#AQM

あ、今日読んだ漫画

#幼稚園WARS 2巻 評論(ネタバレ注意)

銃身下部のレールのエグレのエッジが強いですけど、表紙を飾るダグのハンドガンはたぶんワルサーP99。

『007』ジェームズ・ボンドが第18作『トゥモロー・ネバー・ダイ』から第21作『カジノ・ロワイヤル』まで使用。その後、過去作で常用していたワルサーPPK(写真下)に戻る。

リタがベレッタ92(M9)、ルークがコルト・パイソンの6インチ、ボスがコルト・ガバメント。

わーい、ガンアクションもの大好き!

国によって極秘で運営され、収監された凄腕の元・犯罪者たちを釈放と引き換えにボディガード兼「幼稚園の先生」として有期雇用し、誘拐や暗殺の対象にされる良家の子女を預かって護衛する、「世界一安全な幼稚園」。

元・伝説の殺し屋、囚人番号999、リタも、幼稚園教諭として子どもたちを日々護衛しながら、

『幼稚園WARS』2巻より(千葉侑生/集英社)

1年間の年季が明けて自由の身になることを、そしてイケメンの彼氏を作ることを夢見ていた…

という、「殺し屋×幼稚園の先生」なハードボイルド・アクション。名物編集「林士平」印。

昔、シュワルツェネッガー主演で凄腕刑事が潜入捜査で幼稚園の先生になる『キンダガートン・コップ』という映画がありましたが、あれに倣えば「キンダガートン・アサシン」という感じ。

『幼稚園WARS』2巻より(千葉侑生/集英社)

同じ「林士平」印の『SPY×FAMILY』は言うに及ばず『子連れ狼』の昔から、「ハードボイルドと幼児」は意外と相性が良いですね。

林編集作品らしく勢い・スピード・テンポ・ギャップ優先、無敵ヒロインでバトルというかガンアクションシーンもどこかコミカルに。

敵が子ども狙いの殺し屋たちなので返り討ちにしても倫理的にもOK!的なw

落書きみたいな抜いたギャグコメ絵の顔がなんとも可愛らしい。

『幼稚園WARS』2巻より(千葉侑生/集英社)

イージー・リーディングなコメディ進行ですけど、ダークな生い立ちの元・犯罪者たちが、子どもたちを護る仕事を通じて真人間として生まれ変わっていくシリアスなサブテーマも設定されていて、ガンアクションと併せてシリアス要素も美味しそう、という。

リタへの復讐を謀る殺し屋一家の襲来エピソードが今巻で決着。

幼稚園教諭の同僚・ハナとダグの大ピンチに、我らが最強ヒロイン・リタが颯爽と登場、「魔女」の二つ名を背負ってベレッタ1丁で殺し屋軍団をバッタバッタと薙ぎ倒す、厨二病ガンアクション好きには堪らない仕上がりになっております。眼福。

『幼稚園WARS』2巻より(千葉侑生/集英社)

「殺し屋一家」の子育てなんで真面目に論じるのも野暮ですけど、「毒親ブーム」もあってか、超克というより決別というか、親に対して「嫌いだった」と告げる漫画、近年本当に目につきますね。

まあ、殺し屋の、しかも漫画の話なんで、あまりこれで現実社会を測ろうとしすぎるのも、ネ、という。

 

漫画の話といえば、ラブコメ漫画のキャラ同士の未満恋愛を、見守ったり応援したり野次馬したりするキャラ、というのは『めぞん一刻』の昔から居て、

『めぞん一刻』14巻より(高橋留美子/小学館)

介入したり巻き込まれたり「当事者」化して

「そういうこともあるよね、同じ世界で生きてんだし」

と、まあ人間関係のドラマの一部だったりしたんですけど、

『めぞん一刻』14巻より(高橋留美子/小学館)

近年はそれとはちょっと違う、「もう少しメタ視点に寄ったキャラの表現」というか「読者代表」というか「楽屋オチ」というか、

「主人公/ヒロインの未満恋愛を、読者と一緒にカーテンのこっち側からコンテンツとして愛でる(消費する)キャラ」

自体がコンテンツ化してる例が増えたな、と思います。

「オタク(読者)視点の作品内在化」とでも言うか。

『僕の心のヤバイやつ』6巻より(桜井のりお/秋田書店)

『僕の心のヤバイやつ』6巻より(桜井のりお/秋田書店)

『宇崎ちゃんは遊びたい!』5巻より(丈/KADOKAWA)

「『推し』『担』概念の一般化」

「恋愛のリアリティショー化」

「作中のMOBや空気になって関係性に萌えたいオタクのコンテンツ化」

「SNSの隆盛によるオタクの行動(情報発信)の常態化」

が、漫画作品の中で顕在化してんのかな、と思ったりします。

彼ら彼女らは概ね、「読者の代表を主人公たちの近くに配置」した存在であり、役割は「傍観」「野次馬」「見守り」「応援」「援護」で、「読者の楽しみ方のガイドライン」と「背中を押す良い友人」でした。

で。

今巻新キャラのルークは、少女漫画好きのラブコメ好きで、周囲の人間関係をまさにリアル・リアリティショー、「恋愛コンテンツ」として消費するんですが、「傍観」「野次馬」「見守り」「応援」「援護」を超えて、

『幼稚園WARS』2巻より(千葉侑生/集英社)

「同僚(キャラ)同士の恋愛未満を、自分が楽しむために両片想い期間を長びかせる」

という目的に向けて、自分(と作品)の都合で妨害を始めるという、

「オタク(読者)視点」より更に新しい「オタク(作者)視点」、もしくは「もの言うオタク(読者)視点」の作品内在化の、新しいパターンだな、と思ったりしました。

これまでもトラブルメーカーはたくさんいましたし、「味方の来援を待つ」などの作中の作戦の都合・目的で「時間稼ぎ」をするキャラもたくさんいました。

が、「コンテンツの引き伸ばし」という作者にメタにダイレクトに寄り添った目的意識で未満恋愛を敢えて妨害して引き延ばすキャラの登場、というのはちょっとしたパラダイムシフトで、狭い用途ながら他の作品にも影響したりするのかね、とちょっと興味深いです。

「ラブコメ作品引き伸ばしの合法化」に見えなくもない、すごいアイデアだなコレw

現実にこんな奴が居たら、迷惑極まりない話なんですけどw

 

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