東京から南へ120km、伊豆"王"島で暮らす女子高生・相(あい)は、島の貸本屋の漫画を全て読み尽くすぐらい漫画が好きだった。
カルト的な人気を誇り相も心酔する漫画家がコミティアで新作を頒布するとSNSで目にした相は、意を決してジェット船で東京に上京、ビッグサイトに赴く。
コミティアでみんなが「自分で漫画を描いている」ことに衝撃を受けつつ、たどり着いた目当てのブースで新作を頒布していた憧れの漫画家「☆野0」先生は、島で相の生活を厳しく指導し、ことあるごとに「漫画なんてくだらないから読むのやめろ」と口酸っぱく言ってくる手島先生だった…
で始まる、「漫画家もの」「女子高生部活もの」。
1巻あとがき漫画によると作者は実際、幼少期のみながら伊豆大島の出身とのことです。
顧問と仲間を集めて部を設立し活動を立ち上げる「部活もの」の王道展開、『まんが道』もかくやという漫画への憧れを、シンプルな展開とシンプルな絵と軽妙なコメティ展開に、力強い感情表現とおどろおどろしい情念を込めて。
およそ婉曲や見栄という概念が存在しない世界観のような、恥も摩擦もまったく怖れない、力強いストレートなセリフと感情表現。
今巻では再びコミティアへ。
相の、謂わゆる「サクセスストーリー」としての描かれ方は、されていないというべきか、「まだ」されていないというべきか。
むしろ毎巻恒例の手島先生と貸本屋・寺村の若き日を描く番外編『ロストワールド』の方が、「プロになったきっかけ」などは詳細に描かれています。
相については「雌伏」というのも違うんだよな、地方の学生のアマチュアの「漫画への憧れ」を繰り返し擦り続けつつ、活動や作品もさることながら「漫画との向き合い方」において、手島先生に大器の片鱗を見せ続けています。
作中では「漫画を愛すること」と「漫画のプロになること」の線が割りとはっきり引かれ、『ロストワールド』は相変わらず本編に並走し続けています。
このまま並走し続けて、過去回想である『ロストワールド』が1巻冒頭に追いついた時がたぶん、リミットになるのかな。
あと、この作品自体がマンガ大賞を受賞したこともあって、その影響からか漫画賞にフィーチャーした描写がなんか多い巻でしたねw
嬉しかったんだろうなあ。あらためて、受賞おめでとうございます。
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