#AQM

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#トニカクカワイイ 15巻 評論(ネタバレ注意)

理系天才フリーター・ナサくんと、謎多きクール美少女・司(つかさ)さんの、なんか可愛い男の子と女の子の新婚生活ラブコメ。

SFファンタジーな司さんの秘密を匂わすだけ匂わせつつ、触れずに初々しいラブラブ新婚夫婦の日常に的を絞って、余力を感じるというかまだ変身を残して余裕、みたいな。

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「トニカクカワイイ」15巻より(畑健二郎/小学館)

そろそろ読むのをやめようかな、と思っていたところでした。

このイチャラブ系のラブコメ漫画が「なにか」を隠し持っているのは1巻時点で誰の目にも明らかでしたが、その「なにか」につなげる伏線としての日常パートが14冊に及び、まあ端的に言うと「そろそろひっぱりすぎじゃね?」と。

読みたい漫画も多いですし、ウマ娘もやんなきゃいけないし、新刊が出てもどうせ内容が代わり映えにしない作品に無限にお付き合いはできません。

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「トニカクカワイイ」15巻より(畑健二郎/小学館)

自分が一番長く現在も読み続けている作品はおそらく「ファイブスター物語」で、かれこれ30年以上の付き合いになりますが、読み始めたあの頃に「この作品は30年経っても完結することなく続く」と知っていたら、果たして手に取っただろうか?と思います。

「ファイブスター物語」の、奇しくも同じ15巻の感想をブログに書いた際についたブコメをご紹介します。

#ファイブスター物語 15巻 評論(ネタバレ注意) #fss_jp - AQM

本作のファンだった友人の一人は、15巻を見ることなく今春亡くなりました。80年代アニメが原風景となっている世代として深く感じ入りながら拝読した次第です。

2019/12/10 18:37

b.hatena.ne.jp

作品は表現物として永遠に残るかもしれませんが、残念なことに読者が最後までついていけるとは限りません。不老不死ではないので。

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「トニカクカワイイ」15巻より(畑健二郎/小学館)

上映時間や放映時間、あるいは放映期間(クール)があらかじめ定められ限られている類の映像作品や、本の厚さで作品のサイズがわかる単巻の小説などと違い、続巻が刊行される類の小説や漫画は終わりが見えないんですよね、読者から。ある種の恐怖があるんです。「自分はこの作品の完結を見届けられないんじゃないか」という。

「FSS」は作者が当初から「自分のライフワーク」と宣言していたのでまだ覚悟はできてましたけど、多くの漫画作品は、思いもよらぬ急な完結(打ち切り)を迎える作品が多くある反面、思いもよらぬ長期連載に「なってしまう」作品もまた多くあります。

読者が読みたいサイズ・期間と、作者や出版社が描きたいサイズが噛み合わない漫画というのは、まるで司さんが不安に思ったように往々に不幸です。

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「トニカクカワイイ」15巻より(畑健二郎/小学館)

やーアレね。面白かったね今巻。ようやく羽化したというか、待った甲斐があったというか、前巻までで切ってなくてよかったわ。

読者というか私が焦れてもう耐えられない限界ギリギリと、作者の構想が噛み合って、結果として幸福な漫画だなと思いました。

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「トニカクカワイイ」15巻より(畑健二郎/小学館)

余談ですけど、吸血鬼をはじめとする不老不死のキャラクターをモチーフにした作品は、別に「葬送のフリーレン」に始まった話ではなく昔から定番のテーマですが、ここ最近また特に増えてきたように思います。

aqm.hatenablog.jp

この漫画の次は吸血鬼をテーマにした「よふかしのうた」を読みます。

描く側も、出版する側も、読む側も、かつて「子どもが読むもの」だった昔からそれぞれに歳をとって、漫画という文化が「永遠ならざること」、要するに「死」について考えるお年頃になってきたのかね、とあまり根拠もなく思ったりします。

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「トニカクカワイイ」15巻より(畑健二郎/小学館)

第1部最終巻、お見事でした。

やー、第2部、楽しみだわ。

 

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