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#アトワイトゲーム 1巻 評論(ネタバレ注意)

『四月は君の嘘』『さよなら私のクラマー』作者の現作。

期待の大きかった女子サッカー漫画『さよなら私のクラマー』が、作者的な満足感・達成感はともかく、多くの読者的には「ええ!?ここで終わり!?」とやや不完全燃焼な完結の仕方だったこともあり、

「見せてもらおうか、『さよなら私のクラマー』を描くのを終わらせてまで描きたかった漫画を!?」

というところ。

新作は、飛竜が空を飛び剣士や銃士が闘う、中世ファンタジー世界。

バーランド領の貿易都市・クーロン。10万人の人口の10人に1人が所属するとされるマフィア組織「蛇輪」が支配していた。

『アトワイトゲーム』1巻より(新川直司/講談社)

組織の末端に所属し、周囲に侮られながらモンスターの死体漁りで生計を立てていた黒髪の少年・マルコは、街に巨大な飛竜(運搬竜)が墜落する現場に遭遇。

人に使役され口内に貴重な荷物を収納して運搬する運搬竜の口をこじ開けると、中には幼い少女が。

野望と陰謀のために領主の娘である少女を拉致した「蛇輪」幹部によって彼女が回収されることを見かねたマルコは、平穏に暮らす決意と昼行燈の仮面を脱ぎ捨てて、「蛇輪」幹部に剣を向けた。

『アトワイトゲーム』1巻より(新川直司/講談社)

という、「空から女の子が降ってきた」系ボーイ・ミーツ・ガールの、冒険ものというか逃避行もの。

領主の娘で幼いながら剣の達人である少女・アトワイト。

少女を領主のもとに送り届けるべく逃げる、能ある鷹は爪を隠す系の少年・マルコ。

派閥争いを繰り広げつつ二人を追うマフィア各派。

少女の奪還に来たのであろう、異形の大剣を振るう女剣士。

『アトワイトゲーム』1巻より(新川直司/講談社)

空から女の子が降ってくる冒険譚という意味で『ラピュタ』、マフィア主義が主導して話を転がす世界観は『ジョジョ五部』、「ドラゴンころし」は『ベルセルク』、あとなんでしょね、をちゃんぽんにしたような立て付けの作品。

剣、マスケット銃、リボルバー銃で戦うバトル描写。

顔・人体・体重移動・ポジショニングを描ける漫画家であることは『クラマー』で既に示されていたこともあり、殺陣の描写も並みのバトル漫画以上。

作品の「映像化ぐせ」が付いている作家ですが、プロットの段階でアニメ映画化が内定しているような雰囲気。

「ヒロイン争奪戦」的な作品タイトル『アトワイトゲーム』のとおり、作中で何年も時間が経つ感じではなく、ボーイ・ミーツ・ガールからの逃避行の短い期間の顛末をラピュタ的に「一本の映画サイズ」で、という感じに見えます。

『アトワイトゲーム』1巻より(新川直司/講談社)

まあまだ始まったばっかりですけど、作家が作家なので質には担保がついてますが、量的には「映画一本分の原作」になったらあっさり完結しそうで、あんまり長期連載の作品にはならないんじゃないかな、という予感もします。

騒乱期におけるマフィアの成り上がりと、静かに平和に暮らす人生観の対比もテーマのようなので、少女を領主に届ける逃避行をしつつ、少年が「蛇輪」かバーラント領の支配者に成り上がるサクセスストーリーになっていくんかしらね。

主人公の少年も「戦える知謀派」という『アルスラーン戦記』のナルサス的な、なんかハクつきの過去有りで弱点が見えない便利キャラ。

『アトワイトゲーム』1巻より(新川直司/講談社)

なんにせよ、まあまだ始まったばっかりですけど、作風を広げようとの異ジャンル挑戦で「見よう見まね」や「個性的なファンタジー解釈へのこだわり」で中世ファンタジーを描いて盛大にずっこける大家も珍しくない中、なかなかの出だしに見えますが、さて。

 

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