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#戦闘メカ ザブングル アナザー・ゲイル 3巻 評論(ネタバレ注意)

昨年、TV放送40周年を迎えたTVアニメ『戦闘メカ ザブングル』のコミカライズ。

名古屋テレビ制作、テレビ朝日系列で放送の「サンライズ土曜5時半枠」(中京圏・首都圏)で1982年放送開始。

富野由悠季がTVアニメ監督としてクッソ働いてた時期で、いわゆる「スーパーロボット」路線から「リアルロボット」路線への過渡期の作品。

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【第1話】戦闘メカ ザブングル〔サンチャン〕 - YouTube

砂漠と岩と泥の惑星・ゾラ。

無菌のドーム内で暮らす少数の「イノセント」と呼ばれる超・上流階級が支配する中、一般庶民「シビリアン」は乾いた大地で「ウォーカーマシン」と呼ばれるメカを駆って、ガンマンで溢れた西部劇のような、「どんな犯罪も3日間逃げ切れば時効」という無法の大地でたくましく生き抜いていた。

シビリアンの少女・ベルは、複数のウォーカーマシンに襲われているカーゴを見かねて助太刀に入るが…

という、ガール・ミーツ・ロボットな出だしで始まるバトルロボットもの。

『戦闘メカ ザブングル アナザー・ゲイル』3巻より(田中むねよし/富野由悠季/鈴木良武/小学館)

が、ガール!?

というわけで、コミカライズにあたって主人公が男子から女子に変更になりました。

原作アニメの完全なコミカライズを目指すものではなく、同じ世界観・同じメカ群を使った、パラレル作品のようです。

「アナザーゲイル」ってそういう…

作画の作風も、80年代の「コロコロ」というより「ボンボン」のTVアニメ・コミカライズの雰囲気を令和ナイズした雰囲気。

『戦闘メカ ザブングル アナザー・ゲイル』3巻より(田中むねよし/富野由悠季/鈴木良武/小学館)

元が80年代前半の古いアニメで割りと荒唐無稽な分、どこかレトロな画風がワイルドでハードボイルドな作品世界にマッチしてます。

「ニュー・レトロ」とでもいうのか、70年代80年代リスペクトの流れというか。

ロボットのサイズ、性能、運用の仕方は、ロボットものだと『パトレイバー』が近いのかな。重機の延長線上のロボット的な。

西部劇っぽいというか、フロンティア(と呼ぶには少々退廃的ですが)の荒々しさというか、まるで任侠の世界。

『戦闘メカ ザブングル アナザー・ゲイル』3巻より(田中むねよし/富野由悠季/鈴木良武/小学館)

武装による暴力が蔓延っていて、当然、警察も裁判所もないのでサバイブするためには自らも自衛のために武装して、逞しくなければ生きていけない、という世界観。

原作リスペクトで敢えてやっていることなのか、この40年のアニメ・漫画の作劇・演出の発展がなかったかのように、「読者にウケるためのテクニック」をガン無視して進められる、シンプルで野放図でワイルドで行き当たりばったり、「全打席ホームラン狙い」のフルスイングみたいな荒々しい作劇。

知らずに他人から

「80年代当時のコロコロかボンボンに載ってた漫画だよ」

と紹介されたら信じてしまいそうなw

『戦闘メカ ザブングル アナザー・ゲイル』3巻より(田中むねよし/富野由悠季/鈴木良武/小学館)

打率を上げることも打線をつなげることも意識してないかのようなフルスイングと引き換えに、面白さの「打率」はお世辞にも高くない、モダンでもない漫画ですけど、最高飛距離のホームラン記録はこういう作品から生まれるような予感もしないではないです。

宮崎駿が『風の谷のナウシカ』を描き始めた80年代の世相を反映してか、薄汚れた泥の惑星ゾラにわずかに残された自然環境の破壊と、なにより手を汚さない「上級国民」によるシビリアンへの搾取が、諸悪の根源の悪役として描かれます。

『戦闘メカ ザブングル アナザー・ゲイル』3巻より(田中むねよし/富野由悠季/鈴木良武/小学館)

表面上は今のところ場当たり的に出会った端から人助けをしているだけですし、自分は原作アニメの展開をもう憶えていませんが、富野作品らしく、腐敗した体制への怒り、懸命に生きようとする人間の尊厳、ベルが抱える青い海への憧れはずっと強烈に通底しています。

なんかこう連載始めた時点で、クライマックスのでっかい場外ホームラン・エピソードが既に構想されていて、それに向かって通常エピソードを積み上げながら、スイングスピードを測っているかのような、大器の予感がしますね。

『戦闘メカ ザブングル アナザー・ゲイル』3巻より(田中むねよし/富野由悠季/鈴木良武/小学館)

展開は憶えてないけど、子ども時代に観た最終回のサブタイトルが確か「みんな走れ!」で、子ども心にエラい感動したことだけ、憶えてんですよね。

 

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