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あ、今日読んだ漫画

#カノジョも彼女 16巻 【完】 評論(ネタバレ注意)

表紙がネタバレwww

まあでも、この表紙になるよねー。

 

幼馴染の咲に小学生以来ずっと片想いで何回フラれても告白し続けた直也。

高校入学を機についに咲にOKしてもらい付き合いだした矢先、直也はクラスメイトの超美少女・渚に告白される。彼女の可愛さと健気さに胸を打たれた直也は…

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「カノジョも彼女」1巻より(ヒロユキ/講談社)

で始まる、馬鹿正直に真正面からハーレム人間関係の渦中を描いた少年漫画ハーレムラブコメ。

いや、ハーレムラブコメのガワを被ったメタ・ラブコメネタのバカギャグコメです。真面目なラブコメと間違って買わないように気を付けてください。

作者は「アホガール」の人。

「借金が雪だるま式に増えていく」とは聞きますが、「彼女が雪だるま式に増えていく」とは聞いたことがない。正々堂々と三股かけて更に彼女候補が1人いてヒロイン4人体制。

さて、最後は、

「ハーレムでもいい、ハーレムがいい」vs「私は特別な一人になりたい」。

「一夫多妻容認」vs「一夫一婦主義」の宿命の対峙。ミリカの価値観は現代日本においては当然の欲求です。

ギャグコメディで売ってきたラブコメですけど、最終盤のクライマックス。

「シリアス」と呼ぶにはいささか珍妙ですけど、ほぼ全編、ギャグもコメも挟まずにみんな一生懸命な展開。

『カノジョも彼女』16巻より(ヒロユキ/講談社)

結末も、前巻までの展開なりの、ある種の予定調和ではあるんでしょう。

ある種の「出オチ漫画」で、ワッ!って風呂敷拡げて、その後グチャグチャなるところの意外性が面白い種類の漫画で、作者がキャラに誠実で優しい分、畳み方は決して意外だったり新機軸だったりすることなく、誰でも予想できる実に「普通」の畳み方でした。

主人公は1巻から何も変わらず、「二股かけさせてくれ!」が「四股かけさせてくれ!!」に、数字が増えただけですw

「どうやったらハーレムなんかが成立するんですか?」

という問いのこの作品の答えは、

『カノジョも彼女』16巻より(ヒロユキ/講談社)

「押しに弱くものわかりがよく器がでかい(そして都合の良い)正妻と、あとはひたすら何回もしつこく頼み込むこと」

という、人の縁の運の良さを背景にひたすらゴリ押しするだけ、何の参考にもならないですw

咲ちゃんの(都合の良い)「器の大きさ」が作品全体を支えていたのも、最後まで変わりませんでした。

『カノジョも彼女』16巻より(ヒロユキ/講談社)

まあでも、

「一度に複数の異性を好きになったらどうしたら良いか」

という、ある種の人類普遍のテーマへの、普遍的で劇的な解決策や特効薬や最適解を、漫画に求めるのがそもそも間違いというもので。

「普通」と引き換えにキャラクターたちに優しいエンディング、とりあえず彼女たちと彼がみんな幸せそうなので、良かったな、と思います。

 

でもその前にミリカが身をもって実践した、

「何かを選ぶことは、多かれ少なかれ痛みを伴って何かを捨てること」

の描写を見ていると、

『カノジョも彼女』16巻より(ヒロユキ/講談社)

作者が本心では描くべきだと思っていた展開、というか残酷な想像を、キャラへの優しさで抑え込んで力づくで「普通」に畳んで先延ばしにした、その葛藤のようなものの残滓が見えるような気もします。

自分が彼女たちと彼に「幸多かれ」と思いつつも、この先を見ないで済むことに少しホッとしているように、作者も彼女たちと彼が高校生のうちに、笑顔でいられるうちに話を閉じられたことに、ホッとしてるんじゃないかなあ。

『カノジョも彼女』16巻より(ヒロユキ/講談社)

最後、扇の要である咲ちゃんに「一生」や「永遠」を語らせず、

「今のところ」

って言わせたんですよね。

その「今のところ」こそ、「いつか終わった後」から振り返ると、貴重だったり希少だったり青春だったりするものの核になる、「永遠じゃないからこそ尊い何か」なんじゃないかとも、思うんですけども。

 

さて。

1巻以来、とても楽しく読みました。

お疲れ様でした。また。

 

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