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#幼稚園WARS 7巻 評論(ネタバレ注意)

国によって極秘で運営され、収監された凄腕の元・犯罪者たちを釈放・減刑と引き換えにボディガード兼「幼稚園の先生」として有期雇用し、誘拐や暗殺の対象にされる良家の子女を預かって護衛する、「世界一安全な幼稚園」。

『幼稚園WARS』7巻より(千葉侑生/集英社)

元・伝説の殺し屋、囚人番号999・リタも、幼稚園教諭として子どもたちを日々護衛しながら、1年間の年季が明けて自由の身になることを、そしてイケメンの彼氏を作ることを夢見ていた…

という、「殺し屋×幼稚園の先生」なハードボイルド・アクション。名物編集「林士平」印。

『幼稚園WARS』7巻より(千葉侑生/集英社)

昔、シュワルツェネッガー主演で凄腕刑事が潜入捜査で幼稚園の先生になる『キンダガートン・コップ』という映画がありましたが、あれに倣えば「キンダガートン・アサシン」という感じ。

同じ「林士平」印の『SPY×FAMILY』は言うに及ばず『子連れ狼』の昔から、「ハードボイルドと幼児」は意外と相性が良いですね。

『幼稚園WARS』7巻より(千葉侑生/集英社)

林編集作品らしく勢い・スピード・テンポ・ギャップ優先、無敵ヒロインでバトルというかガンアクションシーンもどこかコミカルに。

戦闘の優劣の描写は、割りとストーリー展開に応じた作者の匙加減次第、という感じ。

今巻から幼稚園の大イベント、VIPだらけの保護者を招待しての「お遊戯会」編。

『幼稚園WARS』7巻より(千葉侑生/集英社)

招待してない、選りすぐりの殺し屋・テロリストたちもVIP狙い(その実、特定1名の幼児狙い)で大挙して押し寄せるこのイベントを、特殊教諭たちは大過なく成功させることができるのか。

「殺し合いの現場における生命の軽さ」という現実の重さの描写と、コミカルなギャグコメディ描写のギャップ、振り幅が売りの、出オチのような形で始まった作品ですが、前後して商業漫画に「(元)殺し屋もの」漫画が溢れつつあり、比較対象がたくさんできてしまいました。

『幼稚園WARS』7巻より(千葉侑生/集英社)

多くの「(元)殺し屋もの」漫画作品で

「殺し屋も人の子であり、人の心が在り、日常生活が在る」

というギャップをコメディモチーフにしていますが、この作品はそのギャップの一番重いところと一番軽いところを同時に踏み抜きに行ってるように見えます。

徐々に、殺し屋の死生観・人生観、「それでも人を殺し続ける理由」にクローズアップ。

現時点では、ギャップがキレに繋がって成功しているようにも、二要素が相殺されてただ中途半端になっているようにも、ややもすれば、「殺し屋ギャグ」としては重過ぎて「殺し屋の死生観」を語るには軽すぎる、支離滅裂になる寸前のバランスのようにも。

1巻出オチの「ギャップが面白い」以上は何も考えてなかった建て付けのか、それともこの危うく見えるバランスの上で作者が描きたいことがあるのか。

『幼稚園WARS』7巻より(千葉侑生/集英社)

やはり多くの「(元)殺し屋もの」漫画作品で作者が主人公に「不殺」を課す中、今なお主人公が人を殺し続ける作品セグメントの「味比べ」の相手は、『平和の国の島崎へ』になるでしょうか。

 

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