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#葬送のフリーレン 11巻 評論(ネタバレ注意)

80年前、魔王を打ち倒し平和をもたらした伝説のパーティ。

勇者ヒンメル。戦士アイゼン。僧侶ハイター。魔法使いフリーレン。

『葬送のフリーレン』11巻より(山田鐘人/アベツカサ/小学館)

王都に凱旋した彼らには、世界を救った功績に対する歓待と、その後の長く平和な人生が待っていた。

80年が経ち、勇者も僧侶も寿命で世を去り、戦士のドワーフも老いた中、長命種エルフの魔法使いフリーレンだけがひとり変わることなく魔法を求めて彷徨いながら、かつての仲間の死と追憶に触れていく異色のファンタジーもの。
ヒロインからしたら一瞬にすぎない間しか同じ時間を過ごせない、エルフと人間の寿命と時間感覚のギャップの哀愁を淡々と。

『葬送のフリーレン』11巻より(山田鐘人/アベツカサ/小学館)

フリーレンに、弟子の魔法使いフェルン、戦士のシュタルクを加えた一行は、一級魔法使い試験を経て、危険なため通行が禁止された北部高原、ヴァイゼ地方。

50年前に魔族の幹部・七崩賢の一人「黄金郷のマハト」によって丸ごと黄金に変えられた城塞都市ヴァイゼ。「黄金郷のマハト」はフリーゼンがかつて敗北したことのある11人の魔法使いの1人だった…

勇者ヒンメル一行に討伐された魔王の配下だった「黄金郷マハト」討伐編、完結。

たとえ言葉は通じてコミュニケーションが取れても、つくりが違いすぎて価値観を共有できない、人間と魔族。

『葬送のフリーレン』11巻より(山田鐘人/アベツカサ/小学館)

にも関わらず人間に興味をもってしまったマハトが、今なお黄金郷と化したヴァイゼで暮らし、侵入者を殺し続ける理由。

「悪」も「罪悪感」も「正義感」も理解できないマハトが、それらを理解しようとヴァイゼでやってきたこと。

デンケンvsマハト、フリーレンvsソリテールの二手に分かれたそれぞれの魔法バトル、見応えありました。

デンケンはともかく、フリーレンがここまで苦戦というか、ボロボロになって負けそうになるの、作中初めて?

『葬送のフリーレン』11巻より(山田鐘人/アベツカサ/小学館)

王道の必殺技決着ではなく搦め手に近い決着ですけど、魔法使い同士のバトルらしい盤外戦術の駆け引きの頭脳戦。

またバトルを通じて描かれた、人間と魔族の共存の可能性というか深い断絶。

多くの漫画作品などで人間と「人間以外」との争った末の共存・融和は「夢」として描かれますが、

本作ではバッサリ。

ここまで「異種間の共存」に否定的な漫画も珍しいぐらい。

フリーレンは作品序盤から、「魔族との共存など論外である」とハッキリしてますよね。

『葬送のフリーレン』11巻より(山田鐘人/アベツカサ/小学館)

人語を理解し操りコミュニケーションが可能な知能を持ち、更に人間に興味を持っていても、理解を深める過程で「相手を傷つける」ことを避けられないマハトとソリテールは、人間から見たら生存競争の競合相手でしかなかった。

永い年月を生きて人間と魔族と深く接して、それぞれの本質を見抜いたフリーレンがとっくに通り過ぎた結論。

なかなか示唆に富んだ話です。

「相手を理解したい」「相手と深く関わりたい」という一見ポジティブな目的は、その過程で「相手を傷つける」「相手の生命や尊厳を損なう」ネガティブな手段を(人間の価値観上)正当化しない。

本作はたまたま「人間と魔族」として描かれていますけど、「人間同士で在りさえすれば傷つけ合わずに理解し合える」とするのは、いささか楽観的というか、

『葬送のフリーレン』11巻より(山田鐘人/アベツカサ/小学館)

よく考えたら「人間同士でも傷つけあわずには理解し合えない」作品ばかりのような気がしますね。

でも一概に「ましてや人外をや」とは言い切れないところもまた、面白いところで。

 

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