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#ドッグスレッド 1巻 評論(ネタバレ注意)

『ゴールデンカムイ』で大ブレイクを果たした野田サトルの新作。

自分はこの漫画は連載は追わず、単行本派で行こうと思います。

『ドッグスレッド』1巻より(野田サトル/集英社)

中学生の少年・白川朗(しらかわ ろう)は、フィギュアスケート選手として将来を嘱望されていたが、全日本ジュニア選手権の直前に、コーチ役だった母親を交通事故で喪う。

しかし、臨んだ全日本ジュニアでは驚異的な逆転劇で優勝。

にも関わらず、スコアと優勝を告げられたリンクで、椅子をリンクに投げ込み、スポンサーボードを破壊し、ライバル選手を殴る、狂ったような謎の大暴れを見せ、フィギュアスケート界から追放される。

ついたあだ名は「狂犬王子」。

『ドッグスレッド』1巻より(野田サトル/集英社)

母を喪い、フィギュアスケーターとしての将来を失った朗は、双子の妹・春名(はるな)とともに、母親の実家・北海道は苫小牧の祖父のもとに身を寄せる。

苫小牧の地元の中学校に通い出した朗は、ひょんなことから人数不足の弱小アイスホッケー部の助っ人として試合に臨むことに。

対戦相手は近隣の、全国レベルの強豪チームだった…

というアイスホッケーもの。

『ドッグスレッド』1巻より(野田サトル/集英社)

『ゴールデンカムイ』の前にヤンジャンで描いて打ち切られたアイスホッケー漫画『スピナマラダ!』(6巻完結)の、セルフリメイク作品とのことです。

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「『ゴールデンカムイ』をヒットさせたらリベンジでもう一度アイスホッケー漫画を描かせてもらう」

ことが、ヤンジャン編集部との約束だったんだとか。

アイスホッケーは日本においては、存在は知られていてもメジャーなスポーツとは言い難いかと思います。

自分もアイスホッケーのルールも、有名選手の名前も、強豪チームの名前も知りません。

アメリカとカナダでプロリーグ・NHLが盛んで「アメリカ四大スポーツ」の一角なのよね?ぐらい。

マイナースポーツ漫画の系譜というか、

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サッカーも『キャプテン翼』の1981年の連載開始当時は日本においてはマイナースポーツでしたが、

『キャプテン翼』1巻より(高橋陽一/集英社)

『キャプテン翼』自身の大ヒットが、日本におけるサッカーを国民的なメジャースポーツに押し上げる原動力・立役者になりました。

系譜という意味では、読み切りのバスケ漫画でデビューした後、『カメレオンジェイル』を経てバスケ漫画に回帰、『SLAM DUNK』の大ヒットによって、日本におけるマイナースポーツだったバスケットボールを隆盛させた井上雄彦が歩いた道に

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似ているようにも思います。

どちらも国民的ヒットを超えて国際的な大ヒットとなった作品、必然、「あの」『ゴールデンカムイ』の野田サトルによる本作『ドッグスレッド』にも期待してしまいますね。

ゲームルールや業界ルールを知らなくても描きようで競技もの漫画を読者が楽しめることも、既に『ヒカルの碁』も示していますし。

1巻としては、「フィギュアスケーター出身」という異才持ちの主人公が、「お約束」とも言える弱小チームに初心者として加入、読者に近い目線の狂言回しも兼ねてアイスホッケーのルールや見どころを伝えつつ、「才能持ちの初心者」である主人公の活躍が見せ場、というド王道のオースドックスな滑り出し。

『ドッグスレッド』1巻より(野田サトル/集英社)

『ゴールデンカムイ』でファンの心を掴み、また連載に至る経緯からも作者の並々ならぬ執念を感じずにはいられず、期待が高いのは当然かと思います。

自分もワクワクしています。

けど、『ゴールデンカムイ』初期の「ツカミ」の

「何をしでかすつもりなんだ、この漫画」

という野放図さを思い出すと、作者のアイスホッケーに対するリスペクトからなのか、「この作品は絶対に失敗したくない」というプレッシャーなのか、どこか硬さも感じなくもないです。

「王道」「横綱相撲」であることを自分に課しているというか。

なにより『キャプテン翼』『SLAM DUNK』のスタート地点と比べると、世間の作者に対する知名度や期待値が段違い。

『ドッグスレッド』1巻より(野田サトル/集英社)

1巻は期待に応えて、「悪くない」どころか「良い」ですが、

「この作者の本領はまだまだこんなものではないだろう」

という意味で、「とても良い」と言うのは、まだ温存していたくはあります。

なぜ『メダリスト』ヒロイン・いのりが焦がれてやまない全日本ジュニア金メダルをドブに捨てるような真似をしたのか、なぜ2010年なのか、なぜ交通事故が起きたのか、フィギュアを断念した双子の妹を配置した意味はなんなのか、など、気になるフックも複数。

「王道スポーツ漫画」として考えると、様々なプレイスタイルのライバルが出揃って、

「対決を見たい」

「朗がコイツにどう勝つのかが見たい」

と我々読者に思わせる、アクの強い生き様や執念を背負ったキャラクターを魅力的に、たくさん描けるところが、『ゴールデンカムイ』で示したこの作家の本領でしょう。

『ドッグスレッド』1巻より(野田サトル/集英社)

なにより、フィギュア仕込みの異色のアイスホッケーのプレイ描写が、先々とても楽しみですよね。

 

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