漫画の上手、皆川亮二の短編集。
描かれた年代はまちまちで、「ARMS」より古い作品も。
「転送者」前後編。
世界を左右する技術を将来開発する女子高生を、その前に暗殺しようとする未来からの刺客&未来からの護衛者、という、どこかで聞いたことあるような筋書きのSFバトルアクション。
と思ったら自分で言っちゃったよ。
「ARMS」の前に描いた読み切りで、主人公がタイムトラベルではなく、現代人の脳に意識をインストールする「シュタゲ」タイプのタイムリープもの。
今から見るとあらすじは陳腐で安直ですけど、まあ時代かねというのと、当時このタイプのタイムリープは割りと目新しかったんじゃないかなと思います。
主人公が未来人で、現代人に「インストール」するタイプなせいで、連載ものにすると毎回主人公のルックスが変わって読者が混乱する、という致命的な欠陥があり、連載に至らず、代わりに連載となったのが「ARMS」だった、とのことです。
こっちはこっちで面白そうだけどね。
「ユーキャンドゥーイット?」
野球もの短編。
墓場でひとりピッチングの練習をする中学生に部活帰りに指導していた、野球部のキャッチャーの補欠が、翌年の甲子園予選の試合で高校生になった彼と試合で再会する話。
話としては小ネタですけど、ピッチング・バッティングの絵が躍動感があって「あれこの人野球漫画もイケるやん」という。
話も小噺みたいな大した話じゃないんですけど、クスッときて短編らしく楽しく読めます。
「奪還」
第二次世界大戦末期の欧州を舞台に、ドイツ兵とティーガー戦車を主人公にしたサイレント(セリフなし)短編。
セリフが一切ないので読み込まないと話が頭に入ってきませんが、読み込む気力が起こらないので結局なにが起こった話なのかよくわからない漫画。
戦車描くのめっちゃ上手いな!とは思うんですけど、動いてる野球やママチャリのおばさんに比べて漫画的に戦車の動いてなさもすごいな!
動いてない戦車がイラストとしては眼福なこと以外は特になにも、という感じ。
「S.O.L」
冴えないサラリーマンの青年がある日急に生命を狙われるようになり、ラピュタのドーラみたいな豪快なママチャリおばさんに助けられる、というアクションもの。
AKIRAにもごっついおばさんいたなあ、と絵柄もコミで思い出すわ。
おばさんらしさ?を活かして、ママチャリでカーチェイスを繰り広げ、ヤクザの土手っ腹を剛力でニンジンで刺す「野菜で人を殺す」というわけのわからないアクション活劇が楽しい。
「the Killing Pawn」
読み切りとして週マガに載った作品だそうですが、サンデーコミックスに収録という変わり種。
面白そうな導入から始まった割りに、
駒を指す威力で相手を吹っ飛ばして勝つ、というくだらない将棋漫画。
しょーもないw
通してみると描く方も読む方も意外と時代性に左右される作家さんなんだな、というのと、連載を見据えた短編と楽に描いた短編の落差が割りと激しいのね、という感じ。
「転送者」あたりはリメイク版or連載版、読みたいなあ。
(選書参考)
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