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I oppose and protest the Russian invasion of Ukraine.

#幼女戦記 28巻 評論(ネタバレ注意)

サラリーマンがリストラ逆恨みで殺されて成仏の際に神に反抗した罰で、近代欧州っぽい異世界、WW1前のドイツそっくりな帝国の魔導師の素質持ちの女児に転生。

戦勝と栄達と安穏な後方勤務を夢見つつ、少佐の階級、エース・オブ・エース「白銀」「ラインの悪魔」の二つ名、第二〇三遊撃航空魔導大隊大隊長として、戦場の空を支配する主人公ターニャ・デグレチャフ11歳。あれ12歳になったっけ?

『幼女戦記』28巻より(東條チカ/カルロ・ゼン/KADOKAWA)

南方(擬アフリカ)大陸編が決着、帝都ベルン(擬ベルリン)に凱旋するターニャたちを待っていたのは恩給と休暇ではなく、部下の昇進と新たな作戦、帝国(擬ドイツ)東方に国境を接するルーシー連邦(擬ソビエト連邦)に対する偵察侵入。ターニャたちがルーシー連邦へ侵入を果たしたまさにその時、ルーシー連邦は帝国に対する宣戦を布告した…

北のレガドニア、西のフランソワ、南の南方大陸ときて、お次は東のルーシー連邦。

『幼女戦記』28巻より(東條チカ/カルロ・ゼン/KADOKAWA)

言わずもがなにソビエト連邦をモデルにした国家で、ラノベ原作で当然図ったわけでもないのに、現実でウクライナとロシアの間で戦争が始まったタイミングで、コミカライズがこのエピソードに入っちゃうという。

もう一人の「神に選ばれし者」、神々の連携ミスで偶然"恩寵"が三重にかかってしまった敵方の少女メアリー・スーにより、帝国が誇る最強の魔導師の一角「吟遊詩人」が倒されその衝撃が世界に拡がり、ターニャはこの失地を回復するために、ルーシー連邦首都・モスコーへの苛烈な襲撃の決意を新たにする。

『幼女戦記』28巻より(東條チカ/カルロ・ゼン/KADOKAWA)

共産主義の教義により魔導師を異端として排斥してスカスカなモスコーの空を、ターニャ率いる帝国軍第二〇三航空魔導大隊が単独で高速浸透し蹂躙する。

ということで、魔導士とはいえたった48人で大国・ルーシー連邦の首都・モスコーを蹂躙。

あまりに強すぎるその力はそれを怖れる他国をより結託させ、ターニャが最も恐れる「世界大戦」への道を加速させていく…

『幼女戦記』28巻より(東條チカ/カルロ・ゼン/KADOKAWA)

原作は「なろう」ではないんですが、いわゆる「異世界転生」の「俺TUEEEE」な作品群の中でも屈指の、痛快で鮮烈で一方的な大勝、完勝、あまりに大きすぎる武勲。

ああ、なるほど、前の戦時中に、かの朝日新聞までもが戦争を翼賛し、局地的な戦勝に高揚し賞賛していたのはこのような心持ちだったのか、という。

「自国(感情移入対象)の戦勝」というのはスポーツ以上に麻薬のような娯楽性があるんですね。

『幼女戦記』28巻より(東條チカ/カルロ・ゼン/KADOKAWA)

併せて、勝てば勝っただけいつか負けた時の、高く登れば登るだけいつか落ちた時の、そのリスクが増していく、戦争というものが抱える根源的な不穏や危うさもよく描かれています。

すでに現実の第一次世界大戦・第二次世界大戦が示したレールから外れて勝ち続けているのにも関わらず、だからこそ現実以上にロクな結末にならなそうな不穏要素が積み重なっていく。

『シュタインズ・ゲート』の「世界線の収束」を思い出します。

『幼女戦記』28巻より(東條チカ/カルロ・ゼン/KADOKAWA)

フラグすぎるでしょw

メタにベタに展開を予想するなら、帝国が勝っていられるのも、ターニャが「幼女」である作中向こう数年の間だけなんでしょうね、という。

作画の東條チカ先生は、二毛作で『機動戦士ガンダム 水星の魔女』のスピンオフ・コミカライズも同時連載で描き始めましたが、

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力が分散するどころか、なんか却って『幼女戦記』の筆圧も上がってるようなw

 

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