴキゲンにワイルドにドンパチして、こそこそサプレッサーなんか使ってなさそうだなー、と思ってやめた。

(追記)

あるらしい。

ありがてえありがてえ。

あった。5巻の日本編でホテル・モスクワが使用。

ハンドガンが「カシッカシッ」。

『ブラック・ラグーン』5巻より(広江礼威/小学館)

 

ライフルが「カシュカシュ」。

『ブラック・ラグーン』5巻より(広江礼威/小学館)

他の巻で米軍も使用とのこと。

 

追記ついでに、本記事日付の翌日に1巻が出た『ミミクリー・ガールズ』から。

サブマシンガンは「パシシシ」。

『ミミクリー・ガールズ』1巻より(ひたき/あさなや/KADOKAWA)

『ミミクリー・ガールズ』1巻より(ひたき/あさなや/KADOKAWA)

 

ライフルは「ガシュン!!」。

『ミミクリー・ガールズ』1巻より(ひたき/あさなや/KADOKAWA)

(追記終わり)

 

 

さて。士郎政宗。

以下、いずれも80年代〜90年代に描かれた近未来SF作品。

しかし、Youtubeで"surpressor"で検索して見られる動画だと

ガスの噴出音よりハンマーだかスライドだかは知らないが金属同士がぶつかる時のような「カキンカキン」「カチンカチン」という音に聞こえる

 

単発だと「ガチン」と言う音で、擬音の書き文字も小さく表現。

『攻殻機動隊』より(士郎政宗/講談社)

 

3連射すると同じく小さい文字で「カチカチカチ」。

『攻殻機動隊』より(士郎政宗/講談社)

 5連射だろうか?同じく小さな書き文字で「ヂヂヂヂヂッ」。

『攻殻機動隊』より(士郎政宗/講談社)

この銃は先に「ハンドガンではなくマシンガン」と注釈されている。

同じくマシンガン、標的が2人なので2連射、次いで3連射?「チチ…」「チチチキ」。

『アップルシード』3巻より(士郎政宗/青心社)

 

フチコマのマシンガンで5連射。「チキチキチキチキチキ」。

『攻殻機動隊』より(士郎政宗/講談社)

 

こちらは発射レートが高く、また標的が多いので斉射時間が長いため、「ヴーンッ」という振動音の表現に変わる。

『アップルシード』3巻より(士郎政宗/青心社)

それか、なんかが電動なんかね?

「チキチキ」「ヴーッ」。

『アップルシード』3巻より(士郎政宗/青心社)

と、このように80年代〜90年代の士郎政宗のサプレッサー銃の銃声表現は、増田の指摘どおり金属音、レートや発射時間が上がると振動音で表現されている。

 

じゃあ士郎政宗はサプレッサー銃の銃声表現にガス噴射音をまったく用いなかったかというとそんなことはなく、

「プププスプスプス」。

『アップルシード』3巻より(士郎政宗/青心社)

ここは主人公のデュナンが撃たれたシーン。

士郎政宗作品の主人公は体制側の特殊部隊であることが多く、銃撃戦の多くも隠密接敵からの奇襲作戦が多いため、必然的に「撃つ側」であることが多い。

士郎政宗作品の主人公が「サプレッサー銃で撃たれる」シーンは割りとレアで、このシーンも訓練シーンの一コマ。

 

士郎政宗の作家性として、

「わかりにくいもの(聞こえづらい音)は、わかりにくいまま(聞こえづらいまま)に表現するのがリアリティ(説得力)であり、それを良しとする」

作風。

作品やエピソードによっても作風が変わっていくんですけど、基本的に

「わかりやすさ < リアリティ(説得力)」。

 

あと、「銃の違い」、「サプレッサーの違い」、「発射数の違い」、「発射レートの違い」、「耳(マイク)の位置の違い」で音の表現を描き分けているように見える他、演出意図として、

「撃った時 = 金属音・振動音」

「撃たれた時 = ガス噴射音」

で描き分けているようにも見える。撃つ側は位置が銃に近い他、腕から伝わる振動の分、情報が多い、はず。

反対に、撃たれる側は腕からの振動がない分、自分を向いている銃口からのガス噴射音が印象に残る。

という演出・表現に見える。

 

士郎政宗の「小さな書き文字で金属音を描く」銃声表現は、リアリティ(説得力)志向でカッコ良い反面、商業エンタメとしては伝わらない読者には伝わらないわかりにくさもあった反省から、近年の漫画ではわかりやすい大きな文字でのガス噴射音での表現が主流になっているんじゃないかな、と。

やっつけで書いたんでサンプル数が少なくて恐縮ですが。

 

冒頭でも書いたけど、

「サプレッサー銃の銃声を、漫画で表現する」

ことは、

「(現実で)わかりにくくしたものを、(フィクションで)わかりやすく表現する」

という、ある種の矛盾というか、二度手間というか、そういうアレだし、複数の音が同時に鳴った時にどの音が印象に残るかも人それぞれなので、まあ特にどれが正解とも思わない。

本当の正解を知りたければ、サプレッサー銃を撃ってみて、サプレッサー銃で撃たれてみるしかないんだけど、そこまでやってもどの音を拾ってカタカナでどう表現するかは、「リアリティとわかりやすさとかっこよさ」も含めて、作品のコンセプトや作家のセンスやバランス感覚によるのかな、と。

何事も近未来SF寄りに空想していた士郎政宗は、「チキチキ」すら本当は描きたくなかったかもしんないなw

漫画におけるサプレッサー銃の銃声表現サンプル - #AQM

まあある種の記号というか、本当に自分のちんこから「ドピュッ!」って音がしたらそれはそれで怖いですよね、という面もあって 全ての漫画に士郎政宗のこだわりを求めると漫画が絶滅しますし

2023/06/26 07:22

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