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#株式会社マジルミエ 8巻 評論(ネタバレ注意)

突如発生し人と社会に害をなし損害を与える怪異を、退治するサービスが「魔法少女」と称され、複数の企業が魔法少女サービスを提供する社会。

就職活動中の女子学生・桜木カナは、面接に連戦連敗の最中、大手金融企業の面接中に会場の会議室で発生した怪異に巻き込まれる。

通報で現場に駆けつけた魔法少女の怪異退治「業務」を手伝った縁で、カナは魔法少女ベンチャー企業「株式会社マジルミエ」にスカウトされ、魔法少女として就職することになった…

『株式会社マジルミエ』8巻より(岩田雪花/青木裕/集英社)

という、ジャンプ+の魔法少女お仕事漫画。

『パトレイバー』の「レイバー」のように、現実社会に「魔法少女」という大きな「嘘」を一つ放り込んで、魔法少女を企業サービスとして現代社会ナイズ。

嘘の周辺を現実的な描写・展開で固めることで、ファンタジー世界観のリアリティラインを部分的に押し上げてシミュレーションして、お仕事漫画のテイに。

現実のお仕事で起きそうなストーリーラインで展開するので、特に本作はIT系のシステム開発屋さんが感情移入しやすい作りに。

『株式会社マジルミエ』8巻より(岩田雪花/青木裕/集英社)

「今日も一日がんばるぞい!」が『GS美神』よろしくバケモノ退治する漫画、でざっくり説明できちゃいそうな世界観。

1巻当初は魔法少女1名、エンジニア1名の小規模ベンチャーだったマジルミエですが、ヒロイン・カナの採用を経て、エンジニアの採用募集を開始。

京都編でいろいろトラブルもありつつも「心は童貞、見た目はヤクザ」みたいな優秀な大学生の兄ちゃんを新入社員としてゲット。

『株式会社マジルミエ』8巻より(岩田雪花/青木裕/集英社)

ライトスタッフが揃って、魔法少女業界注目の、名実ともに「最強のベンチャー」になった裏で、しかし業界の暗部では大規模魔法の規制緩和と利権に関わる、官民の癒着・不正と陰謀が進行していた…

という今巻。

営利企業というのは、利益の追求と納税による国家・地域への貢献の他に「活動そのものを通じて社会に資する・貢献すること」を掲げるところも多いんですが、「正義に資する」を掲げる企業は滅多にありません。

『株式会社マジルミエ』8巻より(岩田雪花/青木裕/集英社)

それは警察や司法や報道の仕事だ、というのもそうですが、そもそも「正義」という議論が割れる余地のある曖昧な概念は、看板になりにくい、ということをだいたいの大人は知っているからです。

(「社会正義」となると、もう少し「万人共通」「自明」みたいなニュアンスが乗るんですが 「反差別」「反暴力」「反反社」とか)

本作は企業をテーマにしつつも、「魔法少女」という古来よりの「正義の味方」モチーフを主役に据えている点、人類社会に仇なす怪異と対峙して退治する点など、実在の企業よりもう少し「正義」よりで、その辺が「大人向け」ではありながら「少年漫画らしさ」を残しているなとも思います。

(この辺は近未来SF公安警察ものの『攻殻機動隊』ですら、そうです)

敵が「悪い奴」じゃないと成り立たないんですよね。

『株式会社マジルミエ』8巻より(岩田雪花/青木裕/集英社)

悪役・鎌倉の動機は今のところ利権で、今のところ「一番怖いのは生きている人間」な物語ですが、「結局のところ怪異とはなんなのか」が未だに明らかになっていない以上、ストーリーというか作中の魔法業界のユクスエを作者がどう描くか。

鎌倉の後ろに怪異を利用した国家転覆などを企む黒幕がいたりするのか、怪異がこの世からすべて消えていなくなることが果たして良いことなのか、結局のところ怪異とはなんなのか、魔法少女とは一体なんなのか。

その中で、カナちが社会人として、企業人として、魔法少女として、どんな役割を果たすのか、引き続き楽しみです。

『株式会社マジルミエ』8巻より(岩田雪花/青木裕/集英社)

などなど、陰謀・策謀と「カナちの社会人観」にスポットが当たった巻で、思いました。

 

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