#AQM

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#僕の心のヤバイやつ 2巻 評論(ネタバレ注意)

「あっ…あの…」

「え?」

「えと…(あれ?何で呼び止めた)
 えー…明日は…学校来る? (は?何聞いてんだ一体)」

「うん 行く 図書館も行く 絶対」

「世の中に絶対はないんだよ」

「細かいね」

「(僕は学校が楽しいらしい)」

 

「みつどもえ」の作者の現作。

主人公は、雑誌の専属モデルもこなす陽キャ美少女・山田を殺す妄想をする、中二病で陰キャでぼっちな男子中学生。

図書館で偶然見かけた彼女は、一人でおにぎりを頬張りながらゴリラのような鼻歌を歌う、意外と割と残念な感じだった…

コメディの皮をかぶせた、エロで独りよがりで優しい中学生の、初恋の繊細な機微の描写。まるで大槻ケンヂの青春小説みたい。

はてなの屁理屈屋のおっさんらの一部が萌え狂ってんですよね、この漫画。

 

なんかここんとこ女優さんが主人公の漫画をよく読むんですけど、演技のメソッドで「役の感情を自分の心の中で過去の類似の経験から再現する」、もっと極端になると「役の感情を知るためにあえて役と同じような経験する」というやり方がよく出てきます。氷の王女の感情を理解するために、月影先生に精肉卸の巨大冷凍倉庫に閉じ込められたりとか。

 

この漫画は基本的に中学生の日常もので、ドラマチックな大きな事件なんか起こらないんです。自分の初恋と比べたら主人公もヒロインも性格もスペックも全然違います。

しかし行間から、その子を好きなことを初めて自覚したり、その子に会えるのが嬉しくて学校に行くのが楽しかったり、もしかして相手も自分のことを好きかもしれないと思ってどきどきしたり、読者の過去の経験からその初恋の感情だけを生々しく、「キャラの感情を読者の心の中で過去の類似の経験から再現して追体験させる」こと、思い出さなくなった初恋の感情の記憶を叩き起こすことに成功している漫画です。

成就しなかった自分の初恋の分も上手くいって欲しいような、「初恋が成就した」という未知の体験によって主人公の感情と乖離しないよう結末はぼかして欲しいような、複雑な気持ち。

 

初恋から何十年も経って、相手の顔もおぼろげにも思い出せなくなってしまうと、「もしかして自分の初恋は山田って子だったっけ?」「自分の初恋相手も確かこういう子だったっけ?」と錯覚してしまう。

はてなのおっさんらが夢中になるのも頷ける話で、「僕の心のヤバイやつ」とは、まったくもって上手いタイトルをつけたものだと思います。

 

僕の心のヤバイやつ 2 (少年チャンピオン・コミックス)

僕の心のヤバイやつ 2 (少年チャンピオン・コミックス)

aqm.hatenablog.jp

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