室町後期(戦国初期)の武将、北条早雲の幼少期からの伝記もの。享年64歳説を採用。
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中世代を舞台にした作品ながら、現代の話し言葉を大胆に採用、横文字もガンガン出てくる。おっさん達の政争劇は作者の本領発揮なイメージ。
北条早雲の伝記を漫画の上手のゆうきまさみが、の時点で面白いに決まってんだけど、日本史の中でも複雑で難解なことで有名な応仁の乱がらみ。渋すぎるテーマをどう捌くのか。
駿河下向の第一幕と応仁の乱が終息し、名門・伊勢家の分家の当主として、目下の課題は
◎駿河の相続問題(甥の龍王を守護に)
◎お家の借金返済
◯荏原荘園の経営
△嫁取り
△立身出世
というところ。
「課題解決型」というか、解決してないものも多いので「課題累積型」というかw
上級武士未満・中級官僚未満の悲哀、というところでしたが、情勢が徐々に剣呑に。
前巻で「借金返済」が一応目処がつき、今巻で「嫁取り」が解決、「荏原荘園の経営」も転機を迎えそうな気配ですが、
なにより「立身出世」の方向転換が示され始めました。
義政を継いだ将軍・義尚が、奸臣を重用し幕政に直接武力を用いるなど、伝統的な幕臣の武士たちの幕府の求心力を急激に失わせ、新九郎の心も将軍と幕府から徐々に離れていき、梟雄としての資質が顔をのぞかせ始める様子が丁寧に描かれます。
将軍と新九郎の周辺以外の情勢も、これまでの稀に乱が起こりつつも基本的には官僚的な処理によって統治されてきた時代からから、徐々に直接武力で解決されることが増えてきて、「力こそパワー!」というか、「乱世」「戦国」のきな臭い匂いが強く漂ってきました。
関東における「もう一人の主人公」と言っていい扱いを受けてきた太田道灌も今巻で退場。
徐々に「官僚の物語」が「武将の物語」にシフトしていく、ギアが切り替わる音が聞こえてきそうな。
ここまでの新九郎のバトル・サムラーイとしての力量は特筆すべきものは正直ないんですけど、14巻かけて政治的な駆け引き、火の車の台所運営、なにより利害関係者の心理の掌握などの経験を積み、気がつけば実に「ゆうきまさみ漫画の主人公らしい武将」像に、だいぶ近づいてきましたね。
真面目だった奴がキレてその能力を悪用することに躊躇しなくなるって、怖いよなあ。
aqm.hatenablog.jp