「ケモナー」という言葉があります。
「ケモノ的な要素を持つキャラ属性の愛好家」を指す言葉かと思うんですが、ネットの用例では「ケモノ的な要素を持つキャラ」そのものを指す例も見られます。
混同を避けたいのでググりました。
dic.pixiv.net
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「そこまで聞いてねえよ」ってぐらい深いな。結構センシティブな言葉なのね。
やはり「ケモナー」は本来は「ケモノ的な要素を持つキャラ属性の愛好家」を指す用語だったようで、「ケモノ的な要素を持つキャラ」そのものを「ケモナー」と呼ぶのは一応誤用のはずではあるが、出が俗語・スラングなので、そのうち意味が逆転してしまうかも知れぬ、ぐらいの感じっぽい。
「ケモナー」の語が持つ意味の変化について、自分は特に強いこだわりはないんですが、意味の混同を避けるために便宜上、本記事では愛好家を「ケモナー」、キャラを「ケモノ」と称するよう統一しようと思います。
本作の作者は先日も別作の1巻が出たばかりでして、
aqm.hatenablog.jp
そちらもケモノ美少女ヒロインの作品。
いわゆる「ケモナー作家」さんに、自分からは見えます。
高校一年生・ちあき(♂)は東京から奈良に引っ越し・転校。
転校先の高校の隣の席は、登校中に出会った半人半鹿で大柄なケモノ美少女・ハルヒノさんだった。
神の使いの鹿であるハルヒノさんは、人類の社会事情を知り学ぶために人間に擬態して高校に通っていたが、ちあきにだけはなぜか、ハルヒノさんの神鹿としての正体がケモノ美少女として見えてしまっていた…
ハルヒノさんに固く口止めされたちあきは、それはそれとして、歴史好きが高じて放課後に歴史部の部室を訪うが、歴史部はハルヒノさんの1人部活だったので、ハルヒノさんとちあきの2人部活に。
正体を隠して人界で暮らす神鹿のハルヒノさんと、唯一彼女の正体を知る歴史好きの少年ちあきの、奈良の歴史・旧跡探訪の日々が始まった。
という、王道の「転校生ボーイ・ミーツ・高嶺の花ガール」から始まる、「奈良ご当地」で「歴史蘊蓄」で「ワイド4コマ」で「ケモナー大歓喜?」な、「隣の席」&「部活」な「日常」「ほのぼの」「未満恋愛」ラブコメ。
作品のメタ属性タグが多い作品ですが、歴史の街・奈良が舞台であること以外に、ヒロインの属性も「神の使い・神鹿」「人間擬態」「1300歳」「奈良好き」「歴史好き」「クールビューティ」「クーデレ(ポンコツ)」とてんこ盛り。
その割りに「属性欲張りセットでとっ散らかってる」という印象は皆無で、
「奈良を舞台にクーデレケモノ美少女の日常ラブコメを描こうと思ったら、自然に付いてきた」
という感じで、すんなり読めます。
ケモナー作家による強力なフェチズム漫画のようなルックスで、事実「ケモナー作家」「フェチズム」であることは間違ってはいないと思うんですが、掲載誌「まんがタイム」らしいのんびりほのぼの健全な日常ラブコメ。
ちょうど犬の『名探偵ホームズ』ぐらいの匙加減。
「コロコロ」や「りぼん」に載ってても、PTAが苦情のつけようがないぐらいほのぼの健全。なんですけどヒロインがとても可愛らしくて魅力的です。
学校で男女から遠巻きに憧れられる孤高のクールビューティだったハルヒノさんの実はポンコツ・クーデレなパーソナリティがキュートで、転校生・ちあきとの交流を機会に徐々にクラスメイトたちと打ち解けていく描写も微笑ましい。
かつ、近年、再流行中の「寿命ギャップの恋」をも内包するテーマ。
同じく近年は、「高嶺の花」のヒロインよりも、彼女に好かれる一見平凡な少年の方が実は「特異点」である作品が増えましたが、本作も神鹿が顕現したヒロイン・ハルヒノさんより、「なぜか」彼女の正体が見える少年ちあきの方が特殊な存在であるように思います。
1300年間、居なかったんですよね。ハルヒノさんの正体に気づいた人間って。
という感じの漫画。
とは言え、基本的に「まんがタイム」の日常4コマですから、のんびり末長いお付き合いになるといいなあ、と期待しちゃう作品。
『ローカル女子の遠吠え』のために定期購読している「まんがタイム」を、読む楽しみが一つ増えたなあ、とちょっと嬉しくなっちゃいますね。
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