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#2.5次元の誘惑 10巻 評論(ネタバレ注意)

先輩たちが卒業し、高校の一人漫画研究部として日々部室で二次オタ活動に勤しむ奥村(高2♂)。

学校が新入生を迎えたある日、漫画研究部のドアを叩く一人の新入生がいた。奥村と同じく古の名作「アシュフォード戦記」「リリエル外伝」とそのヒロイン「リリエル」をこよなく愛する彼女・天乃リリサは、キャラ愛が高じて高校生になったらコスプレイヤーになることを夢見ていた。

で始まるコスプレ青春もの。

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「2.5次元の誘惑」10巻より(橋本悠/集英社)

今巻は文化祭で漫研と生徒会の合同のコスプレ喫茶編。


先日、「古畑任三郎」の全話入りBDボックスを入手しまして、

1期の1話から順次観ていっています。木の実ナナの泣きの演技すごいね。

自分は特に、古畑に秘密を暴かれ観念したあとに犯人が古畑と交わす短い本音トークのシーンが一番好きです。

「論理的でないなら、自首した方がマシだ」

「だったら、レクイエムを弾けばよかった」

罪を暴かれてなお、殺人そのものは後悔していない犯人のパーソナリティの本質や狂気が仄みえて、静かながらドラマティックだなあ、と。

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「2.5次元の誘惑」10巻より(橋本悠/集英社)

実は、というほどのことでもなく、観てたら誰でも思うことですが「古畑任三郎」は毎回同じことの繰り返しです。

冒頭で殺人が行われ、警察が呼ばれ古畑が現れ、犯人と会話の駆け引きをし、視聴者に「おわかりですか?」と語りかけ、犯人の秘密を暴き本音を語らせ、エンディングテーマと共に去っていく、定型のフォーマットの繰り返しです。

それでも飽きられなかったのは、三谷幸喜の瀟洒な脚本、変わる設定と舞台と動機とトリックで変化がつけられていたこともさることながら、ひとえに毎回の犯人役を務める大物俳優たちによって作品のテイストに大きな変化がつけられたことに尽きると思います。

役者が変わるだけで似たような話を何度でも楽しめる、というのは、作劇上面白い手法だな、と思います。視聴者・読者を驚かせるために新展開に頭を悩ませる数多くの作家たちの苦労は一体なんなんでしょうか。


実は「2.5次元の誘惑」も似たような話の繰り返しで、「古畑」の「殺人と推理」の代わりに、「抑圧からのコスプレによる解放と成長」が、役者ならぬキャラを替えて何度も繰り返されます。

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「2.5次元の誘惑」10巻より(橋本悠/集英社)

今回の役者は優等生の生徒会副会長です。

両親や教師、友人たちの前で良い子を演じる彼女は、コスプレによって自らを縛る抑圧を解放し、有り体に言うとカミングアウトをして、窮屈で後ろめたい感情から脱却し、少しだけより自由になります。

この漫画はスポットが当たるキャラを替えながら一貫してそれを繰り返し続けています。

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「2.5次元の誘惑」10巻より(橋本悠/集英社)

繰り返されること自体が作品の面白さを損なうことは実はないように思うんですが、「古畑任三郎」の面白さがその回のゲスト犯人役の大物俳優を自分が好きか嫌いかで左右されるように、スポットが当たるキャラによって面白さがブレるところがまた少し似ているな、と思います。


ちなみに「古畑任三郎」は数多くの殺人者を生み出しながら、古畑自身は(確か)ついに殺人を犯さずに終了しましたが、「2.5次元」でも自身のコスプレにハマらない人物が主人公として配置されています。

抑圧を抱えながらコスプレに頼れない彼が、終盤でいかに自分を解放して作品を締め括るのか、今から楽しみです。

 

あと全然話変わりますけど、

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「2.5次元の誘惑」10巻より(橋本悠/集英社)

今巻もののぴが可愛かったです。

 

 

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