「赤ちゃんになりたい」
「は?」
「だってさー…
(はっ 赤ちゃんになったらソシャゲができない…!!
ソシャゲ 競馬 音ゲー パチスロ FPS エロゲ STG RPG
全てができない 赤ちゃんじゃなくていいや)
自己解決しました」
「そう…」
「モラトリアム文学」と呼ばれるジャンルや「サナトリウム文学」と呼ばれるジャンルがありましたが、共通するのは「一般的」な社会から隔絶された時間や空間を舞台に、あとなんでしょね、「一般的な社会」から見えない切り口で、自己の内面や人生と向き合う思索の比重が高いところでしょうか。
「ニート」という言葉は'90年代末の英国の調査機関のレポートで登場し、2000年代初頭に日本でも紹介されて広まったとされ、今ではすっかり普及しましたが、近年の漫画の世界では地味にポピュラーなテーマで、「働かないふたり」とか、古くは「NHKへようこそ!」とか。
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なんで漫画でニートがポピュラーからと言うと、理由の一つに、どうも連載を持たない(持てない)時期の漫画家の生活がニートに比較的近く、取材的な意味で描きやすいことがあるようです。
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というか、あとがきによるとこの漫画はそうした動機によって描かれたもののようです。
「3年間いろんなマンガを描いたんですが全部ボツで…
ネタ尽きたんで自分の日雇いに行った時のことを
マンガにしたらすげーほめられ いろいろあって今です」
金無歩(かねなし あゆむ)は29歳、無職。会社を退職し日雇いのバイトで糊口をしのいで暮らしている。アパートの隣には会社時代の後輩の戸成隣(となり りん)が住んでいて、互いに親しく部屋を出入りしている。
そんな歩の自堕落で虚無的な無職生活日常ギャグコメディ4コマ。くだらなく他愛のない、陰キャでニートなあるあるネタ系。
なんというか全体的に気弱で優しい話が多い感じ。回想でほの見える会社時代の2人の出会いとか、ちょっとジーンとくる。
ストレスの多い社会でご多分に漏れず私もちょいちょい「仕事やめてーなあ、やめたらどうなるかなー」とか考えるんですけど、そうした層に仕事辞めたらどういう感じか、シミュレーションして見せる需要があるあるのかな、と思います。読んでて心理的に非常に親近感が湧きます。
そうした疲れた層に向けてるせいか、「ニート漫画」というジャンルは繊細で内向的で詩的で思索的で刹那的で、良い友人に恵まれるファンタジーも相まって、他愛ないけど優しい話が多いです。この漫画もそういう漫画です。
ユルい割りにおかしなテンション、間というか風味というか雰囲気というか、も独特で、面白かった。
(選書参考)
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