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#らーめん再遊記 9巻 評論(ネタバレ注意)

『ラーメン発見伝』の続編の『らーめん才遊記』の更に続編の現作。

シリーズ未読の方にものすごく雑に説明すると「ラーメン版『美味しんぼ』」みたいな作品群。

『らーめん再遊記』9巻より(久部緑郎/河合単/石神秀幸/小学館)

脱サラして開業したラーメン店が苦節を乗り越えて成功し事業を拡張、ラーメン店向けに始めたコンサル業も順調、メディアにも露出しラーメン産業を盛り上げてきた立役者の一人と認められ、職人・経営者としてラーメン業界を代表する第一人者となった芹沢。

ラーメン業界の世代交代と新たな時代の到来を前に、なぜか芹沢はやる気が出なかった…

『らーめん再遊記』9巻より(久部緑郎/河合単/石神秀幸/小学館)

いや、『ラーメン発見伝』『らーめん才遊記』『らーめん再遊記』のかなカナ変化やら読みの被せやらの、統一感があるんだかないんだかよくわからない感も大概ですよw

雑に説明すると、自らの原点に立ち返った王が、自ら育てた天才児にその玉座を禅譲し、自らは放浪の旅に出る、的なそういう話です。そういう話をラーメン業界で。

職人・経営者のトップとしてラーメン業界の頂点に立ちそこから降りた主人公が、身分(?)を隠して大手チェーンのラーメン屋にバイトとして潜り込んで店舗内の若手のいざこざに首を突っ込んでみたり、山の頂上から見下ろしていたラーメン業界の裾野を歩いて回る話。

『らーめん再遊記』9巻より(久部緑郎/河合単/石神秀幸/小学館)

だったんですけど、近刊はちょっとマンネリというか、飽きてきたかな、というか、ラーメンハゲこと芹沢を主人公に置く難しさを感じさせてました。

芹沢はどうも基本的に知識と経験と技術をもとにした、職人的側面と経営的側面を両立させた課題解決のアイデアと、追憶・回顧と、ラーメン業界の同業者・評論家・客の悪口と、あとラーメン対決しか引き出しがありません。

なので、その繰り返し。

『らーめん再遊記』9巻より(久部緑郎/河合単/石神秀幸/小学館)

その4つはラーメンハゲの最大の持ち味ではあるんですけど、結局ラーメン対決するなら『ラーメン発見伝』『らーめん才遊記』の頃から変わってないんですよね。

で。

今巻は久しぶりに『らーめん再遊記』らしく面白かった気がします。

本作途中から登場させた「便利な聴き手」若手のYouTuberグルタくんを逆に講師役に置いて、いつもは蘊蓄を語る側のハゲと有栖川を完全に聴き手の生徒役に、「インスタントラーメン最前線編」。

店舗ラーメンの最前線から降りたハゲが業界周辺を放浪し最終目標に向けて知見を拡げるのにうってつけのテーマ。

『らーめん再遊記』9巻より(久部緑郎/河合単/石神秀幸/小学館)

役割を逆転させることで作劇が「味変」されキャラの新たな一面も覗かせ、読者は好きなラーメンに関わる文化的な雑学も増える、といういいことづくめ。

最近は「またラーメン対決か…」ってなることが多かった自分にとって、読んでてとても楽しく、勉強になったエピソードでした。

聴き手に回れないハゲの代わりに登場させたはずグルタくんと、常に上から教える側だったハゲとを、役割を逆転させたのはコペルニクス的な冴えたやり方だなあ、と。

なにより、こういう漫画なんでややもすれば「不味いラーメンをどうやって売るか」みたいな話にもなりがちなんですけど、今巻で登場したインスタントラーメンはどれも美味しそうにプレゼンされていて、ラーメンが美味そうじゃないとこの漫画やっぱダメだよな、とw

『らーめん再遊記』9巻より(久部緑郎/河合単/石神秀幸/小学館)

あと、ハゲの性格は相変わらず「いい人化」せずにクズのままなのがとても良いです。

うすら笑いで「だるい…」クッソワロタw

 

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