『シグルイ』の作者の現作。
実相寺二矢(じっそうじ おとや)、29歳、職業アルバイト。
大学時代のサークル「特撮美術研究会」通称「特美研」において、特撮美術の魅力、その「劇しい光」に取り憑かれた彼らは、「コスプレ」というよりは「パワードスーツ」と呼ぶべき機能を備えた特撮ヒーロースーツ「劇光スーツ」をメンバー全員分自作し、自警パトロールや社会貢献活動に勤しんでいた。
実相寺は自警パトロール活動中、不良少年たちの傷害事件現場に行き合った際の制止の最中、事故で相手を失明させてしまい自らも傷害犯となり執行猶予付きの有罪判決を受け、サークルも強制解散。
それから6年、アラサーとなった特美研メンバーがそれぞれ就職し結婚準備を始めるなど新しい生活を歩く中、実相寺は独り、アルバイトで生計を立てながら身体の鍛錬と劇光スーツのメンテを怠らず、再びヒーローとして「劇しい光」に出会う機会を求めて雌伏していた…
外形的には20〜30歳の大人になっても「ヒーローごっこ」から抜け出せない若者が、その特撮ヒーローへの強烈な憧れ・情熱・狂気によってカルト的な活動に傾倒し、社会にわずかに存在する同好の士と価値観を共有し合っている、そんな話にも見えます。
が、ちょっと様子が変わってくる予兆というか、「瓢箪から駒」「嘘から出た誠」的に、彼らのヒーロー願望と狂気が、闘うための相手「悪」を呼び寄せつつあるようにも見える3巻。
偽物が偽物のまま、その情熱と狂気故に本物を超えていく。
という概念・現象は、自分は西尾維新の『偽物語』の原作小説で初めて触れたように思います。
その時は「何言ってだ」という感じであんまりピンときていなかったんですが、それを補強してくれたのは『らーめん才遊記』のクライマックス、
近年では『葬送のフリーレン』で勇者の剣を抜けないままレプリカの剣で魔王を打倒した勇者ヒンメル
なども思い浮かびます。
「君は本物だ」と選ばれるのではなく、自らの情熱と強固な信念によって偽物、というか「普通の人」が本物を超えていく物語、というのは近年のエンタメの潮流のひとつなんでしょうか。
さて。
本作の物語の方は、ヒーロー願望を抱えた若者たちが闘争を求めて相撃つ展開を繰り広げ、
「武器や力を手に入れた者は、それを振るわずにはいられない」
というお話に変容したかのように、見えました。が。
わあ…なにこの3巻ラスト…こんなん4巻読まないわけにはいかないじゃん…
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