
『三ツ星カラーズ』『ひとりぼっちの○○生活』の作者・カツヲの新作は、ポストアポカリプスなゾンビもの。
作品テーマ変わりすぎワロス。

『#ゾンビさがしてます』2巻より(カツヲ/KADOKAWA)
13年前、人類社会は通称「あかいひ」を迎え、人口の9割が死亡するかゾンビ化した。
わずかに生き残った人類は都市部を離れて隔離された村で細々と命脈を保っていたが、当時、幼かったり生まれていなかったために「あかいひ」の記憶を持たない新しい世代の若者たちが育ち、都市部を奪還すべく行動を始めた。
アキ、ハル、ナツキは村を抜け出し、古びたオート三輪を駆って旧都市部へと向かう…
という、ポストアポカリプスなゾンビもの。第1話で同じく人間の生き残りの少女、ユウとサクラを拾っての5人旅。

『#ゾンビさがしてます』2巻より(カツヲ/KADOKAWA)
仲間を増やしショッピングモールに立て籠もり武器を作ってゾンビを撃退し、わずかな生き残りたちに邂逅しながら、残された写真を頼りに昔に村を出たアキの父親、そして「あかいひ」の謎に近づいていく…
という、およそゾンビの王道展開要素を全て詰め込んだような、コメディ要素こそあるものの「ゾンビもの」に対して真正面からガップリ四つで取り組むような作品。
シリアスで深刻な展開もありつつも、表紙ヒロインのアキがどこか『三ツ星カラーズ』のさっちゃん的というか、楽天的かつバカパワー溢れるキャラ造形。
線は変わりつつも女の子が可愛いのはそのままで、脇を固めるキャラクターたちもいいキャラ揃い。
自分はホラーが苦手なのと、ゾンビものは絵ヅラが汚くなるのであんま好きではないんですけど、意外と楽しく読めてます。
前巻ラストでナツキがゾンビに噛まれ、アキが間髪入れずに噛まれたその腕を切り落とした、その続き。

『#ゾンビさがしてます』2巻より(カツヲ/KADOKAWA)
ナツキはゾンビウイルスに感染したのか、それとも腕を失いつつも人間にままでいられるのか。
成否はゾンビウイルス発症期限の、噛まれてからの24時間。
その他、人類の生き残りが上野に築いた「上野基地」、人を襲わない「コミュ症ゾンビ」の存在、

『#ゾンビさがしてます』2巻より(カツヲ/KADOKAWA)
そして旅路は早くも目的地の東京タワーへ。
「三ツ星カラーズ」に続いて、2作連続で上野が舞台にw
ナツキの負傷、ゾンビ感染危機とその治療エピソードでは、ユウのつらい過去回想と絡めて「見捨てる/見捨てない」にフォーカス。

『#ゾンビさがしてます』2巻より(カツヲ/KADOKAWA)
ポストアポカリスもの・ゾンビものならではの、極限状態に置かれた人間の選択、それでも人間らしくあろうとする姿が描かれます。
アキは主人公として「ルフィ型」というか、仲間を見捨てず、それが美徳として描かれるんですけど、自分はあんまり「仲間を見捨てた側」の彼らを責める気持ちになれなくて。
本人の資質や信念や行動力がそれを支えていることもさることながら、
「アキにすら、どうしようもない、手の打ちようもない」
という事態の一歩手前で留まっている「運」に恵まれていることは、指摘しておきたいなと思います。
その物語がページを割いて語られなかっただけで、「彼ら」だってアキと同じ人間で、決断するにあたって断腸の思いだったと思うんですよ。
自分は基本的に「見捨てる側」の人間であると同時に「見捨てられる側」の人間であって、だからこそ、それを超えてアキが「運」を手繰り寄せる「不屈」「諦めなさ」に価値があると思うし、それに近づきたいな、と思います。

『#ゾンビさがしてます』2巻より(カツヲ/KADOKAWA)
世界が滅びたりゾンビが街に溢れたりはしなくても、人間に「人を見捨てる/見捨てない」の選択を迫る極限状態は、意外とライトにカジュアルに、やってきますから。
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