西尾維新の原作を大暮維人がコミカライズして週刊少年マガジンに掲載の鉄板漫画。キャラデザVOFAN準拠。こんなに美麗な絵でコミカライズされると原作冥利に尽きるでしょうね。ちなみに自分は原作とアニメを消化済み。
順番を入れ替えて、羽川の猫のエピソードの前に「こよみヴァンプ」・傷物語。
化物語シリーズの原作小説は、近刊はちょっと追えてないんですけど、20冊ぐらいは所蔵してて読破済みなんですが、なにしろ冊数が多いのでなかなか再読していないです。最後に読んだのは何年前だろうか。特にアニメで同じ話が観れちゃうってのもあるんですけど。
このコミカライズの今巻の原作「傷物語」も読んだのはだいぶ昔で、あんまりもう憶えてなくて、劇場版三部作も第一作は観に行ったんですけど、バタバタしてた時期でそれっきりになってました。
要するに、あらすじはぼんやり憶えてるけど、細部は忘れてる状態でした。
8巻から始まった「傷物語」編も終盤になって気がつけば7冊目。現時点の全14冊のうち、半分を「傷物語」が占め、次巻(おそらく「傷」完結?)にも続いて過半を超える入魂のエピソード。
このコミカライズに関しては、
「長大な原作小説に対してどこまでをコミカライズするんだろう」
「『化』『傷』で終わりだろうか」
とずっと思いながら読んできたんですが、今巻は唸るものがありました。
そうきたか!ここであのエピソードを吸収するのか!
聞き役に羽川まで加えて!実質「傷鬼」やんけコレ!
このやり方だったら全部をなぞるようにコミカライズする必要もなくなるな!
継ぎ足し継ぎ足しで描かれていった原作の、あらかじめユクスエを知っているが故の、伏線・予告の張り方も秀逸。
原作を知っているファンが再体験するための、基本的にファンアイテムとしてのコミカライズだと思っていたんですけど、歴史に対する大河歴史もののような、「知っている出来事が物語としてどう再構築され脚色されるのか」の面白さが生まれていて素晴らしいです。正にコミカライズの醍醐味。
前巻は大暮維人の美しい筆致を実にくだらないエピソードに費やした、その対照と無駄な贅沢さが最高でしたけど、今巻はその大暮維人の美しい筆致が、このシリーズらしく美しく哀しいエピソードに遺憾無くふさわしく発揮された巻でした。
ラノベのコミカライズは長期連載になりがちなので、章ごとに作画家(漫画家)がリレー形式で交代していくのも珍しくないんですけど、この作品はこの巻のせいで後任の引き受け手がいなくなったかもしれないなと思いました。
このシリーズの美少女ラブコメ要素やギャグコメディ要素の奥底で通底し続ける「永遠を生きるものの悲哀」「人と怪異の哀しく美しい交わり」を絵で表現するにあたって、大暮維人以上にふさわしい作画がちょっと思い浮かばない。
あー、この筆であのエピソードもそのエピソードも読みたい。
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