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#ダンダダン 11巻 評論(ネタバレ注意)

霊媒師の家系(かけい)のギャルと、いじめられっ子気味で孤独なオカルトオタクの少年の同級生ガールミーツボーイから始まる、オカルトバトルなバディもの?

『ダンダダン』11巻より(龍幸伸/集英社)

寝取られ(「スリープ」的な意味で)。

「ボーイ・ミーツ・ガール」、「オタクに優しいギャル」、「ラブコメ群」、「ちょいエロ」、「呪術廻戦、チェンソーマンなどの最近のジャンプのオカルトバトル漫画群」、「うしおととら」、「東京入星管理局」、「GANTZ」、「メン・イン・ブラック」、「漫☆画太郎」、

あたりを足して適当に割ったような感じ。

『ダンダダン』11巻より(龍幸伸/集英社)

いろんなジャンルのごった煮、カオスな闇鍋みたいな漫画。クリーチャーも宇宙人から妖怪から幽霊から割りとなんでもあり。

ちょっと奥浩哉的とでもいうか、「描きたい画」が先に在って、そこから逆算してエピソードを繋げていってる作り方?と思わなくもないですが、よくわからんねw

倒すべきラスボスも、辿り着くべき約束の地も、提示されないまま、ただただ降りかかり続ける火の粉を払い続け仲間が増え続け経験を重ね続けてより強く成長していき続ける、ステージ制のタワーディフェンス・ゲームのようにエピソードが重ねられます。キンタマ以外。

『ダンダダン』11巻より(龍幸伸/集英社)

「海賊王を目指す」でもなく「ひとつなぎの大秘宝」を求めるでもなく。

作品を貫く縦軸、キンタマしかない。あとラブコメ。

テンプレのような学園ラブコメ展開と既知の「学校の怪談」のエピソードパートに、何の説明もなく突如襲来するタワーディフェンスバトルパート、ユニークで精緻なクリーチャー&メカの動かせるデザインを、体重が乗った肉弾戦と溜めの開放感がある遠隔攻撃を組み合わせたガンカタのようなバトル描写、作者の漫画読者としての原体験、必ずしも順風満帆ではなかったキャリア、ガンダムA、編集担当・林士平との出会いと編集作品の共通点、アシスタントとして師事した作家たち。

『ダンダダン』11巻より(龍幸伸/集英社)

躍動感あふれる見応えのあるアクション描写、奇想天外な風景を緻密に描画する画力。

に対して、ストーリーテラーとしてはおそらく短中編に特化した作家さんなのかな、と思うようになってきました。

短中編に特化した漫画家は、大ヒットを飛ばしにくい。

ではどうするか。

いっそ作品を貫く「大きな物語」を捨てて、それこそステージ制のタワーディフェンス・ゲームのように、ひたすら入魂の中編エピソードを積み重ね、ただただ仲間を増やし少しずつ成長させながら、得意の「画」とダイナミックな展開と「中編力」で魅せていくことで、長編作品に仕立てていこう。

という漫画に見えてきました。

『ダンダダン』11巻より(龍幸伸/集英社)

そうした「ステージ毎の襲来者」なやり方に、呪いやら妖怪やら都市伝説やら超科学やら宇宙人やら、多種多様な具体性を持つ「オカルト」は打ってつけです。

「大きな物語」が(自分にはまだ)見えないからといって、当然「物語がない」わけではないです。

現に今巻も面白いし、現に次巻以降の展開も含めて自分はバモラにまつわる今次エピソードが大好きです。

『ダンダダン』11巻より(龍幸伸/集英社)

そのエンディングを妄想するだけで、自分は少し泣きそうになります。

「エンディングまで、泣くんじゃない」

という『MOTHER』のキャッチコピーを、勝手に思い出してしまった。

 

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