ブラック労働環境気味な会社で働く40代(前巻で45歳に確定)サラリーマンの佐々木。
日々の唯一の癒しは、会社帰りに寄るスーパーの2番レジ担当、清楚で可憐な山田さんの明るい営業スマイルだった。
山田さん不在で「ファン活」が空振りに終わったある日、喫煙所を探す佐々木を手招きする女。
スーパーの裏の従業員用の喫煙スペースに佐々木を手招きした、後に「田山」という名であることが判明する喫煙者のその女は、「山田さんの同僚」を名乗り、佐々木が山田さんのファンであることも承知だった。
かくして、スーパーの2番レジで清楚で可憐な山田さんの笑顔に癒される佐々木の日常に、その後スーパーの喫煙所でワイルドでジト目で「んははは」と笑う"はすっぱ"な田山さんと雑談するルーチンが加わった。
山田さんと田山さんが同一人物だとも気づかず…
という大人の?未満恋愛ラブコメ。
1巻発売の1週間後ぐらいにタイミング良く一昨年の「次にくるマンガ大賞」WEB部門の1位獲った話題作。
本作で正体を隠しているヒロイン、山田=田山は「すぐバレるだろう」「ちょっとからかおう」と必然性なく軽い動機で正体を隠すことを始めたものの、佐々木が延々気づかないので言い出すタイミングを失って、
「佐々木が未満恋愛で2人の女性に好意を持っているような状態」
「山田=田山のペルソナ間でヤキモチを焼く状態」
など、必然性のない軽い土台の上に、一人二役が織りなす三角関係めいた人間関係の機微やちょっとしたドラマが始まってしまっています。
「山田=田山」の役割分担は、いわゆるSNSの「裏垢」そのもの。バレても世界は滅びないけど、今の居心地の良い関係が壊れるのは怖いよね、っていう。
佐々木の年齢が45歳で確定したので、24歳の山田山とは21歳差。
わかりやすく説明するためのジャンルとしては「未満恋愛ラブコメ」に分類されるべきなんでしょうけど、描写を見ると作者はまだ2人の関係にラベルを貼りたくないのかな、という感じもします。
さて。
4巻まででちょっとずつ脇役を増やしつつも、タイトルがタイトルなので群像劇にはあんまりいかず、という感じ。
主人公の二人にスポットを当てつつ、二人の年齢の割りには(失礼)未満ラブコメをじっくりやってます。
居心地の良い関係に安住して互いに癒しを得つつ「この関係が失われるのは怖いなあ」と思っているのも相変わらずですが、
「相手には客としか思われていない」
「相手には推し店員としか思われていない」
「相手にはタバコ友達としか思われていない」
とも互いに思いつつも、
「自分は相手のことを異性として好きかもしれない」
と4巻にしてようやく自覚が、二人ほぼ同時に芽生え始めました。
互いに成人の独身同士で一見「恋の障害」はないように見えて、
佐々木には「自分はだいぶ年上のおじさんだ」、
山田山には「自分は佐々木に嘘をついている」、
という引け目があって、年齢の割りには(失礼)ここからが長そうでもありますね。
大人になってもというのか、大人になったからこそというのか、「勇気を出すのが怖い」というより「今の関係を壊すのが怖い」というか。
特にこの二人の社会的なつながりはだいぶ細く、互いの好意以外の必然性がない関係ですし。
「自分が佐々木の立場だったら」と考えると、好意を自覚しても伝えないだろうなー。
という、いい歳して(失礼)未満恋愛なじれったさを楽しむ漫画です。
今巻も、良い。
aqm.hatenablog.jp
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