#AQM

あ、今日読んだ漫画

FSS (NT2022年8月号 第18巻相当) 評論(ネタバレ注意)

ファイブスター物語、連続掲載継続中。

「第6話 時の詩女 アクト5-1 緋色の雫 Both3069」。

扉絵コミで13ページ。

  

他の号はこちらから。

aqm.hatenablog.jp

以下、宣伝と余談のあとにネタバレ情報を含んで論評しますので閲覧ご注意。

 

 

 

 

 

 

 

(余談)

今月も発売日から3日遅れでニュータイプが届いたんですけど、3日遅れも4日遅れもたいして変わんねえかと思ってサボってました。

そうこうしてる間にチェンソーマン第二部開始の日。

shonenjumpplus.com

現実世界ではロシアのウクライナ侵攻に続いて、元国家元首が暗殺(あれを「暗殺」と呼ぶべきかは議論の余地があるかもしれませんが)される事件が発生しました。

国民にメンタル面でも思想面でも影響を与えるような衝撃的な事件ですが、「戦争」「政治」「生き死に」など、近いテーマを扱う漫画作品やその読者はどう影響を受けるでしょうか。

 

(扉絵)

薔薇の剣聖マドラ・モイライのカラー設定画と解説テキスト。

 

(本編)

後方から戦況を眺める、バッハトマのジィッドとアーリィ。フィルモア本陣、旗艦で元老の指示を回想するミヤザ長官。前線で奮戦するケーニヒとオキストロ。フィルモアを包囲する萌葱騎士団とナイアス。フィルモアの増援に向かわないことに不本意げなクバルカンのレイバック法王と、現場を預かるノンナ・ストラウス政神官長の思惑。

「国家と戦争、そして経済。一筋縄ではいかない目論見が交差する……」(ニュータイプ2022年8月号より)

 

(所感)

事件

事件があると、世間が動揺している間はフィクションで類似のシーンが描かれにくくなることがあります。

 

ペース

FSSは連載だいたい18回分前後(約1年半)ぐらいで単行本一冊分ですが、第18巻相当分は今月で第3回目です。

「緋色の雫(Nacacara Defence)」の後に起こるであろう展開を考えると、ボリューム的に残り15回(第18巻)はほとんど丸ごとフィルモアの話で終わるかもしんないですね。18巻ラストはたぶん…みたいな。

 

「3年前」

先月号のアレはやっぱ「32年前」の間違いだったそうです。

 

マドラ

ミラージュでの扱い、騎士としての扱い、剣聖としての扱いが割りとフワッとしてたところがメタテキストで公式に明言されました。

オペラピンクは、ラキシス(後期型)親衛っぽい色ですけど、アトロポスとクローソーも含めて「運命の三女神」のイメージカラー。まあでもさすがにラキシス以外あんま関係なさそうだな。

 

ジィッドとアーリィ

バッハトマの若手の出世頭で団長同士なんで不思議でもなんでもないですけど、「タメ口なんだ」と思った。

アーリィ相変わらず可愛いな。早よミラージュ入れよ。

ジィッドはニナリスいじめんな。早よ死ね。

 

国家の枠のない騎士団

ブーレイ傭兵騎士団は登場済なのであれですけど、他なんかあったっけな。元老が雇った大軍ってなんざましょ。カリギュラか。

国家の枠がないと、戦闘で勝っても占領ができないので「なんのために戦争してんだっけ感」MAXに。

 

バルバロッサ王とティルバー女王

バルバロッサの服が宇宙戦艦ヤマトの制服みたい。

ルックスが悪すぎてアレなんですけど、ミューズに代わって汚れ役を務めるノンナとやってることは大して変わんないという。ダイ・グは善人すぎて自分だけではナカカラを領地にできないので、必要悪というか。

クバルカンと違うのは、フィルモア帝国が巨大すぎて皇帝すら替えの効く駒で、故に死なせることも選択肢になり得るところ。たぶんフィルモアの歴史上、初めてのことでもないんだろうと思います。

バルバロッサ王、ティルバー女王、などの怖いところは、自分たちが死ぬことが帝国の利であれば自分の生命も駒にしそうなところ。眼が菱形の三白眼、「フィルモア王家の眼」が今号も強調されてます。

わかんないのは、元老と協定を結んだ枢軸(の幹部)も元老の狙いを理解している、イコール、フィルモアがナカカラを押さえることにボスヤスフォートが協力的であることです。

フィルモアに協力的というより、「非AKD」勢力を温存したいんでしょうかね。

あるいはバッハトマが起こした戦争で「大物」の血が流れることを求めているのか。魔導大戦の開戦時、バッハトマが星都ペイジ(ベイジ)を焼いた際にハスハの首脳(コレット王、ムグミカ、カイエン)が戦死して以降は、政治的「大物」はほとんど死んでいません。

 

