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#図書館の大魔術師 5巻 評論(ネタバレ注意)

大戦を止め災厄を退けた7人の大魔術師のうちの1人が「過ちを繰り返さぬよう」と大陸の中心に図書館を建立した、中世ファンタジー世界。

それから100年近くの後。村の貧民窟で暮らし、エルフのような容貌で「耳長」と蔑まれ、本が大好きなのに村の図書館の利用も禁じられた幼い少年・シオ。ある日、本の都アフツァックの中央図書館の知識エリート・司書(カフナ)たちがある目的を持って村を訪れ、少年に出会う。ボーイ・ミーツ・ディスティニー、まるで1本の映画のような1巻から始まった超正統派・超本格派ファンタジー。書物を守るために魔法と技術を駆使して戦う司書たち。

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「図書館の大魔術師」5巻より(泉光/講談社)

それから7年、6歳だったシオも13歳になり、司書になる試験を受けるために本の都アフツァックへ。

1巻のプロローグ、2〜3巻の司書試験編が終わって、新章突入、3巻からシームレスに司書見習い編。

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「図書館の大魔術師」5巻より(泉光/講談社)

本格的な見習い研修期間が始まり、バトルアクションはいったん鳴りを潜めますが、現実の差別や因習をモチーフに、フィクション世界で展開する濃密で重厚な情報量。

大作RPGの分厚い設定資料集を渡されたような気持ち。

でも重くなりすぎず、長い説明ゼリフがクドく感じないのは、ドキュメンタリーでなくエンタメを目指す漫画作品であると作者が1巻で既に示した信頼故か。

 

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「図書館の大魔術師」5巻より(泉光/講談社)

たぶん無意味に「置いてある」設定は一つもなくて、すべて物語の必然性と結びついてるんだろうなー、という信頼。

前巻までに描かれた民族差別に加え、性別差別、家柄差別、障がいと言っていい体質持ち。

5巻に至ってこの期に及んでようやくタイトルロールにして真のヒロイン登場。

ネタバレですけど、「こんな子いたっけ?」と思った表紙の子で、この子こそが後の「図書館の大魔術師」なんだそうです。えらい可愛いな。

ライオンやトラの赤ちゃんは一見サイズも猫と似てますが、将来は猫の10倍以上のサイズの大型肉食獣として成長することが約束されていることを示すように、脚がぶっといですが、この漫画に対して似たような「脚のぶっとさ」を感じます。

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「図書館の大魔術師」5巻より(泉光/講談社)

あのアレ、「グインサーガ」「ファイブスター物語」クラスのサイズの物語の登場を見守る気持ち。きびしーなコレ。

作者がどんな方かあんまり存じ上げないですし、おそらく自分よりずっとお若い作家さんだと思います。

決して遅筆ではない十分なペースで、「司書試験編」を2冊で片付けたとおりコンパクトに刊行されてますが、それでも作品のサイズからして完結する頃にはたぶん自分もう死んじゃってんじゃないかなコレ。

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「図書館の大魔術師」5巻より(泉光/講談社)

神様に「一作品だけ未来の完結まで読ませてやるから選べ」と言われたら迷わずこの漫画を選びます。

10代・20代のお若い漫画好きのみなさんは、自分の代わりにぜひこの作品の完結を見届けてほしいし、作者には健康管理に気をつけていただきたいと思いますし、それまでの間は講談社もアフタヌーンも潰れずにぜひ存続してほしいと思います。

自分もできれば完結に立ち会いたいので、せいぜい野菜を食べて睡眠をちゃんととって人間ドックもこまめに受けよう。

早死にしたくない理由が増えたと思えば、まあ、めでたいこっちゃ。

 

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