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#平和の国の島崎へ 3巻 評論(ネタバレ注意)

30年前、国際テロ組織「LEL(経済解放同盟)」により羽田発パリ行きの航空機がハイジャックされ、機はテロリストによって中東の空港に降ろされた。

乗客は全員、殺害されるか、洗脳され戦闘員としての訓練を施されLELの構成員、テロリストに育て上げられた。

30年後、当時児童だった島崎真吾はLELの拠点を脱出して日本に帰国、同様に脱出した同じ境遇の「日本人」たちと、日本国内で公安警察の監視を受けながら生活。

『平和の国の島崎へ』3巻より(濱田轟天/瀬下猛/講談社)

喫茶店の店員や漫画家のアシスタントのバイトをしながら、日本語の漢字や現代の日本の文化に少しずつ馴染もうと努力していた。

しかし、LELは脱出者への厳しい報復を身上としており、島崎たちの身辺にもテロリストの追手が少しづつ忍び寄っていた…

というハードボイルドもの。

『平和の国の島崎へ』3巻より(濱田轟天/瀬下猛/講談社)

「足を洗った殺し屋が一般人として生活」という雑に括る限りにおいて、建て付け『ザ・ファブル』によく似ていますが、「カタギになったアウトロー」は能力がある漫画家が真面目に描けば面白くなるに決まっている建て付けで、昔から『静かなるドン』やら最近だと『島さん』やら、その他ハードボイルド小説などでも定番の設定。

組織が「幻の殺し屋組織」から実在のモチーフを想像させる「国際テロ組織」に置き換わったことで、より血生臭く生々しい作品になりました。

島崎は1年以内に戦場に復帰してしまうことが『100ワニ』方式のカウントダウンで作中で予告されています。ある意味、日本を去って戦争に復帰してしまう『シティーハンター』。

『平和の国の島崎へ』3巻より(濱田轟天/瀬下猛/講談社)

今巻は、島崎が日本の暮らしの「普通」に感動する日常エピソード、そしてLELの粛清・報復の魔の手が迫る過程をじっくりと描いたエピソード。

漫画の悪役というのはルックスに「悪辣さ・残虐さ、あるいは無垢な神聖性」「醜さ、あるいはカッコよさ」などが求められるのが常ですが、本作で描かれる、島崎を追う国際テロリスト「LEL」の暗殺者たちは、あまりにもMOB。

『平和の国の島崎へ』3巻より(濱田轟天/瀬下猛/講談社)

日本社会のどこにでもいそうなMOB。

そんな彼らが、テロリストの正体を隠して日本社会に溶け込み、公安と暗闘し、そして雑踏の中から島崎に銃を向ける姿、どんなに悪そうで強そうな悪役よりも真に迫った薄ら寒さを感じます。

「平和の国」という言葉が、ただただ無知によってのみ成り立っているかのような描写。

『平和の国の島崎へ』3巻より(濱田轟天/瀬下猛/講談社)

なにより狂気と人間性の喪失を感じさせる、操り人形のようなその姿の内心が「正義」で強く支えられている様子が、

「何かのきっかけで自分もこうなるのではないか」

と感じさせて、怖いなあ、と思いました。(小並感

というエピソードもさることながら、それと対比するかのように、日常パートで島崎が平和的な人間性を少しずつ取り戻す姿が、泣けます。

『平和の国の島崎へ』3巻より(濱田轟天/瀬下猛/講談社)

そもそもお前はナイフでも道具でも犬でもなくて、人間だっ!つの。

島崎ー、戦場に復帰なんてすんなよー。冴羽獠みたいにずっと日本に居てくれよー。

ってなる。

 

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