オキストロの言い訳

オキストロがブーレイに接近されたことを読者向けに言い訳をしています。

「巨大ロボットで戦闘をするほどに高度に科学技術が発展した世界において、なぜ戦争で巨大ロボットが接近戦を演じなければならないのか」

というのは巨大ロボットSFの永遠の課題で、現代の科学技術の延長で言えば、

「超長距離の索敵・誘導兵器・無人兵器・狙撃で戦えばよくね?」

と普通なります。

メタな理由は「接近戦の方が絵的にかっこいいから」なんですけど、主人公たちに趣味で生命を賭けさせるわけにはいかないので、広大な宇宙空間で戦闘する『ガンダム』では

「ミノフスキー粒子(ミノ粉)なるものが超広域で索敵・誘導をジャミングする」

という理屈(嘘・フィクション)がとられました。

ミノフスキー博士は「ミノフスキー粒子」と「モビルスーツ」の二大発明で2年連続ノーベル賞受賞に値しますが、モビルスーツ自体がミノフスキー粒子環境下での主力戦闘兵器として発達したので、ある意味マッチポンプ的。

FSSにおいては

「騎士とGTMの反応速度と駆動速度が遠距離兵器を回避させるから」

に並んで、

「ファティマがスーパーハカーだからです!!」

という理屈(嘘・フィクション)が、あらためてオキストロの口から。

GTMというハードウェアと騎士とファティマという(情報処理と操縦を行う上での)ソフトウェアの性能が、現代科学の延長線上の概念・思想を超越してんですね。

(他に、過去には「衛生軌道上(宇宙)からの大出力ビーム砲撃は星団法違反」も)

 

ちょっと趣旨ズレますが、超長距離狙撃兵器としては高出力のバスターランチャーがあり、作中これまで4回〜5回かな?発射されたシーンがありますが

①KOG(ソープ+ラキシス)が発射

 →標的が戦艦と、騎士じゃないユーバー大公が乗ったヘルマイネだった

②シーブル戦艦とシュペルター(ルン)が発射

 →発射目的がそれぞれ「AKD地上軍の殲滅」と「バスター砲の対消滅」だった

③ヴンダーシュッツェ(アラート・エックス)が発射

 →標的がフロートテンプルだった

④ヤクト・ミラージュ(ログナー、ベルベット・ワイズメル)が発射

 →標的が惑星カラミティだった

⑤KOG(恋ダウド)が発射

 →標的がなんか神様だか悪魔だかだった

で、だいたい的がデカくて避けない奴ばっかりで、まともな騎士とGTM(MH)に向けて発射されたシーンは確かありません。どっかに「MHに射っても避けられる」って書いてたよね。

まあそもそも、バスターランチャーの発射自体、確か星団法違反でしたけど。

 

ちなみに自分はFSSの影響で『スターウォーズ』の「ジェダイの騎士」の能力も勝手にFSSの騎士と同等に見做していたので、FSS連載開始の後に公開されたエピソード1〜3でジェダイの騎士が雑兵の光線銃で撃ち殺されるシーンを観て「ぇぇ…当たるの…死ぬの…」ってなりました。

 

GTMラミアス・Isi〜ステンノ

なんか1騎増えとんな。

「主力GTMに変更される前提」ってなんでしょうね。

「主力」ってユーレイの後継ってこと? 「指揮・駆逐型の主力(レア)」ってこと?

 

ナイアス

ナイアス率いる、フィルモアのアグレッサー(教導)部隊たる萌葱騎士団は戦場でフィルモア軍と対峙して殺すことも厭わない、気合いの入った部隊であることは既に提示済なんですけど、今号のナイアス見ると「皇帝殺し」も理解した上で厭わないようです。

「元老の駒」に過ぎないことには本人的にもフィルモア的にも政治的な理由や合理性があるのはわかるし良いんですけど、ヨーンにドヤ顔で語った「気合いの入ったアグレッサー」論がただの口実・嘘でしかなく、実態はただの「納得いかなくても元老の言いなりで逆らえません」だったの、くっそダセえわ。

ブラフォードやヨーンをはじめ多くの騎士が「自分の力の振るい方」に葛藤する中、元老の陰謀に主体的に賛同するでもなく「笑える」と反発しつつ、「でも元老の命令なので、自分はそういう育ちなので」とあっさり肯定しちゃって、MOBのチンピラ騎士以下のFSS史上最も「自分の意志がない騎士」に。ファティマか。

ファティマと違ってそれをグダグダ言い訳してんのがまたくっそダセえわ。

お前にはガッカリだわ。

 

ノンナ・ストラウス

「SFおとぎ話バリヤー」が通用しづらい話題な上に読者に歴史と経済の諸説ある各派のプロがゴロゴロいて、それこそ「一筋縄ではいかない」テーマ。

地球の中世〜現代〜未来に相当する文化や思想が入り混じるジョーカー星団の経済を近代経済の尺度で深掘りするのは、割りとパンドラの箱な気がする。

 

 クバルカン法国

今号でノンナが「騎士国家」を名乗っていて、ミューズをはじめ善人キャラ揃いの「徳」で、読者のイメージが良い国。

が、法王を頂点としている時点で宗教国家ですが、宗教・政治・軍事に加えて経済の権力までが集中して一体になっている国家って、2022年7月の日本で生きる自分からすると、なにげにぶっちぎりでウルトラ独裁のヤベえ国。

そういう意味ではレイバック法王が部下からゾンザイな扱いを受けているのが、むしろ健全に見える。