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#地球から来たエイリアン 3巻 【完】 評論(ネタバレ注意)

西暦2220年。

人類は超高速(宇宙)航法技術を手に入れ、各国は大航海時代の欧州列強のように宇宙に進出し入植可能な惑星を探査・開発していて、日本もその例外ではなかった。

惑星開発省 生物管理局の新人職員・朝野みどりは、日本が管理する惑星「瑞穂」に配属され、未知の生き物との出会いに目を輝かせていた。

『地球から来たエイリアン』3巻より(有馬慎太郎/講談社)

しかし、彼女が最初に携わった仕事は、

ぬいぐるみのようにキュートな見た目を持ちながら人類に害を為す性質を持つ原生生物・プクルを、防疫上の観点から絶滅させることだった…

という、未来で宇宙なSFもの。

作品タイトル「地球から来たエイリアン」は地球人類の日本人を指します。

『地球から来たエイリアン』3巻より(有馬慎太郎/講談社)

借りものではなく、作者が世界観設定を創るタイプの作品で、「ヘテロゲニア リンギスティコ」が「文化人類学・言語学・民俗学ファンタジー」だとしたら、この作品は「生物学・疫学・環境倫理学SF」と呼ぶのに相応しい作品。

今巻で完結。

『地球から来たエイリアン』3巻より(有馬慎太郎/講談社)

欠員の補充のために支部に配属されたみどりだったが、そのみどりの活躍により欠員した職員が復帰。みどりの支部内での配属は宙に浮いてしまう。

深谷支部長はみどりを当面、各部課に転々と短期配属し以てOJT研修とすることを発案する。

『地球から来たエイリアン』3巻より(有馬慎太郎/講談社)

ということで、生物管理局 第4支部(惑星「瑞穂」を担当)の各部署で1〜2エピソードずつOJT研修する展開、後半戦。

・調査1課 洋上で空から落ちてきた生物、そして空に浮かぶ島の調査

・研究開発課 不老不死の生物を利用した生体実験

・畜産3課 公営賭博の競走用生物の開発・飼育

・生物多様性保全課 絶滅危惧種の保護・移住調整

・生物危機対策課 生物災害の防止、災害を引き起こす原生生物の駆除

前半と比べて、寄ってたかって若い女をいじめてるだけにも見えかねない、精神的にハードな内容の業務研修。

『地球から来たエイリアン』3巻より(有馬慎太郎/講談社)

未来宇宙SFですが、モチーフは現実に既に存在していたり、先行するフィクションで描かれていたりするものを取り入れています。

あるエピソードは、割りとド直球な『ナウシカ』オマージュに、自分は見えました。

何が描かれたかと言えば、『ナウシカ』では描かれることのなかった、「王蟲を殺すナウシカ」の話です。

作者がヒロインに託した状況を打開する鍵を、そのまま読者に委ねるかのように、正解のない「王蟲を殺すナウシカ」を漫画で読者に読ませる意味を、幸いなことに、とても有名な漫画作品の一部を引用するだけで、自分は語ることができます。

『HUNTER×HUNTER』1巻より(冨樫義博/集英社)

先に述べたように、未来宇宙SFではありますが既に在る現実のモチーフを多く取り入れていて、

「いつか来るかも知れない」

とゴンのように私が思ったとしたら、たまたま現場に直面する立場にいない幸運に恵まれているか、もしくは目を逸らしているだけなんだろうと思います。

映画監督のあの人や、漫画家のあの人がこの作品を読んだら、何を語るだろうか、と少し考えます。

『地球から来たエイリアン』3巻より(有馬慎太郎/講談社)

作品完結、お疲れ様でした。

みどりの視点を離れてでも、もう少しだけ惑星・瑞穂の儚く美しい生態系を、ただ眺めていたくはあったけど。

残酷で美しくて、見たこともない生物たちがとても愛おしい、「たった3巻で」というよりも「たった1話で」、すごいところに連れて行ってくれるすごく面白い漫画だった。素晴らしかったです。

次回作をとても楽しみにしています。

 

 

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