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#堕天作戦 6巻 評論(ネタバレ注意)

人類が自ら開発した機械生命体に霊長の座を奪われた後、そのデウス・エクス・マキナ「超人機械」が忽然と姿を消してしまった。

腐鉄菌の蔓延により科学文明は滅び、入れ替わるように超人機械が残した遺産として魔法・魔人・魔竜・怪蟲・樹海、そして不死者が遺された。

旧人・魔人はそれぞれに国家群を形成し、300年の永きに渡って戦争に明け暮れる、未来の地球。

旧人国家の兵器として利用される無限の人生に飽きた不死者アンダーは、戦場で心が触れ合いながらその死を傍観した魔人の少女・レコベルの消息と、世界を見下ろす「星形の星」を巡る真実を求めて、戦乱に満ちた世界を放浪する…

『堕天作戦』6巻より(山本章一)

前巻からけっこう間が空いたこと、設定が独自かつ複雑なことから、新刊を読むにあたって過去巻を全部読み返さないとな、と思っている間に、年末になってしまいました。

1巻からあらためて読み返して記憶が蘇ると、あらためてすごい漫画だな、と思います。

小学館との出版契約を円満に解消し、今巻からkindleでの個人出版に移行とのことです。

その理由について作者が「円満な解消だった」としか語らない以上、真相はわかりません。

『堕天作戦』6巻より(山本章一)

一般論として、独自すぎる世界観・独特すぎる用語・多すぎるキャラと勢力・残酷な暴力描写が彩るこの作品は、楽しまれるにあたって読者の熟読による理解と記憶に依存していて、営利を求められる大手商業出版の編集者のテクニカルな創作メソッドからすると「面白いけど売れなさそうな、キャッチーじゃない漫画」に映っただろうな、と憶測してしまいます。

かといって「子どもにもわかりやすく」「安心安全に」「善と悪、敵と味方をシンプルに」描かれたら、この作品の良さや作者が表現したいことをは大幅にスポイルされてしまって、本末転倒でしょう。

『堕天作戦』6巻より(山本章一)

一読者としては、「売れるかどうか」より「面白いかどうか」を優先したであろう作者の決断は英断だったと思います。

まあ、憶測に対する仮定の話なんですけど。

戴天党の総裁・コサイタスの最期の出撃、並行して回想される不死者ヘリオス・将軍シャクター・虚術使いのシバ・そして戴天党のエピソードゼロ。

異才・異能の集団だった初期メンバーたちの間で結ばれた友情・愛情、黄金の青春時代。

『堕天作戦』6巻より(山本章一)

こんなに「ひとりぼっち」を感じさせるシーンあるかよ…と思ってしまう、コサイタスの心象と、能力が起こす現象がリンクして重なり合った虚無なシーン。

猛吹雪の闇の中、遭難者のように、滅びた世界の唯一の生き残りであるかのように、孤独に歩を進めるコサイタス。

戴天党総裁コサイタス亡き後も情勢は混迷を極める中、戴天党とメイミョーは停戦して講和を模索。

『堕天作戦』6巻より(山本章一)

暴露される「星形の星」の秘密、新たな魔竜騎兵、新たな勢力で居所を得た業火卿ピロ、分裂し並列化することで新たな人格を得たレコベル、彼女を求めて戴天党の中枢に潜入したアンダー。

アンダーとレコベルの邂逅を求めつつ、作者は大雑把には「この世界をこの世界のまま存続させるか」「『星形の星』を滅して再びカタストロフを起こすか」の選択肢が握られています。

『堕天作戦』6巻より(山本章一)

最初っから「魔人がいなくなって人類が霊長に返り咲けばハッピーエンド」って漫画でもねえからなあ。

 

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